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王太子選定の儀・一騎打ち
99 雪晴は何をすべきか
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「不可能? なぜ、そう思う」
蒼玉が不愉快そうに片眉を上げた。水奈は、気分の悪さを追い払うように蒼玉を鋭く見すえた。
「本来の神話について記された書物は、すべて焼かれたのでしょう? でしたら証拠がないはずです。殿下お一人が主張なさっても、誰も信じません」
「なんだ、そんなことか」
蒼玉は馬鹿にしたように笑い、懐から古びた冊子を取り出した。
「それは……?」
「三百年前の真実が記されている。〈銀龍の愛し子〉の脅威を、代々伝えるために残された。現国王は前王様を避けていたからな。俺が継いだんだ」
蒼玉は表紙を開き、水奈に向けた。
「ここに、当時の国璽が押印されている。国璽は何度か作り替えられているが、すべて保管してある。照合すれば、三百年前のものだと──俺が捏造したものではないとわかるはずだ。立派な証拠だろう?」
「そう、ですね……」
水奈はそれだけを言い、唇を引き結んだ。
およそ三百年前、国王が書いた冊子。そこに記されたものなら、信憑性がある。
寝返りを打ち、再び蒼玉に背を向けてみたが、してやったりという空気を感じて、むしろ悔しさが増した。
「では、〈銀龍の愛し子〉──」
「失礼いたします」
蒼玉が話し始めた時、少し襖が開いた。
正座した桂が、小さく頭を下げているのが見えた。
「食事を持って参りました」
「わかった、入れ」
「かしこまりました」
桂は大きく襖を開けると、脇に置いた盆を取り上げ、部屋へ入ってきた。
蒼玉は水奈をあごでしゃくり、「起きろ」と命じた。
水奈は、首を動かさないよう、そろそろと上体を起こした。一つ息をついた時、伸ばした膝の上に盆が置かれた。
白飯と、大根の漬物が三切れ。それから青菜の味噌汁が乗っている。
「食べなさい。いつ目が覚めるかわからなかったので、冷めていますが」
「……はい」
桂に言われて、水奈は箸を持った。食欲はなかったが、拒んでも洗濯女たちを盾に強要されるだけだ。
どちらにせよ食べなくてはならないのなら、自分から食べる方がまだいい。
具沢山の味噌汁を、のろのろと口にしてみるが、味がよくわからない。まるで、夢の中で食事をしているようだ。
雪晴の屋敷で作った雑炊は、米や具が少なく、出汁もあまり取れなかったが、今は無性にあれが食べたいと思った。雪晴のそばで。
水奈が機械的に食べ物を口に運んでいると、蒼玉が話しかけてきた。
「今の話を聞いて、どうだ? 俺に力を貸す気になったか?」
水奈は箸を止め、首を横に振った。桂は眉をひそめたが、蒼玉は特に気を悪くした様子もなく、
「雪晴が死ねば気も変わるだろう。桂、行くぞ」
と、腰を上げた。桂とともに部屋を出ようとした彼は、ふと足を止めた。
「よく考えて選べ、〈銀龍の愛し子〉。雪晴とともに、忌み嫌われながら生きるか。俺の手を取り、住みやすい世界で生きるか」
そう言うと、蒼玉は振り返らずに部屋を出た。そのあとに続いた桂は、「茶を持ってきますからそれまでに食べ終えなさい」と言い、襖を閉めた。
一人になると、体から緊張が抜けていく。が、息をつくより先に、水奈は盆に箸を置き、目を閉じて祈った。
蒼玉の示した二択は、水奈にとっては一択も同然だ。
雪晴に会いたい。そのためにはまず、自分の無事を知らせなくては。
(銀龍様、雪晴殿下をお助けください)
そう考えたところで、水奈の祈りが止まる。
目的が明確でない祈りは、銀龍に届かない。雪晴に何を与えてもらうか、決めなくては。
少し考えてから、水奈は「よし」と呟いた。
(雪晴殿下に、指針を差し上げてください)
彼は、剣で試合せよと言われてから、ずっと焦っている。
その上、水奈が行方不明となれば、優しい彼のことだ。「水奈は心配だが鍛錬もしなければ」と、何から手をつければいいか困惑しているかもしれない。
