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雪晴の覚醒
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「へえ、そりゃ面白い」
湖宇の体が、ふらりとよろめく。さっきよりも顔が赤い。興奮して酔いが回ってきたらしい。
「そこまで言うなら、魚女を迎えに来いよ!」
「湖宇! こいつの言うことなんぞ聞くんじゃない」
国王はいさめるように呼びかけたが、湖宇は口を尖らせて父親を睨んだ。
「なぜですか? 雪晴がここまで来れるわけありませんよ。それに、こいつが醜態をさらしたところで笑ってやれば、『国王が雪晴を守ろうとした』なんて不名誉なことは言われませんよ」
「む……それもそうだな。では、能なし。こちらへ来い!」
国王は命じたが、雪晴はまだ動かない。
「その前にお約束ください。私がそちらまで渡り切れば、水奈を放免すると」
「ああ、約束してやる。ただし、一歩でも落ちれば即座に屋敷へ戻れ。そして、二度と沼地から出てくるな!」
「そうだそうだ!」
酔っ払った湖宇が、楽しげに手を叩く。
新たな見せ物が始まったことで、城壁上の貴族たちに興奮が戻る。
「おい、いくつ目の石を踏み外すか賭けようぜ!」
「じゃ、俺は一つ目だ」
「あっ、俺も一つ目に賭けようと思ってたのに!」
喧騒を浴びる雪晴は、十個の飛び石に目を落とし、注意深く歩き始めた。
一つ。二つ。三つ……両足を揃えながらだが、確実に雪晴は進んでいく。
喧騒が段々と小さくなる。誰もが息をのみ、雪晴を見つめる。
水奈は、支えたくてもできない自分を歯がゆく思いながら、雪晴を見守った。
最後の飛び石は、やや離れたところにある。水奈が体勢を崩しそうになったところだ。
「お……落ちろ! 落ちてしまえっ!」
突然、湖宇が焦ったように叫んだ。雪晴の肩がビクッと跳ねる。
同じく驚いた水奈は、とっさに祈ってしまった。
(駄目っ! 銀龍様、殿下を助けて……!)
次の瞬間、雪晴は、目の前で何かがはじけたように強くまぶたを閉じた。狭い飛び石の上で、ぐらりとよろめく。
「殿下っ!」
水奈は、しまった、と悔いた。とっさの祈りが、雪晴に神託を──痛みを与えてしまった。
雪晴は体勢を立て直せず、苔むした地面に手をついた。
「よ……よしっ、失敗だ。ざまあみろ!」
湖宇が雪晴を指差し、高笑いする。そこへ、すかさずタカが声を張り上げた。
「まだです! 殿下は『土に足裏をつけずに渡り切れたなら』とおっしゃいました。まだ、足は飛び石に乗っています!」
そんなタカを、国王が睨みつける。
「また貴様か、小うるさいやつめ! そう思っておるのは貴様だけだ!」
国王は吼えるように言うと、天道に目をやった。
「なあ、前神官長の従者よ。お前はどうだ? 能なしは転んだ。失敗だと思わんか? そこのババアは、最高位といえど一神官に過ぎん。次期神官長候補のお前がうなずけば、ほかの者も追従するであろう」
国王がニヤリと笑う。水奈の胸に、一抹の不安がよぎる。
しかし、天道はためらいなく首を横に振った。
「いいえ、陛下。雪晴殿下はお手をつかれただけ。失敗なさっていません」
「なっ……お、お前、何を言う! 以前はこいつを憎んでおったではないか!」
「はい、以前は。ですが、雪晴殿下のお苦しみと、神託をご覧になったことを知り、考えを改めたのです」
「能なしが神託を……⁉︎」
国王が目を見開く。天道はしたり顔でさらに続けた。
「この場へ我々が参りましたのも、殿下が神託をご覧になったからです。『十の刻に、供物の門で水奈殿が処刑される』──殿下はそう教えてくださいました」
言い終えた天道は、眉を寄せるタカを横目に見て、楽しげに笑った。
「そんな顔をするな。『雪晴殿下のお力について訴えても、たしかな根拠を示せねば、妄言を吐いたとして王の怒りを買う』。神官長にそう言われていたが、今ならよかろう?」
「ええ、まあ……暴露したのがあなたというのが、気に食わないですけど。ま、いいでしょう。疑いの目は、ほとんどないようですし」
タカがぶすっとして仰ぎ見たのは、城壁の上だ。そこから、驚きと困惑の声が聞こえてくる。
「たしかに、処刑の日や場所は知りようがないよな……本当に雪晴殿下は、神託を?」
