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王太子選定の儀・一騎打ち
93 押し寄せる貴族と返り討ち
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迷宮の試練を終え、一心地ついた水奈は、春の訪れに気が付いた。
カエデの森や蓮沼はまだ寂しいが、草むらには白や黄色の花が咲き乱れ、虫も姿を見せ始めた。
枯れ草と雪ばかりだった沼地は賑やかになり、今は──賑やかを通り越し、騒々しかった。
「殿下、これは……何が起きたのでしょう?」
「参ったな……」
水奈と雪晴は、屋敷の正面玄関で、土間へ下りることもできず、呆然と立ち尽くしていた。
屋敷の外にはおよそ百人の貴族と、彼らを運んできた駕籠、その担ぎ手が所狭しとひしめいている。
「あなた、もっと後ろに行ってくださる?」
「先に到着したのは私ですわよ。そちらがお下がりになったら?」
「本気でおっしゃっていますの? 私の父が誰かわかっていないようね。白銀城の侍従長補佐よ!」
「だから何? 私の父は近衛兵副長ですわ!」
令嬢は睨み合い、その父らしき男性たちは、「うちの娘が失敬」と牽制の笑みを向け合っている。
樹がいればまた違ったのだろうが、仕事の引き継ぎなどのため、雪晴の護衛としてやって来るのは明日からだ。
(雪晴殿下が何か言おうとしても、誰も聞いてくれないし。タカ様も、ここへいらっしゃるのは昼過ぎだとおっしゃっていたし……)
水奈と雪晴は、そこかしこで散る火花を前に、途方に暮れた。
膠着していた状況は、ある人物の到来によって終わった。
その人物は、沼地の入り口で駕籠から降りると、娘らしき女を連れて悠々と屋敷に近付いてくる。
「白雲様だ……」
「国境守の?」
「なぜこんなところに……」
貴族の父親たちは、慌てて娘を引っ張り、屋敷までの道を開けた。
およそ百人が頭を下げ、ようやく喧騒が鎮まった。
脇に控えた貴族のうち、父親たちは冷や汗をかき、娘たちは恨めしげに白雲の娘を睨んでいる。
刺々しい視線を意にも介さず、白雲と娘は堂々と水奈たちのもとへ歩いてくる。そのあとを、つづらを抱えた従者が続く。
二人は当たり前のように敷居をまたぎ、土間へ踏み入った。
その瞬間、甘ったるい匂いが鼻をつき、水奈は一瞬顔をしかめた。
「雪晴殿下。国境守の白雲がご挨拶申し上げます」
「私は、娘の蓉花と申します。一つ目の儀式を越えられたお祝いを、お持ちしました」
白雲と蓉花が頭を下げる。
白雲は、青地に波紋の柄の袍。蓉花は、薄紅色の着物の上に、白い羽織を着て、結い上げた髪には桜のかんざしを挿している。
二人は顔を上げた。一見すると品のいい父娘だが、目は水奈たちを見下し、唇には嘲笑が浮かんでいる。
「……どうもありがとう。しかし、お引き取り願えるかな?」
雪晴が硬い声で言うと、白雲と蓉花はムッとしたように言い返してきた。
「ですが、このような場所では満足にお食事も摂れませんでしょう? 着物も肩掛けも古びているではありませんか」
白雲は雪晴を指さし、かぶりを振った。
「いやはや、神殿の暮らしは慎ましいですからな」
「しかも、侍女は後ろ盾のない洗濯女。そんな女を押し付けられたばかりに……おかわいそうな雪晴殿下!」
口々に言う二人に、水奈は唇を引き結んだ。そうやって、肩を丸めたくなるのをこらえていた。
すると、雪晴が水奈の手を強くつかんだ。励ますというより、助けを求めるような握り方だ。
どうしたのだろう、と水奈が雪晴を見ると、彼は強張った笑顔で白雲たちに声をかけた。
「私がかわいそうだと?」
「ええ、そうですとも!」
蓉花が大きくうなずいた。
「雪晴殿下が、無力で醜い妻をお迎えするなんて。考えるだけで胸が痛みます。このままでは王位に就かれても、地位と領地を与えられても、臣下に侮られてしまいますわ」
だから自分を妻にしろ──蓉花は、そう言いたげに上目遣いで雪晴を見た。
彼女の発言もしぐさも、水奈は何とも思わなかった。気にする余裕もなかった。
雪晴が渾身の力で水奈の手を握りしめてくるので、その痛みを顔に出すまいと必死に歯を食いしばっていた。
