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王太子選定の儀・一騎打ち
106 投票結果発表
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観衆の中から、タカが駆け出てくる。
タカは、水奈を威圧する警備兵を叱りつけるように言った。
「彼女は雪晴殿下の侍女です。最高位神官である私の言葉が証明になるでしょう? 早く通しなさい」
「ハッ! 失礼いたしました」
警備兵はタカに頭を下げ、すばやく道を開けた。
「栗竹殿、お疲れさまでした。水奈、こっちへ」
「は、はい……」
水奈は、タカと栗竹に支えられながら立ち上がった。
震える足を叱咤して、ふらつきながら柵のそばへと近付く。
蒼玉は、いつの間にか立ち上がっており、開き直ったようにしっかりした足取りで主殿へ向かっていく。
対する雪晴は、すべての力を使い尽くしたかのようにぐったりとしていた。彼は兵士に支えられながら、天道とともに主殿脇の建物へ、ふらふらと歩いていく。
「雪晴殿下……!」
何日も会えずにいた雪晴が、そこにいる。呼び止めるべきではないと思いながら、水奈は自分を抑えられなかった。
雪晴が、ハッとしたように水奈を振り返る。肩を支える兵士から離れ、足を引きずりながら水奈のもとへ駆け寄ろうとする。
しかし、すぐさま兵たちによって雪晴は進行を阻まれた。目的の建物へと向きを変えさせられ、諦めたように歩き出す。
何度も水奈を振り返りながら。
「殿下……」
水奈が呟くと、タカが励ますように背中をさすってくれた。
「ひとまず、足を治療するそうです。殿下のことは天道と医師に任せて、主殿へ入りましょう。投票が始まりますよ」
「はい……」
行き交う兵士や、持ち場へ戻る使用人、主殿へ向かう貴族の群れに混じってとぼとぼ歩いていると、タカが小声で話しかけてきた。
「水奈。さっきの地震は、もしかしてあなたが?」
「はい。とっさだったので、ああするしかなくて……驚かれたでしょう、申し訳ありません」
水奈が謝ると、タカは大きく首を横に振った。
「とんでもない! あなたがいなければ、雪晴殿下は負けていました。そうしたら、投票結果がどうなっていたか……まだ油断はできませんが」
「どういうことですか?」
「滝森殿ですよ。あの方がどちらに投票するのか……真意が読めません」
「滝森様というのは、私を助けるために力を貸してくださった方では……雪晴殿下の味方ではないのですか?」
「……何とも言えませんね。手を貸してくれたのは、雪晴殿下が試合に集中できるように、だそうです。万全の状態で戦ってほしいからだと。雪晴殿下が勝ちましたから、評価は上がったとは思いますが……」
とはいえ、予想外の事態が起きすぎた。
雪晴の剣が壊れ、足には吹き矢が刺さった。不利な状況を乗り越えて勝利したが、地震がなければ負けていた。
それに、試合後の姿も対照的だ。
蒼玉は充分余力がありそうだが、雪晴は疲弊し切っている。持久力の差は明白だ。
これらを総合的に見て、滝森がどう判断するかわからない。
そう言ったタカは、眉を寄せて続けた。
「もし滝森殿が、蒼玉殿下に票を入れたら、三対三でまた引き分けですよ」
「三対三? 判定人は七人なのでは……」
「国王陛下は、投票権を破棄させられるでしょう。腑抜けたままですからね。神官長が、そんなことを話していましたから」
またも引き分けなら、再度御前試合をおこなうのだろうか。
(だとしたら、次は負けるかもしれない……雪晴殿下はお怪我をなさって、回復には時間がかかりそうだし)
気になることは、ほかにもある。洗濯女たちは無事でいられるのか。
試合中は蒼玉に知らせが伝わらなかったが、投票が終われば桂が接触するだろう。
その考えを裏付けるように、桂が「今やって来た」という顔で主殿へ歩いていくのが見えた。
「タカ様、洗濯女のみんなは……」
「大丈夫ですよ、絶対に。心配しないでください……と、滝森殿は言っていましたが」
言いながらタカは、やや心配そうに眉を下げた。
水奈も少しずつ不安になってくる。
「……とにかく投票結果を待ちましょう」
タカにうながされて、水奈は主殿へ入った。
暗い通路をまっすぐ進むと、謁見の間。さほど広くないその場所に、貴族が大勢ひしめいている。
奥の円卓では、王妃や貴族が紙片に何かを書き付けている。
さらに奥、最奥の階段を上った先では国王が力なく王座に腰かけ、その脇に蒼玉が立っていた。
蒼玉は、敗北したとは思えないほど落ち着いている。その落ち着きぶりに、水奈の胸は騒いだ。
立ち尽くす水奈の腕を、タカがつついた。
「あそこが空いてます。行きましょう」
水奈とタカは、入り口付近のわずかな空間へ逃げ込むように移動した。
