103 / 127
王太子選定の儀・一騎打ち
102 御前試合まで残り三日
しおりを挟む
その日も、水奈は部屋の中央で正座をして、丸い小窓から外をぼんやり眺めていた。
小窓から見える景色は、雨で視界がさえぎられて、その上木々が茂っているため、興味を引くものは何もない。
それでも、書物の一冊すらない状況では、窓の外を見ているしかなかった。
書物くらいなら、頼めば手配してくれるのかもしれないが、どんな対価を要求されるかわからない。できるだけ、蒼玉に借りを作りたくなかった。
畳の上で身じろぎもせず、絶え間ない雨音を聞いていると、ひとりでに記憶がよみがえってくる。
(そういえば子どもの頃にも、こんなふうに外を見ていたことがあったっけ)
まだ、母の言葉をすべて信じていた頃だ。
『水奈のお父様は、遠いところにいらっしゃるのよ。でも、いつも私たちを見守ってくださっているの。水奈が、苦しいことや悲しいことに耐えて生きていれば、いつか会えるわ』
あの言葉は、水奈をなだめるための嘘だったのかもしれない。大人になってからはそう思っていた。
しかし、水奈の父親が銀龍だとしたら、前半は真実なのだろう。
父は天の国にいて、いつも自分を見ているのかもしれない。
(じゃあ、残りの半分は? 『いつか会える』という言葉は、父様が私を迎えに来る、という意味なの?)
それなら、タカに聞いた話は、いつか水奈の身に訪れる出来事なのか。
(銀龍様が『〈銀龍の愛し子〉を迎えに来られた時は、早急に天の国へ送ること』……)
なぜ、急がなくてはならないのだろう。そもそも、迎えを拒むことはできないのか。
考えるごとに心細くなり、水奈は別のことに意識を向けた。
(今日は静かだけど……最近ずっと、周りが騒がしかったわね)
原因は知っている。先日、外の見張りがブツブツと言い合っていた。
雪晴王子の手の者が、この近辺をうろつき、「水奈」「どこだ」と呼び回っていると。
『面倒だよな、わざわざ麓に下りて追い払わなくちゃならん。城の下女や低位の兵士だから、まだやりやすいが……人手が足りないのに参ったよ』
『まあ、じきに楽になるさ。滝森様が兵士を貸してくださっただろ。ここの見張りも担当してくれるらしいぞ』
おそらく、雪晴たちは水奈がこの山にいると突き止めたのだ。そして、手当たり次第に捜索しているのだろう。
(だからって、私の名前を呼んで回るなんて危険だわ。兵士が剣を抜くかもしれない。それとも、兵士を麓に下ろすためにやってるのかしら)
見張りがいなくなっても、水奈は逃げられないのだが。そんなことをぼんやり考えていると、トン、と近くで乾いた音がした。
水奈が目をやると、丸めた紙が小窓の下に落ちている。
ところどころ茶色い染みが──いや、文字のようだ。何か書いてあるのだろうか。
膝をにじって紙に近付き、丸まったそれを広げてみる。
かなり小さくて薄い字だが、思った通り文章が書いてある。その内容を理解した時、錆びかけていた水奈の頭へ、驚きが電流のように走った。
──水奈殿へ。あなたを救出する準備を進めている。賊の襲撃を装うので、水奈殿は無理矢理さらわれるように振る舞ってくれ。そうすれば、あなたが自分から逃げたことにはならず、洗濯女に害は及ばない。時がくれば、栗竹という兵士が声をかける。それまで待機してくれ。樹──
(樹様がこの場所へ……? いえ、そんなはずないわ)
蒼玉の兵は精鋭揃いだ。数こそ雪晴の味方より少ないが、総力で競えば互角以上だろう。
だから、雪晴陣営の人間がここへ殴り込みに来るとは思えない。かといって、こっそり忍び込むのも無理だ。
ましてや、水奈の部屋に物を投げ入れるなど不可能である。
では、この紙はなぜここにあるのか。
(まさか……見張りの中に、雪晴殿下の味方がいる、ということ?)