「だが、あの雪晴殿下だぞ?」
「しかし、お目は見えるようだ。やはり〈銀龍の瞳〉が開眼したのでは……」
貴族だけでなく兵士までも、「まさか」「しかし」と言い合っている。国王と湖宇は、呆然とたたずむだけ。
そこへ、雪晴の声が朗々と響いた。
「陛下! これでよろしいのですよね?」
雪晴は、いつの間にか飛び石を渡り終え、石畳の上に立っていた。
「約束通り、水奈を返していただきます。私を殺そうとしたのは彼女ではないと、この目が知っておりますから」
言いながら、手についた苔をパッパッと払い、彼は水奈のもとへ歩を進める。
「お、おい、勝手に何してるんらお⁉︎」
完全に酔いが回ったらしい湖宇が、フラフラと雪晴に詰め寄る。雪晴は立ち止まり、厳しい目つきで湖宇を睨んだ。
「私が約束を交わしたのは、陛下です。兄上は黙っていてください」
「なっ……!」
湖宇は言葉に詰まり、歯をくいしばった。酒で頭が働かないのか、何も言い返せないようだ。
雪晴はもう湖宇に構わず、水奈の隣に立った。
「雪晴殿下……」
無事に渡り切れた、怪我をしないでいてくれた──水奈は安堵して、雪晴を見上げた。
しかし、彼がそばにひざまずくと、やはり鱗を見られるのが怖くなって、顔を背けてしまった。
雪晴は一瞬硬直したが、すぐに手を伸ばし、水奈の肩に触れた。
「水奈、大丈夫か?」
「はい……殿下はお寒くなかったですか? お食事は召し上がりましたか?」
うつむいたまま尋ねると、耳元で苦笑が聞こえた。
「私は問題ない。君が『タカに知らせてほしい』と言ったおかげで、兵士が神殿へ走ってくれたんだ。神官たちがすぐにやって来て、世話を焼いてくれたよ。水奈の方こそ、なぐられたりしていないか?」
「何もされておりません。荒樫様がよくしてくださったので」
「荒樫? ……ああ、君を連れていった兵士か。どこにいる?」
雪晴が周りを見回すと、端にひかえる兵士たちの中から荒樫が進み出てくる。
彼は雪晴と水奈の前でひざまずき、頭を下げた。
「雪晴殿下……このたびは、申し訳ございませんでした。あなた様の侍女を捕えましたのは、私の過ちでございます。責任を取り、罰をお受けします」
「……いや。彼女の縄を切ってくれたら、それでいい。お前は水奈を守ってくれたようだし、私個人はそれで水に流したい」
「かしこまりました……寛大なご処置をいただきまして、感謝いたします」
荒樫は微笑み、再び頭を下げた。それから腰の剣を抜き、水奈の縄を切った。
雪晴が縄を払い落としていると、怒りの声が飛んできた。
「そこの兵、何をしている! 余も湖宇も、罪人を解放せよとは申しておらぬぞ!」
国王が、やっと我に返ったらしい。
「なのに能なしの命令を優先するとは……王族を愚弄するのか⁉︎」
「何をおっしゃいます。私も王族ですよ、陛下──いえ、父上?」
雪晴が挑発の笑みを浮かべる。国王は、ほろ酔いの赤ら顔をさらに赤くし、怒鳴り返した。
「目が見えるようになっただけだろう、偉そうに! 〈銀龍の瞳〉を持たずして何が王子だ。王家の恥のくせに、勝手に兵を動かしおって。罰として、先程の約束は取り消してくれる!」
「まあ! なんて横暴な。その上、まだ雪晴殿下のお力をお認めにならないのですか⁉︎」
飛び石の向こうで、タカが拳を振り上げている。彼女はまだ何か喚こうとしたが、雪晴は手を挙げ、それを制した。
そして、国王に尋ねた。
「どうすれば、私が〈銀龍の瞳〉を持つ王子だと認めてくださいますか」
「誰の耳にも明らかな神託を示すことができれば、だ!」
「そうできれば、私への罰はなかったことに?」
「ああ。だが、どうやって示す? でたらめの神託でもぬかしてみるか?」
「それは、湖宇殿下がお小さい頃によくなさったことでは……」
荒樫が眉をひそめて、ボソッと言った。雪晴は笑いを押し殺しながら、口を開いた。
「でたらめなど不要です。ついさっき、本物の神託を授かりましたので」
「へっ?」
湖宇が間の抜けた声を出す。そのあとも文句らしきものをモゴモゴ言っていたが、呂律が回らず、言葉になっていない。
国王はといえば、「嘘だ」と言いながらも、怯えたように後ずさっている。
雪晴は二人を無視して、水奈の肩を叩いた。
「水奈。すまないが、手のひらを貸してくれないか」
「手のひらですか? もしかして……」