何でもないふりをしようと、ただそう思っていた。
つないでいる手から、雪晴の恐怖が伝わってきたからだ。
雪晴は、手に力を込めているとは思えない、平静を装った声で蓉花へ微笑みかける。
「では……『体を拭きます』と言われて着物を脱いだら、懐剣を巻いた手ぬぐいを押しつけられて、背中に傷を負ったんだが、そのことも哀れんでくれるかな?」
「ええ、もちろん……え?」
蓉花が、ぽかんと口を開けた。数秒ほどそうしていた彼女は、突然カッと目を見開いた。ひたいからは冷や汗が吹き出している。
「わ、わわ私は……そ、そのような……」
「いや、確かに君だったよ。『国境守の娘の私が、どうしてこんな汚い場所に』とよく言ってたじゃないか」
「そ、それは……別の者ですわ! 国境守は五人いますのよ! 殿下はご存知ないでしょうけど!」
二人の会話を聞いていた水奈は、愕然としていた。手の痛みも忘れていた。
(この方は、雪晴殿下の元侍女様? まさか、ほかの方々も……?)
ここに集まった大勢の娘たちは皆、雪晴の元侍女なのだろうか。彼を痛めつけておきながら、雪晴が王妃の支持を得たと知り、「侍女にしてくれ」と頼みに来たのか。
絶句する水奈の耳に、雪晴の声が聞こえてくる。
「でも、その声は聞き覚えがあるけど。それから匂いも」
「に、匂い?」
「そう。この匂い……何だったかな。何かの花だったと思うけど」
「何かって何ですの⁉︎ 言いがかりはやめてくださる⁉︎」
蓉花の金切り声に、雪晴の手がかすかに揺れる。彼の怯えが水奈に伝わる。
水奈は、雪晴の心を支えるように言った。
「殿下。この香りは沈丁花です」
昔、住んでいた離れのそばに、沈丁花の木が植えてあった。
あの香りは、ここまで強くはなかったが。
水奈の一言を聞いた蓉花は、水奈をギッと睨みつけた。
「お前に発言を許していないわよ、魚女!」
水奈と雪晴はビクッと震えて、とっさに言葉が出なかった。
代わりに、外から覗き込んでくる何人かの娘が、聞こえよがしに言い合う。
「沈丁花の香って、白雲様のお気に入りじゃない!」
「そもそも、国境守の中で年頃の娘がおられるのは白雲様だけよねえ」
「うるさいっ!」
蓉花は、今度は外にいる娘たちを怒鳴りつける。
が、次の瞬間。彼女は父親に腕を引かれて、土間に膝をつかされた。
「お父様⁉︎」
「この……馬鹿者が!」
驚いている蓉花の頭をつかみ、白雲は無理矢理に土下座をさせる。
自身も平伏しながら、彼は雪晴に言った。
「雪晴殿下、何卒ご容赦を! まだ年若い娘です。礼儀を知らぬだけなのです。どうか、神殿や王妃殿下には内密に……」
「では、今すぐ沼地を出てもらえるかな? 荷物も持って帰ってくれ」
「はっ、仰せのままに!」
と、白雲は顔を上げた。きっと青ざめているのだろう、と思っていた水奈はハッとした。
白雲は眉を吊り上げ、目の周りを赤黒く染め、雪晴を見すえていた。
公衆の面前で、見下していた雪晴に言いくるめられ、「恥をかかされた」と怒っているのだろう。
(なんて人たちなの……)
水奈は唖然として、立ち去る白雲父娘を眺めた。すると、今度は別の娘が雪晴に話しかけてくる。
「雪晴殿下、次は私がお屋敷へ入ってもよろしくて?」
「あら、私が先よ!」
「構わないよ、何人でも来なさい」
雪晴が声をかけると、娘たちはいそいそと土間へ入ろうとした。雪晴は、すかさず彼女らに告げた。
「誰が、私に何をしたか。近くに来てくれた方がよく思い出せるからね」
娘たちの足が、ぴたりと止まる。隙を逃さず、雪晴は続けた。
「私を針で突いたのは誰かな。私に水をかけたまま帰った者は? 手足をつねられたこともあったよ。食事に砂を混ぜられたことも」
スラスラと語る雪晴から、娘たちは後ずさり、離れていく。
「お、お許しを……」
「何か言った? 聞こえないな。もっとそばにおいで。そうしたら、君たちが何者かよくわかるから」
そう言った雪晴は「ここにいて」と水奈にささやき、手を離した。彼は脇に置いていた草履を履き、外へ向かって歩いていく。
カエデの森や蓮沼はまだ寂しいが、草むらには白や黄色の花が咲き乱れ、虫も姿を見せ始めた。
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「殿下、これは……何が起きたのでしょう?」