滝森という人物が、蒼玉に兵士を貸したらしい。その中に、雪晴の息がかかった者がいるのだろうか。
水奈は、再び紙に目を落とした。「樹」という名前の横に、「読んだらすぐ水に浸してください」とある。
水奈は、ひそかに雨水を室内へ呼び込み、水の球を作った。
そこへ紙をスッと差し込むと、茶色の文字がじわじわ消えていく。
まっさらな紙片に戻ったところで、水奈は水の球ごと紙を外へ流した。これで、見張りの誰かが紙を落としたのかと思ってくれるだろう。
一日三度、蒼玉の侍女の桂がこの部屋を訪れ、異常がないか目を光らせる。たとえ一片でも、紙が落ちていれば怪しまれてしまう。
水奈は、念のため部屋を見回し、元通りになったのを確かめると、さっきと同じように部屋の真ん中で正座をした。
(たしか、今日は金剛月の二十四日。御前試合まであと三日……)
もう、三日しかない。雪晴は蒼玉に勝てるだろうか。
(銀龍様、どうか雪晴殿下をお守りください)
神託は、雪晴に苦痛をも与える。だから控えようと思いつつも、日に何度も祈ってしまう。
気を紛らわせたくても、今の水奈にその術はない。
頭を空にしようとしても、雪晴の温もりが恋しくて、いつの間にか彼のことを考えている。
(殿下……早くお会いしたい)
その願いを、銀龍が聞き届けたのか。同じ頃、雪晴は神託を視ていた。
その内容は、雪晴と彼に与する人々を、絶望させるのに十分だった。
*
「『御前試合の会場へ水奈を呼べ』ですって⁉︎」
雪晴の自室に集まった四人のうち、タカが裏返った声で叫んだ。
「それだけじゃない。『できなければすべてが終わる』というおまけ付きだ」
雪晴がため息をつくと、タカの顔が青ざめる。
「そんな……賊が水奈をさらったと思わせるため、一旦別の場所へ隠す予定だったのに。そこから蒼玉殿下にばれずに試合会場へ連れていくのは、至難の業ですよ!」
「蒼玉殿下は、そこらじゅうに目となる者を潜ませておられますからね」
うなずいたのは滝森だ。
「さらった娘を連れた賊が、御前試合を見に行くのは不自然ですし。まして水奈殿が自分で歩いていくなど、言語道断です」
「すぐさま蒼玉兄上の耳に入るな……」
「ええ。洗濯女たちは即座に殺されるでしょう。下女を斬る理由など、あとからいくらでも作れますし」
「困りましたね、作戦が決まったところだったのに……どうしてこうなってしまうのかしら」
雪晴とタカ。樹に滝森。朝から、四人で水奈救出作戦の打ち合わせをしていたのだが、雪晴が視た神託のおかげですべて練り直しになってしまった。
「ああ、銀龍様……なぜこのような無理難題を私たちに押し付けるのですか……」
「タカですらそう思うのか」
雪晴が目を丸くすると、タカがジロリと雪晴を睨む。
樹がそれをなだめたものの、続く言葉はなく、タカとともにうつむいてしまった。
四人が揃って黙り込む。しかしふと、タカが手を打って叫んだ。
「そうだわ! 洗濯女たちを事前に保護すればいいじゃないですか」
目を輝かせるタカに、樹が沈んだ声で答える。
「しようとしましたが……全員にすごまれて、追い返されましたよ。『本当かどうかわからない話に乗れない、せっかく給金が上がったんだから働かせろ』と」
樹のため息に続いて、雪晴が「それに」と言う。
「洗濯女たちをごっそりどこかへ連れて行こうものなら、水奈を今から救出するぞと宣言するようなものだ。見張りを警戒させてしまう」
「で、では、王妃殿下に守っていただくことはできませんか? 洗濯場の警備を増やすとか」
タカの問いに、今度は滝森が眉を寄せる。
「洗濯場は外壁に近い、警備を増やすべきではないか──と、それとなくお伝えしましたが、『お城にはたくさん見張りがいるし、今まで何もなかったから大丈夫よ』とのことでした」
「……そうですか。あの方は、良くも悪くも……」
「頭の花が満開ですね」
タカは濁したが、滝森ははっきり言ってしまった。
「滝森殿……」
「雪晴殿下、どうなさいましたか? 殿下も、王妃殿下に頼るのはご不安ですか? そうでしょうね。蒼玉殿下の兵が洗濯場を襲っても、『あら大変だわ、どうしましょう』とおっしゃって、その間に洗濯女の首が三つは飛ぶでしょうから」
全員、その光景を容易に想像できてしまったのか、何とも言えない空気が漂った。
話題を変えようにも、新たな作戦が思いつかず、誰も発言しようとしない。
が、一人だけ、重そうではあるが口を開く者がいた。
「一時だけ……ほんの一時ですが」
雪晴とタカ、樹の目が滝森を見る。
「水奈殿が逃亡しても、蒼玉殿下に知られない時間があります」
小窓から見える景色は、雨で視界がさえぎられて、その上木々が茂っているため、興味を引くものは何もない。
それでも、書物の一冊すらない状況では、窓の外を見ているしかなかった。
書物くらいなら、頼めば手配してくれるのかもしれないが、どんな対価を要求されるかわからない。できるだけ、蒼玉に借りを作りたくなかった。
畳の上で身じろぎもせず、絶え間ない雨音を聞いていると、ひとりでに記憶がよみがえってくる。
(そういえば子どもの頃にも、こんなふうに外を見ていたことがあったっけ)
まだ、母の言葉をすべて信じていた頃だ。
『水奈のお父様は、遠いところにいらっしゃるのよ。でも、いつも私たちを見守ってくださっているの。水奈が、苦しいことや悲しいことに耐えて生きていれば、いつか会えるわ』
あの言葉は、水奈をなだめるための嘘だったのかもしれない。大人になってからはそう思っていた。
しかし、水奈の父親が銀龍だとしたら、前半は真実なのだろう。
父は天の国にいて、いつも自分を見ているのかもしれない。
(じゃあ、残りの半分は? 『いつか会える』という言葉は、父様が私を迎えに来る、という意味なの?)