「ああ。さっき飛び石を渡っていた時、新しい神託が現れた」
湖宇の体が、ふらりとよろめく。さっきよりも顔が赤い。興奮して酔いが回ってきたらしい。
「そこまで言うなら、魚女を迎えに来いよ!」
「湖宇! こいつの言うことなんぞ聞くんじゃない」
国王はいさめるように呼びかけたが、湖宇は口を尖らせて父親を睨んだ。
「なぜですか? 雪晴がここまで来れるわけありませんよ。それに、こいつが醜態をさらしたところで笑ってやれば、『国王が雪晴を守ろうとした』なんて不名誉なことは言われませんよ」
「む……それもそうだな。では、能なし。こちらへ来い!」
国王は命じたが、雪晴はまだ動かない。
「その前にお約束ください。私がそちらまで渡り切れば、水奈を放免すると」
「ああ、約束してやる。ただし、一歩でも落ちれば即座に屋敷へ戻れ。そして、二度と沼地から出てくるな!」
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新たな見せ物が始まったことで、城壁上の貴族たちに興奮が戻る。
「おい、いくつ目の石を踏み外すか賭けようぜ!」
「じゃ、俺は一つ目だ」
「あっ、俺も一つ目に賭けようと思ってたのに!」
喧騒を浴びる雪晴は、十個の飛び石に目を落とし、注意深く歩き始めた。
一つ。二つ。三つ……両足を揃えながらだが、確実に雪晴は進んでいく。
喧騒が段々と小さくなる。誰もが息をのみ、雪晴を見つめる。
水奈は、支えたくてもできない自分を歯がゆく思いながら、雪晴を見守った。
最後の飛び石は、やや離れたところにある。水奈が体勢を崩しそうになったところだ。
「お……落ちろ! 落ちてしまえっ!」
突然、湖宇が焦ったように叫んだ。雪晴の肩がビクッと跳ねる。
同じく驚いた水奈は、とっさに祈ってしまった。
(駄目っ! 銀龍様、殿下を助けて……!)
次の瞬間、雪晴は、目の前で何かがはじけたように強くまぶたを閉じた。狭い飛び石の上で、ぐらりとよろめく。
「殿下っ!」
水奈は、しまった、と悔いた。とっさの祈りが、雪晴に神託を──痛みを与えてしまった。
雪晴は体勢を立て直せず、苔むした地面に手をついた。
「よ……よしっ、失敗だ。ざまあみろ!」
湖宇が雪晴を指差し、高笑いする。そこへ、すかさずタカが声を張り上げた。
「まだです! 殿下は『土に足裏をつけずに渡り切れたなら』とおっしゃいました。まだ、足は飛び石に乗っています!」
そんなタカを、国王が睨みつける。
「また貴様か、小うるさいやつめ! そう思っておるのは貴様だけだ!」
国王は吼えるように言うと、天道に目をやった。
「なあ、前神官長の従者よ。お前はどうだ? 能なしは転んだ。失敗だと思わんか? そこのババアは、最高位といえど一神官に過ぎん。次期神官長候補のお前がうなずけば、ほかの者も追従するであろう」
国王がニヤリと笑う。水奈の胸に、一抹の不安がよぎる。
しかし、天道はためらいなく首を横に振った。
「いいえ、陛下。雪晴殿下はお手をつかれただけ。失敗なさっていません」
「なっ……お、お前、何を言う! 以前はこいつを憎んでおったではないか!」
「はい、以前は。ですが、雪晴殿下のお苦しみと、神託をご覧になったことを知り、考えを改めたのです」
「能なしが神託を……⁉︎」
国王が目を見開く。天道はしたり顔でさらに続けた。
「この場へ我々が参りましたのも、殿下が神託をご覧になったからです。『十の刻に、供物の門で水奈殿が処刑される』──殿下はそう教えてくださいました」
言い終えた天道は、眉を寄せるタカを横目に見て、楽しげに笑った。
「そんな顔をするな。『雪晴殿下のお力について訴えても、たしかな根拠を示せねば、妄言を吐いたとして王の怒りを買う』。神官長にそう言われていたが、今ならよかろう?」
「ええ、まあ……暴露したのがあなたというのが、気に食わないですけど。ま、いいでしょう。疑いの目は、ほとんどないようですし」
タカがぶすっとして仰ぎ見たのは、城壁の上だ。そこから、驚きと困惑の声が聞こえてくる。
「たしかに、処刑の日や場所は知りようがないよな……本当に雪晴殿下は、神託を?」
「だが、あの雪晴殿下だぞ?」
「しかし、お目は見えるようだ。やはり〈銀龍の瞳〉が開眼したのでは……」
貴族だけでなく兵士までも、「まさか」「しかし」と言い合っている。国王と湖宇は、呆然とたたずむだけ。
