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17.聖女覚醒

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 バルサにもうすぐ到着するという頃にそれは突然やって来た。

 甲板からバルサの地を眺めていると眩暈と共に色という色、音という音、様々なものが身体に流れ込んでくるような感覚と共に意識を失った。

 すぐに近くにいたリノに助けられ、その後港にある宿屋へと運ばれたらしい。

 というのも、その後五日間眠っていたらしく、目を覚ました時にはミリーとスワンが私の傍にいた。

 私には聖女の力が宿っていて、どうすれば聖女の力を使えるのか、どこに行けばよいのかという事が頭の中に浮かんだ。だからお世話になった前聖女様がもうこの世をさっていかれたのだと分かった。

 聖女の力を持った私があの国を出れば、その恩恵を今までのようにあの国は受けられなくなった。これからは魔物や他国の侵略を恐れながら、闘い、国を維持して行く事を考えなければならない。

 でもそれは他国が今までやって来た事だから、当たり前の事だと言われれば仕方のない事だ。そう、聖女を国に封印し、国でその力を独占してきたツケを払わなければならない。

 聖女の封印、と言われても理解できないけど、実際、この国の昔の王は王家に伝わる古代魔法を使い聖女を国に封印してしまったのだ。その考えは自国主義の最たるものだ。自分の国さえ良ければいい。


 封印の解き方は次期聖女を聖女の結界から解放して逃す事のみ。リノの調べによると王族の継承権を持つごく一部の者か、過去の聖女の記憶を継承した当代の聖女と神殿側の一部の者しか知らない話しだという。

 けれど聖女の解放は自国の命運を賭けたものだったから、事情を知る神殿側も外の世界が逼迫した状態になるまで大事だとは考えていなかった。鎖国状態にあったのでそこまで危機感が無かったんだろう。

 私だって、大切な人達が生活している国だから、その人達が不幸になることは望まない。でも、そんな事を続けていればどの国も共倒れになってしまうのは分かる。

 

 過去に危機感がもたらされたのはバルサからの視察と称した一団がやって来た時だった。

 今ほどではなく、まだ少しは国交があった時だった。

 視察団は他国の自然災害や疫病に悩まされている原因が聖女の独占問題だと訴えたのだ。

 もちろんそんな事を言いふらされては困る国は、手を打ってきた。

 ここから紆余曲折を経て変化がもたらされるのには、長い年月がかかった。


 


 私は一気に取り込んだ聖女の記憶を身体に受け、五日間の眠りの中で様々な回想をした。

 そして考えた。今からの私の仕事は、荒れた国々を周り、少しずつ回復させて行くという事。

 それも、聖女の存在を隠しながら。言うのは簡単だけどとても難しい話だ。


「とりあえず、バルサの聖地と呼ばれる場所に行き、聖女の祈りを捧げてもらいたい」

 リノが言った。

 普通に考えて、バルサに来たのだから、まずはバルサからと言うのは当たり前の話なのかもしれないけど、

「それはいやよ、私はバルサからまず内陸に入り、そこから情報を集めながら何から始めるか考えるわ」

「・・・何故だ?」

 リノは不思議そうに聞いた。

「貴方はもともとバルサに思い入れがあるのだろうけど、ここで聖女の力を解放すれば、直ぐに聖女探しが始まるわ。今度は私がバルサに留め置かれる事になるのが目に見える」

「いや、だが・・・」

「聖女をあの国から解放するという約束を王女にしたのは貴方の前世だったのかしら?聖女になった王女は貴方が自分の元へ帰って来てくれるのをずっと待っていたわ。貴方を事故から救い出し聖女の力を借りてバルサに逃がしたけれど、ついには王女を迎えに帰って来ることはなかった」

「・・・確かに、その通りだが・・・」

「私はね、聖女の結界を特定の国に張るような事を今後するつもりはないの。――――聖女はもういなくなった、そう世界が思うようにしたいの」

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