「投票結果が聞こえるといいのですが」
タカが、不満げにため息をつく。そのため息も、人々のざわめきにかき消される。
水奈の頭が熱気でクラクラしてきた頃、雪晴がやって来た。途端に、水奈の頭がサッと冴える。
(お顔の色は、悪くはないみたい。よかった……)
雪晴は天道に支えられながら、最奥の階段を上り、国王のそばに立った。それと同時に、白いあご髭をたくわえた宰相が、老人のものとは思えない大声を張り上げる。
「静かに! これより、投票結果を発表する!」
瞬時にざわめきが消える。水奈の喉が、ごくりと音を立てる。
「しかしその前に、皆に申しておくことがある。国王陛下は心神耗弱の状態であらせられるため、投票はなさらない!」
やはりそうか、というささやきが、あちこちから漏れ聞こえてくる。
ささやきの波を、宰相の声が破った。
「だが、判定人は七名と定められておる。よって、蒼玉殿下のご意見を踏まえ、国王陛下の代理として、儂が投票をおこなった!」
(え……⁉︎)
息をのむ水奈の視線の先で、宰相と蒼玉が目配せをし合う。
水奈は、タカの腕をすがるようにつかんだ。
「タカ様、宰相様が投票なさったのは……」
「……蒼玉殿下でしょうね」
貴族二人と宰相の票──三票を蒼玉は手にしている。雪晴も、王妃と神官長、そして天道の三票を獲得しているだろう。
これで引き分けという結果はなくなった。滝森が誰に入れたかで、王太子が決定する。
ほかの貴族も理解したのだろう。
「滝森様は蒼玉殿下に入れただろうな」
「じゃあ、次の国王は決まりか」
そんな会話が聞こえてくる。
雪晴は戸惑いの目を蒼玉へ向けたが、蒼玉は余裕の表情で前を見すえている。
「静かに!」
再び、宰相が怒鳴る。静けさの中、宰相は大臣の一人に手渡された紙を読み上げる。
「投票結果を発表する! まずは、第一王子蒼玉殿下……⁉︎」
宰相が目を見開く。その瞳が左右に泳ぐ。
水奈は首をかしげた。何か、意外なことが書いてあったのだろうか。
怪訝な視線を浴びながら、宰相はまた口を開いた。
「そ、蒼玉殿下の票数──三!」
肌が冷たくなるような沈黙が、その場を支配した。蒼玉は裂けそうなほどまぶたを開き、「あり得ない」と言いたげに宰相を凝視している。
水奈も目を丸くして、宰相を見つめる。ごく簡単な減算が、頭に浮かんでいた。
きっと、周りにいる全員が同じなのだろう。
七から三を引けば。その答えを宰相は高らかに告げた。
「雪晴殿下の票数──四!」
タカは、水奈を威圧する警備兵を叱りつけるように言った。
「彼女は雪晴殿下の侍女です。最高位神官である私の言葉が証明になるでしょう? 早く通しなさい」
「ハッ! 失礼いたしました」
警備兵はタカに頭を下げ、すばやく道を開けた。
「栗竹殿、お疲れさまでした。水奈、こっちへ」
「は、はい……」
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震える足を叱咤して、ふらつきながら柵のそばへと近付く。
蒼玉は、いつの間にか立ち上がっており、開き直ったようにしっかりした足取りで主殿へ向かっていく。
対する雪晴は、すべての力を使い尽くしたかのようにぐったりとしていた。彼は兵士に支えられながら、天道とともに主殿脇の建物へ、ふらふらと歩いていく。
「雪晴殿下……!」
何日も会えずにいた雪晴が、そこにいる。呼び止めるべきではないと思いながら、水奈は自分を抑えられなかった。
雪晴が、ハッとしたように水奈を振り返る。肩を支える兵士から離れ、足を引きずりながら水奈のもとへ駆け寄ろうとする。
しかし、すぐさま兵たちによって雪晴は進行を阻まれた。目的の建物へと向きを変えさせられ、諦めたように歩き出す。
何度も水奈を振り返りながら。
「殿下……」
水奈が呟くと、タカが励ますように背中をさすってくれた。
「ひとまず、足を治療するそうです。殿下のことは天道と医師に任せて、主殿へ入りましょう。投票が始まりますよ」
「はい……」
行き交う兵士や、持ち場へ戻る使用人、主殿へ向かう貴族の群れに混じってとぼとぼ歩いていると、タカが小声で話しかけてきた。
「水奈。さっきの地震は、もしかしてあなたが?」
「はい。とっさだったので、ああするしかなくて……驚かれたでしょう、申し訳ありません」
水奈が謝ると、タカは大きく首を横に振った。
「とんでもない! あなたがいなければ、雪晴殿下は負けていました。そうしたら、投票結果がどうなっていたか……まだ油断はできませんが」
「どういうことですか?」
「滝森殿ですよ。あの方がどちらに投票するのか……真意が読めません」
「滝森様というのは、私を助けるために力を貸してくださった方では……雪晴殿下の味方ではないのですか?」
