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37 出立前々日①
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「奥様。こんなところでお休みになっては、お風邪を召しますよ」
八の字眉のナンシーが、ため息をつく。
「あ、ああ、ごめんなさい。もう朝なの?」
目をこすりながら尋ねると、ナンシーはきょとんとして、それからちょっと困ったように笑った。
「今、昼食を持って来させたところですわ」
その言葉通り、すぐにメイドがワゴンを押して部屋に入ってきた。
「奥様、こちらの丸テーブルへどうぞ」
「う、うん。ありがとう」
寝ぼけたことが恥ずかしくて、うつむきがちに丸テーブルへ移った。並べられていく料理を眺めつつ、頭をはっきりさせるために、さっきまでの出来事を思い出してみる。
(そういえば、この部屋へ来る前に、オスカーからリースマンさんの話を聞いたんだっけ)
なのに、いつもの習慣で、目覚めるのは朝だと思い込んでしまった。
(本当に、思い込みって厄介ね)
長々とため息をつくと、ナンシーが給仕の手を止め、心配そうに私を見つめてくる。
「奥様……本当に大丈夫ですか? こんなところでうたた寝なんて、やっぱりお悩み事がおありなんでしょう? まったくもう、旦那様が寝室へ足をお運びにならないから……」
「ううん、違うの。オスカーは関係ないのよ。……あっ」
そうだ、オスカーといえば。
アレンの母親の一件や、ナンシーとの会話で、うっかり忘れるところだった。オスカーとアレンは同一人物なのか、確かめなくては。
「ナンシー。オスカーは今、どうしてる?」
「ご昼食のあと、港へ向かわれましたわ」
「港?」
「ええ。旦那様は、明後日から船に乗られますでしょう? 港で積み荷の最終確認をなさるそうです」
そうだった。2日後、オスカーはバラートへ向かうのだ。
だけど、今から港へ行くのなら、この屋敷へ戻らずに出発するつもりかもしれない。船の帰りを待って、オスカーが落ち着いてから話をするべきだろうか。
「オスカーの船は、いつ帰ってくるの?」
「3ヶ月後だとうかがいました」
「3ヶ月⁉︎」
想像を上回る長旅に、つい叫んでしまった。
びっくりしたらしいナンシーが、ティーポットを取り落としかけてアワアワしている。
「ご、ごめんなさい。そうよね、行き先は外国だもの。時間がかかって当たり前よね」
動揺を静めるため、頬をなでさすってみる。
それにしても3ヶ月だなんて。
もし、出発までにオスカーと話す機会がなければ、アレンかどうかを確かめられるのは、3ヶ月後。
(そんなに待っていられないわ!)
焦った私は、かじりつくようにナンシーへ尋ねた。
八の字眉のナンシーが、ため息をつく。
「あ、ああ、ごめんなさい。もう朝なの?」
目をこすりながら尋ねると、ナンシーはきょとんとして、それからちょっと困ったように笑った。
「今、昼食を持って来させたところですわ」
その言葉通り、すぐにメイドがワゴンを押して部屋に入ってきた。
「奥様、こちらの丸テーブルへどうぞ」
「う、うん。ありがとう」
寝ぼけたことが恥ずかしくて、うつむきがちに丸テーブルへ移った。並べられていく料理を眺めつつ、頭をはっきりさせるために、さっきまでの出来事を思い出してみる。
(そういえば、この部屋へ来る前に、オスカーからリースマンさんの話を聞いたんだっけ)
なのに、いつもの習慣で、目覚めるのは朝だと思い込んでしまった。
(本当に、思い込みって厄介ね)
長々とため息をつくと、ナンシーが給仕の手を止め、心配そうに私を見つめてくる。
「奥様……本当に大丈夫ですか? こんなところでうたた寝なんて、やっぱりお悩み事がおありなんでしょう? まったくもう、旦那様が寝室へ足をお運びにならないから……」
「ううん、違うの。オスカーは関係ないのよ。……あっ」
そうだ、オスカーといえば。
アレンの母親の一件や、ナンシーとの会話で、うっかり忘れるところだった。オスカーとアレンは同一人物なのか、確かめなくては。
「ナンシー。オスカーは今、どうしてる?」
「ご昼食のあと、港へ向かわれましたわ」
「港?」
「ええ。旦那様は、明後日から船に乗られますでしょう? 港で積み荷の最終確認をなさるそうです」
そうだった。2日後、オスカーはバラートへ向かうのだ。
だけど、今から港へ行くのなら、この屋敷へ戻らずに出発するつもりかもしれない。船の帰りを待って、オスカーが落ち着いてから話をするべきだろうか。
「オスカーの船は、いつ帰ってくるの?」
「3ヶ月後だとうかがいました」
「3ヶ月⁉︎」
想像を上回る長旅に、つい叫んでしまった。
びっくりしたらしいナンシーが、ティーポットを取り落としかけてアワアワしている。
「ご、ごめんなさい。そうよね、行き先は外国だもの。時間がかかって当たり前よね」
動揺を静めるため、頬をなでさすってみる。
それにしても3ヶ月だなんて。
もし、出発までにオスカーと話す機会がなければ、アレンかどうかを確かめられるのは、3ヶ月後。
(そんなに待っていられないわ!)
焦った私は、かじりつくようにナンシーへ尋ねた。
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