(今、何をすべきか。雪晴殿下に教えて差し上げてください)
祈りを終えると、水奈はまた箸を手に取り、漬物を口に放り込んだ。
桂が戻ってきた時、食事が残っていたら、蒼玉に報告されるかもしれない。
白飯、味噌汁、と次々に食べる。一人になってホッとしたせいか、さっきよりも味を感じる。おかげで箸が進んだ。
最後に湯のみの水を飲み干し、耳を澄ませる。
桂は、まだ来ないようだ。
(間に合った……)
ホッと胸をなで下ろすと、やっと考え事をする余裕が出てきた。
(雪晴殿下は、今頃どうなさっているかしら)
水奈が誘拐された時、休憩時間が終われば、雪晴の屋敷に戻る予定だった。
どのくらい気を失っていたかわからないが……雪晴はもう、水奈に異変が起きたことに気付いているだろう。
(あまり騒ぎになっていませんように)
その願いが虚しいものであることを、水奈はまだ知らない。
*
夜が更け、使用人までもが床につく頃。桂は、白銀城の廊下を歩いていた。点々と置かれた行灯を頼りに。
蒼玉の自室前に着くと、襖を静かに開く。
薄暗い廊下へ、ろうそくの灯りが細く漏れる。
「蒼玉殿下。〈銀龍の愛し子〉について、ご報告に上がりました」
「入れ」
文机に向かっていた蒼玉は、持っていた文を置き、廊下の方を振り返った。桂は室内に入り、平伏し、口を開いた。
「食事はすべて食べました。反抗する様子は見られません」
「逃走経路を探す素ぶりは?」
「ないようです。廊下の見張りが申しておりましたが、足音はせず、たまに衣擦れの音がする程度。〈愛し子〉はずっと寝ていたようで、庭の見張りが言うには、窓から外を覗くこともなかったと」
「……ずいぶん大人しいな」
蒼玉はため息をつき、眉をひそめた。
「逃亡を諦めたのでしょうか?」
「そうは思えんが……ひとまず、見張りには『引き続き、油断せずに監視しろ』と伝えておけ。〈銀龍の愛し子〉は水を操る。血を沸騰させて見張りを殺し、逃げるつもりかもしれん。様子がおかしければ、連れてきた時のように気絶させてもいい」
「かしこまりました」
頭を下げる桂に、蒼玉はまた話しかける。
「ところで、城や神殿内の様子はどうだ? 〈愛し子〉の捜索は始まったのか?」
「はい。王妃殿下と近衛兵隊長の荒樫が、一部の兵を雪晴王子に貸したようで。百名ほどが〈愛し子〉の捜索に当たっています。また、湖宇王子の私兵も、城下町で聞き込みをしています」
「湖宇の? なぜあいつが雪晴に兵を貸すんだ」
「湖宇王子の意思ではないようです、抜け殻同然になっていますので。ここぞとばかりに直属の兵士が動き、王妃殿下へ『雪晴王子に協力したい』と願い出た、と聞きました。その後、許可がおりたのでは」
「……なるほど。予想以上の人数が動いているな」
蒼玉は、面倒だと言いたげに頭をかいた。
「神殿は、どうせ総出で捜索しているんだろう?」
「はい。参拝者から情報を集め、雨乞いの祈祷をおこなうと称し、城の南方を回っています」
「それなら、すでに〈愛し子〉の居場所も大方ばれているだろう」
「……近付いてくる者を消しますか?」
桂が、髪に挿したかんざしへ手を伸ばす。
「いや、まだやめておけ。あの場所に近寄った者だけが死ねば、余計に怪しまれる」
「ですが、神官を何人か始末すれば、雪晴王子も怯むのでは?」
「それは、命を惜しんでいる場合だ。今の雪晴はむしろ逆。自分より侍女が大事だからな。死人が出れば、ますます〈愛し子〉の身を案じて、探し出そうとするはずだ」
桂が「なるほど」とうなずくと、蒼玉はニヤリと口元をゆがめた。
「それで、雪晴はどうしてる? 剣の稽古も手につかず、侍女を探し回っているんじゃないか?」
「いえ、それが……」
桂が目を泳がせる。蒼玉は笑みを消し、首をかしげた。
「どうした? まさか、探していないのか?」
「今日の夕方までは、必死の形相で駆けずり回っていましたが……急にピタリと捜索をやめ、剣の稽古に戻ったのです」