「参ったな……」
水奈と雪晴は、屋敷の正面玄関で、土間へ下りることもできず、呆然と立ち尽くしていた。
屋敷の外にはおよそ百人の貴族と、彼らを運んできた駕籠、その担ぎ手が所狭しとひしめいている。
「あなた、もっと後ろに行ってくださる?」
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樹がいればまた違ったのだろうが、仕事の引き継ぎなどのため、雪晴の護衛としてやって来るのは明日からだ。
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「白雲様だ……」
「国境守の?」
「なぜこんなところに……」
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およそ百人が頭を下げ、ようやく喧騒が鎮まった。
脇に控えた貴族のうち、父親たちは冷や汗をかき、娘たちは恨めしげに白雲の娘を睨んでいる。
刺々しい視線を意にも介さず、白雲と娘は堂々と水奈たちのもとへ歩いてくる。そのあとを、つづらを抱えた従者が続く。
二人は当たり前のように敷居をまたぎ、土間へ踏み入った。
その瞬間、甘ったるい匂いが鼻をつき、水奈は一瞬顔をしかめた。
「雪晴殿下。国境守の白雲がご挨拶申し上げます」
「私は、娘の蓉花と申します。一つ目の儀式を越えられたお祝いを、お持ちしました」
白雲と蓉花が頭を下げる。
白雲は、青地に波紋の柄の袍。蓉花は、薄紅色の着物の上に、白い羽織を着て、結い上げた髪には桜のかんざしを挿している。
二人は顔を上げた。一見すると品のいい父娘だが、目は水奈たちを見下し、唇には嘲笑が浮かんでいる。
「……どうもありがとう。しかし、お引き取り願えるかな?」
雪晴が硬い声で言うと、白雲と蓉花はムッとしたように言い返してきた。
「ですが、このような場所では満足にお食事も摂れませんでしょう? 着物も肩掛けも古びているではありませんか」
白雲は雪晴を指さし、かぶりを振った。
「いやはや、神殿の暮らしは慎ましいですからな」
「しかも、侍女は後ろ盾のない洗濯女。そんな女を押し付けられたばかりに……おかわいそうな雪晴殿下!」
口々に言う二人に、水奈は唇を引き結んだ。そうやって、肩を丸めたくなるのをこらえていた。
すると、雪晴が水奈の手を強くつかんだ。励ますというより、助けを求めるような握り方だ。
どうしたのだろう、と水奈が雪晴を見ると、彼は強張った笑顔で白雲たちに声をかけた。
「私がかわいそうだと?」
「ええ、そうですとも!」
蓉花が大きくうなずいた。
「雪晴殿下が、無力で醜い妻をお迎えするなんて。考えるだけで胸が痛みます。このままでは王位に就かれても、地位と領地を与えられても、臣下に侮られてしまいますわ」
だから自分を妻にしろ──蓉花は、そう言いたげに上目遣いで雪晴を見た。
彼女の発言もしぐさも、水奈は何とも思わなかった。気にする余裕もなかった。
雪晴が渾身の力で水奈の手を握りしめてくるので、その痛みを顔に出すまいと必死に歯を食いしばっていた。
何でもないふりをしようと、ただそう思っていた。
つないでいる手から、雪晴の恐怖が伝わってきたからだ。
雪晴は、手に力を込めているとは思えない、平静を装った声で蓉花へ微笑みかける。
「では……『体を拭きます』と言われて着物を脱いだら、懐剣を巻いた手ぬぐいを押しつけられて、背中に傷を負ったんだが、そのことも哀れんでくれるかな?」
「ええ、もちろん……え?」
蓉花が、ぽかんと口を開けた。数秒ほどそうしていた彼女は、突然カッと目を見開いた。ひたいからは冷や汗が吹き出している。
「わ、わわ私は……そ、そのような……」
「いや、確かに君だったよ。『国境守の娘の私が、どうしてこんな汚い場所に』とよく言ってたじゃないか」
「そ、それは……別の者ですわ! 国境守は五人いますのよ! 殿下はご存知ないでしょうけど!」
二人の会話を聞いていた水奈は、愕然としていた。手の痛みも忘れていた。
(この方は、雪晴殿下の元侍女様? まさか、ほかの方々も……?)