それなら、タカに聞いた話は、いつか水奈の身に訪れる出来事なのか。
(銀龍様が『〈銀龍の愛し子〉を迎えに来られた時は、早急に天の国へ送ること』……)
なぜ、急がなくてはならないのだろう。そもそも、迎えを拒むことはできないのか。
考えるごとに心細くなり、水奈は別のことに意識を向けた。
(今日は静かだけど……最近ずっと、周りが騒がしかったわね)
原因は知っている。先日、外の見張りがブツブツと言い合っていた。
雪晴王子の手の者が、この近辺をうろつき、「水奈」「どこだ」と呼び回っていると。
『面倒だよな、わざわざ麓に下りて追い払わなくちゃならん。城の下女や低位の兵士だから、まだやりやすいが……人手が足りないのに参ったよ』
『まあ、じきに楽になるさ。滝森様が兵士を貸してくださっただろ。ここの見張りも担当してくれるらしいぞ』
おそらく、雪晴たちは水奈がこの山にいると突き止めたのだ。そして、手当たり次第に捜索しているのだろう。
(だからって、私の名前を呼んで回るなんて危険だわ。兵士が剣を抜くかもしれない。それとも、兵士を麓に下ろすためにやってるのかしら)
見張りがいなくなっても、水奈は逃げられないのだが。そんなことをぼんやり考えていると、トン、と近くで乾いた音がした。
水奈が目をやると、丸めた紙が小窓の下に落ちている。
ところどころ茶色い染みが──いや、文字のようだ。何か書いてあるのだろうか。
膝をにじって紙に近付き、丸まったそれを広げてみる。
かなり小さくて薄い字だが、思った通り文章が書いてある。その内容を理解した時、錆びかけていた水奈の頭へ、驚きが電流のように走った。
──水奈殿へ。あなたを救出する準備を進めている。賊の襲撃を装うので、水奈殿は無理矢理さらわれるように振る舞ってくれ。そうすれば、あなたが自分から逃げたことにはならず、洗濯女に害は及ばない。時がくれば、栗竹という兵士が声をかける。それまで待機してくれ。樹──
(樹様がこの場所へ……? いえ、そんなはずないわ)
蒼玉の兵は精鋭揃いだ。数こそ雪晴の味方より少ないが、総力で競えば互角以上だろう。
だから、雪晴陣営の人間がここへ殴り込みに来るとは思えない。かといって、こっそり忍び込むのも無理だ。
ましてや、水奈の部屋に物を投げ入れるなど不可能である。
では、この紙はなぜここにあるのか。
(まさか……見張りの中に、雪晴殿下の味方がいる、ということ?)