「何だと? なぜ……」
眉間にしわを寄せた蒼玉は、ハッとした。
蒼玉が不愉快そうに片眉を上げた。水奈は、気分の悪さを追い払うように蒼玉を鋭く見すえた。
「本来の神話について記された書物は、すべて焼かれたのでしょう? でしたら証拠がないはずです。殿下お一人が主張なさっても、誰も信じません」
「なんだ、そんなことか」
蒼玉は馬鹿にしたように笑い、懐から古びた冊子を取り出した。
「それは……?」
「三百年前の真実が記されている。〈銀龍の愛し子〉の脅威を、代々伝えるために残された。現国王は前王様を避けていたからな。俺が継いだんだ」
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「ここに、当時の国璽が押印されている。国璽は何度か作り替えられているが、すべて保管してある。照合すれば、三百年前のものだと──俺が捏造したものではないとわかるはずだ。立派な証拠だろう?」
「そう、ですね……」
水奈はそれだけを言い、唇を引き結んだ。
およそ三百年前、国王が書いた冊子。そこに記されたものなら、信憑性がある。
寝返りを打ち、再び蒼玉に背を向けてみたが、してやったりという空気を感じて、むしろ悔しさが増した。
「では、〈銀龍の愛し子〉──」
「失礼いたします」
蒼玉が話し始めた時、少し襖が開いた。
正座した桂が、小さく頭を下げているのが見えた。
「食事を持って参りました」
「わかった、入れ」
「かしこまりました」
桂は大きく襖を開けると、脇に置いた盆を取り上げ、部屋へ入ってきた。
蒼玉は水奈をあごでしゃくり、「起きろ」と命じた。
水奈は、首を動かさないよう、そろそろと上体を起こした。一つ息をついた時、伸ばした膝の上に盆が置かれた。
白飯と、大根の漬物が三切れ。それから青菜の味噌汁が乗っている。
「食べなさい。いつ目が覚めるかわからなかったので、冷めていますが」
「……はい」
桂に言われて、水奈は箸を持った。食欲はなかったが、拒んでも洗濯女たちを盾に強要されるだけだ。
どちらにせよ食べなくてはならないのなら、自分から食べる方がまだいい。
具沢山の味噌汁を、のろのろと口にしてみるが、味がよくわからない。まるで、夢の中で食事をしているようだ。
雪晴の屋敷で作った雑炊は、米や具が少なく、出汁もあまり取れなかったが、今は無性にあれが食べたいと思った。雪晴のそばで。
水奈が機械的に食べ物を口に運んでいると、蒼玉が話しかけてきた。
「今の話を聞いて、どうだ? 俺に力を貸す気になったか?」
水奈は箸を止め、首を横に振った。桂は眉をひそめたが、蒼玉は特に気を悪くした様子もなく、
「雪晴が死ねば気も変わるだろう。桂、行くぞ」
と、腰を上げた。桂とともに部屋を出ようとした彼は、ふと足を止めた。
「よく考えて選べ、〈銀龍の愛し子〉。雪晴とともに、忌み嫌われながら生きるか。俺の手を取り、住みやすい世界で生きるか」
そう言うと、蒼玉は振り返らずに部屋を出た。そのあとに続いた桂は、「茶を持ってきますからそれまでに食べ終えなさい」と言い、襖を閉めた。
一人になると、体から緊張が抜けていく。が、息をつくより先に、水奈は盆に箸を置き、目を閉じて祈った。
蒼玉の示した二択は、水奈にとっては一択も同然だ。
雪晴に会いたい。そのためにはまず、自分の無事を知らせなくては。
(銀龍様、雪晴殿下をお助けください)
そう考えたところで、水奈の祈りが止まる。
目的が明確でない祈りは、銀龍に届かない。雪晴に何を与えてもらうか、決めなくては。
少し考えてから、水奈は「よし」と呟いた。
(雪晴殿下に、指針を差し上げてください)
彼は、剣で試合せよと言われてから、ずっと焦っている。
その上、水奈が行方不明となれば、優しい彼のことだ。「水奈は心配だが鍛錬もしなければ」と、何から手をつければいいか困惑しているかもしれない。
(今、何をすべきか。雪晴殿下に教えて差し上げてください)
祈りを終えると、水奈はまた箸を手に取り、漬物を口に放り込んだ。