ここに集まった大勢の娘たちは皆、雪晴の元侍女なのだろうか。彼を痛めつけておきながら、雪晴が王妃の支持を得たと知り、「侍女にしてくれ」と頼みに来たのか。
絶句する水奈の耳に、雪晴の声が聞こえてくる。
「でも、その声は聞き覚えがあるけど。それから匂いも」
「に、匂い?」
「そう。この匂い……何だったかな。何かの花だったと思うけど」
「何かって何ですの⁉︎ 言いがかりはやめてくださる⁉︎」
蓉花の金切り声に、雪晴の手がかすかに揺れる。彼の怯えが水奈に伝わる。
水奈は、雪晴の心を支えるように言った。
「殿下。この香りは沈丁花です」
昔、住んでいた離れのそばに、沈丁花の木が植えてあった。
あの香りは、ここまで強くはなかったが。
水奈の一言を聞いた蓉花は、水奈をギッと睨みつけた。
「お前に発言を許していないわよ、魚女!」
水奈と雪晴はビクッと震えて、とっさに言葉が出なかった。
代わりに、外から覗き込んでくる何人かの娘が、聞こえよがしに言い合う。
「沈丁花の香って、白雲様のお気に入りじゃない!」
「そもそも、国境守の中で年頃の娘がおられるのは白雲様だけよねえ」
「うるさいっ!」
蓉花は、今度は外にいる娘たちを怒鳴りつける。
が、次の瞬間。彼女は父親に腕を引かれて、土間に膝をつかされた。
「お父様⁉︎」
「この……馬鹿者が!」
驚いている蓉花の頭をつかみ、白雲は無理矢理に土下座をさせる。
自身も平伏しながら、彼は雪晴に言った。
「雪晴殿下、何卒ご容赦を! まだ年若い娘です。礼儀を知らぬだけなのです。どうか、神殿や王妃殿下には内密に……」
「では、今すぐ沼地を出てもらえるかな? 荷物も持って帰ってくれ」
「はっ、仰せのままに!」
と、白雲は顔を上げた。きっと青ざめているのだろう、と思っていた水奈はハッとした。
白雲は眉を吊り上げ、目の周りを赤黒く染め、雪晴を見すえていた。
公衆の面前で、見下していた雪晴に言いくるめられ、「恥をかかされた」と怒っているのだろう。
(なんて人たちなの……)
水奈は唖然として、立ち去る白雲父娘を眺めた。すると、今度は別の娘が雪晴に話しかけてくる。
「雪晴殿下、次は私がお屋敷へ入ってもよろしくて?」
「あら、私が先よ!」
「構わないよ、何人でも来なさい」
雪晴が声をかけると、娘たちはいそいそと土間へ入ろうとした。雪晴は、すかさず彼女らに告げた。
「誰が、私に何をしたか。近くに来てくれた方がよく思い出せるからね」
娘たちの足が、ぴたりと止まる。隙を逃さず、雪晴は続けた。
「私を針で突いたのは誰かな。私に水をかけたまま帰った者は? 手足をつねられたこともあったよ。食事に砂を混ぜられたことも」
スラスラと語る雪晴から、娘たちは後ずさり、離れていく。
「お、お許しを……」
「何か言った? 聞こえないな。もっとそばにおいで。そうしたら、君たちが何者かよくわかるから」
そう言った雪晴は「ここにいて」と水奈にささやき、手を離した。彼は脇に置いていた草履を履き、外へ向かって歩いていく。
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