そこへ、雪晴の声が朗々と響いた。
「陛下! これでよろしいのですよね?」
雪晴は、いつの間にか飛び石を渡り終え、石畳の上に立っていた。
「約束通り、水奈を返していただきます。私を殺そうとしたのは彼女ではないと、この目が知っておりますから」
言いながら、手についた苔をパッパッと払い、彼は水奈のもとへ歩を進める。
「お、おい、勝手に何してるんらお⁉︎」
完全に酔いが回ったらしい湖宇が、フラフラと雪晴に詰め寄る。雪晴は立ち止まり、厳しい目つきで湖宇を睨んだ。
「私が約束を交わしたのは、陛下です。兄上は黙っていてください」
「なっ……!」
湖宇は言葉に詰まり、歯をくいしばった。酒で頭が働かないのか、何も言い返せないようだ。
雪晴はもう湖宇に構わず、水奈の隣に立った。
「雪晴殿下……」
無事に渡り切れた、怪我をしないでいてくれた──水奈は安堵して、雪晴を見上げた。
しかし、彼がそばにひざまずくと、やはり鱗を見られるのが怖くなって、顔を背けてしまった。
雪晴は一瞬硬直したが、すぐに手を伸ばし、水奈の肩に触れた。
「水奈、大丈夫か?」
「はい……殿下はお寒くなかったですか? お食事は召し上がりましたか?」
うつむいたまま尋ねると、耳元で苦笑が聞こえた。
「私は問題ない。君が『タカに知らせてほしい』と言ったおかげで、兵士が神殿へ走ってくれたんだ。神官たちがすぐにやって来て、世話を焼いてくれたよ。水奈の方こそ、なぐられたりしていないか?」
「何もされておりません。荒樫様がよくしてくださったので」
「荒樫? ……ああ、君を連れていった兵士か。どこにいる?」
雪晴が周りを見回すと、端にひかえる兵士たちの中から荒樫が進み出てくる。
彼は雪晴と水奈の前でひざまずき、頭を下げた。
「雪晴殿下……このたびは、申し訳ございませんでした。あなた様の侍女を捕えましたのは、私の過ちでございます。責任を取り、罰をお受けします」
「……いや。彼女の縄を切ってくれたら、それでいい。お前は水奈を守ってくれたようだし、私個人はそれで水に流したい」
「かしこまりました……寛大なご処置をいただきまして、感謝いたします」
荒樫は微笑み、再び頭を下げた。それから腰の剣を抜き、水奈の縄を切った。
雪晴が縄を払い落としていると、怒りの声が飛んできた。
「そこの兵、何をしている! 余も湖宇も、罪人を解放せよとは申しておらぬぞ!」
国王が、やっと我に返ったらしい。
「なのに能なしの命令を優先するとは……王族を愚弄するのか⁉︎」
「何をおっしゃいます。私も王族ですよ、陛下──いえ、父上?」
雪晴が挑発の笑みを浮かべる。国王は、ほろ酔いの赤ら顔をさらに赤くし、怒鳴り返した。
「目が見えるようになっただけだろう、偉そうに! 〈銀龍の瞳〉を持たずして何が王子だ。王家の恥のくせに、勝手に兵を動かしおって。罰として、先程の約束は取り消してくれる!」
「まあ! なんて横暴な。その上、まだ雪晴殿下のお力をお認めにならないのですか⁉︎」
飛び石の向こうで、タカが拳を振り上げている。彼女はまだ何か喚こうとしたが、雪晴は手を挙げ、それを制した。
そして、国王に尋ねた。
「どうすれば、私が〈銀龍の瞳〉を持つ王子だと認めてくださいますか」
「誰の耳にも明らかな神託を示すことができれば、だ!」
「そうできれば、私への罰はなかったことに?」
「ああ。だが、どうやって示す? でたらめの神託でもぬかしてみるか?」
「それは、湖宇殿下がお小さい頃によくなさったことでは……」
荒樫が眉をひそめて、ボソッと言った。雪晴は笑いを押し殺しながら、口を開いた。
「でたらめなど不要です。ついさっき、本物の神託を授かりましたので」
「へっ?」
湖宇が間の抜けた声を出す。そのあとも文句らしきものをモゴモゴ言っていたが、呂律が回らず、言葉になっていない。
国王はといえば、「嘘だ」と言いながらも、怯えたように後ずさっている。
雪晴は二人を無視して、水奈の肩を叩いた。
「水奈。すまないが、手のひらを貸してくれないか」
「手のひらですか? もしかして……」
「ああ。さっき飛び石を渡っていた時、新しい神託が現れた」
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