桂が戻ってきた時、食事が残っていたら、蒼玉に報告されるかもしれない。
白飯、味噌汁、と次々に食べる。一人になってホッとしたせいか、さっきよりも味を感じる。おかげで箸が進んだ。
最後に湯のみの水を飲み干し、耳を澄ませる。
桂は、まだ来ないようだ。
(間に合った……)
ホッと胸をなで下ろすと、やっと考え事をする余裕が出てきた。
(雪晴殿下は、今頃どうなさっているかしら)
水奈が誘拐された時、休憩時間が終われば、雪晴の屋敷に戻る予定だった。
どのくらい気を失っていたかわからないが……雪晴はもう、水奈に異変が起きたことに気付いているだろう。
(あまり騒ぎになっていませんように)
その願いが虚しいものであることを、水奈はまだ知らない。
*
夜が更け、使用人までもが床につく頃。桂は、白銀城の廊下を歩いていた。点々と置かれた行灯を頼りに。
蒼玉の自室前に着くと、襖を静かに開く。
薄暗い廊下へ、ろうそくの灯りが細く漏れる。
「蒼玉殿下。〈銀龍の愛し子〉について、ご報告に上がりました」
「入れ」
文机に向かっていた蒼玉は、持っていた文を置き、廊下の方を振り返った。桂は室内に入り、平伏し、口を開いた。
「食事はすべて食べました。反抗する様子は見られません」
「逃走経路を探す素ぶりは?」
「ないようです。廊下の見張りが申しておりましたが、足音はせず、たまに衣擦れの音がする程度。〈愛し子〉はずっと寝ていたようで、庭の見張りが言うには、窓から外を覗くこともなかったと」
「……ずいぶん大人しいな」
蒼玉はため息をつき、眉をひそめた。
「逃亡を諦めたのでしょうか?」
「そうは思えんが……ひとまず、見張りには『引き続き、油断せずに監視しろ』と伝えておけ。〈銀龍の愛し子〉は水を操る。血を沸騰させて見張りを殺し、逃げるつもりかもしれん。様子がおかしければ、連れてきた時のように気絶させてもいい」
「かしこまりました」
頭を下げる桂に、蒼玉はまた話しかける。
「ところで、城や神殿内の様子はどうだ? 〈愛し子〉の捜索は始まったのか?」
「はい。王妃殿下と近衛兵隊長の荒樫が、一部の兵を雪晴王子に貸したようで。百名ほどが〈愛し子〉の捜索に当たっています。また、湖宇王子の私兵も、城下町で聞き込みをしています」
「湖宇の? なぜあいつが雪晴に兵を貸すんだ」
「湖宇王子の意思ではないようです、抜け殻同然になっていますので。ここぞとばかりに直属の兵士が動き、王妃殿下へ『雪晴王子に協力したい』と願い出た、と聞きました。その後、許可がおりたのでは」
「……なるほど。予想以上の人数が動いているな」
蒼玉は、面倒だと言いたげに頭をかいた。
「神殿は、どうせ総出で捜索しているんだろう?」
「はい。参拝者から情報を集め、雨乞いの祈祷をおこなうと称し、城の南方を回っています」
「それなら、すでに〈愛し子〉の居場所も大方ばれているだろう」
「……近付いてくる者を消しますか?」
桂が、髪に挿したかんざしへ手を伸ばす。
「いや、まだやめておけ。あの場所に近寄った者だけが死ねば、余計に怪しまれる」
「ですが、神官を何人か始末すれば、雪晴王子も怯むのでは?」
「それは、命を惜しんでいる場合だ。今の雪晴はむしろ逆。自分より侍女が大事だからな。死人が出れば、ますます〈愛し子〉の身を案じて、探し出そうとするはずだ」
桂が「なるほど」とうなずくと、蒼玉はニヤリと口元をゆがめた。
「それで、雪晴はどうしてる? 剣の稽古も手につかず、侍女を探し回っているんじゃないか?」
「いえ、それが……」
桂が目を泳がせる。蒼玉は笑みを消し、首をかしげた。
「どうした? まさか、探していないのか?」
「今日の夕方までは、必死の形相で駆けずり回っていましたが……急にピタリと捜索をやめ、剣の稽古に戻ったのです」
「何だと? なぜ……」
眉間にしわを寄せた蒼玉は、ハッとした。
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