「……何とも言えませんね。手を貸してくれたのは、雪晴殿下が試合に集中できるように、だそうです。万全の状態で戦ってほしいからだと。雪晴殿下が勝ちましたから、評価は上がったとは思いますが……」
とはいえ、予想外の事態が起きすぎた。
雪晴の剣が壊れ、足には吹き矢が刺さった。不利な状況を乗り越えて勝利したが、地震がなければ負けていた。
それに、試合後の姿も対照的だ。
蒼玉は充分余力がありそうだが、雪晴は疲弊し切っている。持久力の差は明白だ。
これらを総合的に見て、滝森がどう判断するかわからない。
そう言ったタカは、眉を寄せて続けた。
「もし滝森殿が、蒼玉殿下に票を入れたら、三対三でまた引き分けですよ」
「三対三? 判定人は七人なのでは……」
「国王陛下は、投票権を破棄させられるでしょう。腑抜けたままですからね。神官長が、そんなことを話していましたから」
またも引き分けなら、再度御前試合をおこなうのだろうか。
(だとしたら、次は負けるかもしれない……雪晴殿下はお怪我をなさって、回復には時間がかかりそうだし)
気になることは、ほかにもある。洗濯女たちは無事でいられるのか。
試合中は蒼玉に知らせが伝わらなかったが、投票が終われば桂が接触するだろう。
その考えを裏付けるように、桂が「今やって来た」という顔で主殿へ歩いていくのが見えた。
「タカ様、洗濯女のみんなは……」
「大丈夫ですよ、絶対に。心配しないでください……と、滝森殿は言っていましたが」
言いながらタカは、やや心配そうに眉を下げた。
水奈も少しずつ不安になってくる。
「……とにかく投票結果を待ちましょう」
タカにうながされて、水奈は主殿へ入った。
暗い通路をまっすぐ進むと、謁見の間。さほど広くないその場所に、貴族が大勢ひしめいている。
奥の円卓では、王妃や貴族が紙片に何かを書き付けている。
さらに奥、最奥の階段を上った先では国王が力なく王座に腰かけ、その脇に蒼玉が立っていた。
蒼玉は、敗北したとは思えないほど落ち着いている。その落ち着きぶりに、水奈の胸は騒いだ。
立ち尽くす水奈の腕を、タカがつついた。
「あそこが空いてます。行きましょう」
水奈とタカは、入り口付近のわずかな空間へ逃げ込むように移動した。
「投票結果が聞こえるといいのですが」
タカが、不満げにため息をつく。そのため息も、人々のざわめきにかき消される。
水奈の頭が熱気でクラクラしてきた頃、雪晴がやって来た。途端に、水奈の頭がサッと冴える。
(お顔の色は、悪くはないみたい。よかった……)
雪晴は天道に支えられながら、最奥の階段を上り、国王のそばに立った。それと同時に、白いあご髭をたくわえた宰相が、老人のものとは思えない大声を張り上げる。
「静かに! これより、投票結果を発表する!」
瞬時にざわめきが消える。水奈の喉が、ごくりと音を立てる。
「しかしその前に、皆に申しておくことがある。国王陛下は心神耗弱の状態であらせられるため、投票はなさらない!」
やはりそうか、というささやきが、あちこちから漏れ聞こえてくる。
ささやきの波を、宰相の声が破った。
「だが、判定人は七名と定められておる。よって、蒼玉殿下のご意見を踏まえ、国王陛下の代理として、儂が投票をおこなった!」
(え……⁉︎)
息をのむ水奈の視線の先で、宰相と蒼玉が目配せをし合う。
水奈は、タカの腕をすがるようにつかんだ。
「タカ様、宰相様が投票なさったのは……」
「……蒼玉殿下でしょうね」
貴族二人と宰相の票──三票を蒼玉は手にしている。雪晴も、王妃と神官長、そして天道の三票を獲得しているだろう。
これで引き分けという結果はなくなった。滝森が誰に入れたかで、王太子が決定する。
ほかの貴族も理解したのだろう。
「滝森様は蒼玉殿下に入れただろうな」
「じゃあ、次の国王は決まりか」
そんな会話が聞こえてくる。
雪晴は戸惑いの目を蒼玉へ向けたが、蒼玉は余裕の表情で前を見すえている。
「静かに!」
再び、宰相が怒鳴る。静けさの中、宰相は大臣の一人に手渡された紙を読み上げる。
「投票結果を発表する! まずは、第一王子蒼玉殿下……⁉︎」
宰相が目を見開く。その瞳が左右に泳ぐ。
水奈は首をかしげた。何か、意外なことが書いてあったのだろうか。
怪訝な視線を浴びながら、宰相はまた口を開いた。
「そ、蒼玉殿下の票数──三!」
肌が冷たくなるような沈黙が、その場を支配した。蒼玉は裂けそうなほどまぶたを開き、「あり得ない」と言いたげに宰相を凝視している。
水奈も目を丸くして、宰相を見つめる。ごく簡単な減算が、頭に浮かんでいた。
きっと、周りにいる全員が同じなのだろう。
七から三を引けば。その答えを宰相は高らかに告げた。
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