滝森という人物が、蒼玉に兵士を貸したらしい。その中に、雪晴の息がかかった者がいるのだろうか。
水奈は、再び紙に目を落とした。「樹」という名前の横に、「読んだらすぐ水に浸してください」とある。
水奈は、ひそかに雨水を室内へ呼び込み、水の球を作った。
そこへ紙をスッと差し込むと、茶色の文字がじわじわ消えていく。
まっさらな紙片に戻ったところで、水奈は水の球ごと紙を外へ流した。これで、見張りの誰かが紙を落としたのかと思ってくれるだろう。
一日三度、蒼玉の侍女の桂がこの部屋を訪れ、異常がないか目を光らせる。たとえ一片でも、紙が落ちていれば怪しまれてしまう。
水奈は、念のため部屋を見回し、元通りになったのを確かめると、さっきと同じように部屋の真ん中で正座をした。
(たしか、今日は金剛月の二十四日。御前試合まであと三日……)
もう、三日しかない。雪晴は蒼玉に勝てるだろうか。
(銀龍様、どうか雪晴殿下をお守りください)
神託は、雪晴に苦痛をも与える。だから控えようと思いつつも、日に何度も祈ってしまう。
気を紛らわせたくても、今の水奈にその術はない。
頭を空にしようとしても、雪晴の温もりが恋しくて、いつの間にか彼のことを考えている。
(殿下……早くお会いしたい)
その願いを、銀龍が聞き届けたのか。同じ頃、雪晴は神託を視ていた。
その内容は、雪晴と彼に与する人々を、絶望させるのに十分だった。
*
「『御前試合の会場へ水奈を呼べ』ですって⁉︎」
雪晴の自室に集まった四人のうち、タカが裏返った声で叫んだ。
「それだけじゃない。『できなければすべてが終わる』というおまけ付きだ」
雪晴がため息をつくと、タカの顔が青ざめる。
「そんな……賊が水奈をさらったと思わせるため、一旦別の場所へ隠す予定だったのに。そこから蒼玉殿下にばれずに試合会場へ連れていくのは、至難の業ですよ!」
「蒼玉殿下は、そこらじゅうに目となる者を潜ませておられますからね」
うなずいたのは滝森だ。
「さらった娘を連れた賊が、御前試合を見に行くのは不自然ですし。まして水奈殿が自分で歩いていくなど、言語道断です」
「すぐさま蒼玉兄上の耳に入るな……」
「ええ。洗濯女たちは即座に殺されるでしょう。下女を斬る理由など、あとからいくらでも作れますし」
「困りましたね、作戦が決まったところだったのに……どうしてこうなってしまうのかしら」
雪晴とタカ。樹に滝森。朝から、四人で水奈救出作戦の打ち合わせをしていたのだが、雪晴が視た神託のおかげですべて練り直しになってしまった。
「ああ、銀龍様……なぜこのような無理難題を私たちに押し付けるのですか……」
「タカですらそう思うのか」
雪晴が目を丸くすると、タカがジロリと雪晴を睨む。
樹がそれをなだめたものの、続く言葉はなく、タカとともにうつむいてしまった。
四人が揃って黙り込む。しかしふと、タカが手を打って叫んだ。
「そうだわ! 洗濯女たちを事前に保護すればいいじゃないですか」
目を輝かせるタカに、樹が沈んだ声で答える。
「しようとしましたが……全員にすごまれて、追い返されましたよ。『本当かどうかわからない話に乗れない、せっかく給金が上がったんだから働かせろ』と」
樹のため息に続いて、雪晴が「それに」と言う。
「洗濯女たちをごっそりどこかへ連れて行こうものなら、水奈を今から救出するぞと宣言するようなものだ。見張りを警戒させてしまう」
「で、では、王妃殿下に守っていただくことはできませんか? 洗濯場の警備を増やすとか」
タカの問いに、今度は滝森が眉を寄せる。
「洗濯場は外壁に近い、警備を増やすべきではないか──と、それとなくお伝えしましたが、『お城にはたくさん見張りがいるし、今まで何もなかったから大丈夫よ』とのことでした」
「……そうですか。あの方は、良くも悪くも……」
「頭の花が満開ですね」
タカは濁したが、滝森ははっきり言ってしまった。
「滝森殿……」
「雪晴殿下、どうなさいましたか? 殿下も、王妃殿下に頼るのはご不安ですか? そうでしょうね。蒼玉殿下の兵が洗濯場を襲っても、『あら大変だわ、どうしましょう』とおっしゃって、その間に洗濯女の首が三つは飛ぶでしょうから」
全員、その光景を容易に想像できてしまったのか、何とも言えない空気が漂った。
話題を変えようにも、新たな作戦が思いつかず、誰も発言しようとしない。
が、一人だけ、重そうではあるが口を開く者がいた。
「一時だけ……ほんの一時ですが」
雪晴とタカ、樹の目が滝森を見る。
「水奈殿が逃亡しても、蒼玉殿下に知られない時間があります」
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる