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第二章
4.狩りと薬草
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俺は翌日、早速ジェイを連れて山に入った。
「まず、身支度からだが、俺は見ての通り色持ちと言われる魔力持ちなので、魔力が弱い村人の様な身を守る為の身支度はしていない。ジェイにも必要なさそうだが、どうする、一応それなりの身支度を整えてみるか?」
エルフの中には、自分の属性の色が髪に出る色持ちと呼ばれる者がいる。
そういう者は魔力が強いのだ。俺の髪は赤い色で、炎属性だった。
「いや、それは必要ない。私は魔力が強い方なので防御の身支度は必要ない。それに村人の猟師の身支度等は、今から目にする機会があるだろうから、気になる事はそのうち聞くだろう。その時に説明してくれるか?」
「もちろんだ。では猟についての説明は俺が猟をやりながらという事で良いか?」
「そうしてくれ、極力私は邪魔をしない様に気を付ける。だから、いつもアバルドがしているように猟をしながら教えてくれたら良い」
「よし、じゃあそうさせて貰う」
これは、手始めにジェイの身体能力を見る為でもあったが、そのたおやかな見た目を大きく裏切った、バケモノ並みの身体能力を保持している事を直ぐに思い知らされた。 それは、強い魔力が体内を廻り、身体の内部も外部も守っているからに他ならない。 そして、極めて自然に息をする様に魔術を行使する力量。
一応、ジェイの注文として、普通に一般の者に教えるように猟の基本から教えて欲しいと言う事だったので、一般的な基本から教える事にした。
「獣も魔獣もなるべく頭を側面から狙う事。心臓や肺もそうだ、正面から狙うと的が小さくなるし、頭蓋は正面からでは術の入る角度が悪いと魔力が弾かれ弱くなる。これは弓などで射る場合も同じだ」
「成る程、気をつける」
「後は、やはり血抜きは心臓が動いているうちが良いので、なるべくなら後頭部を狙え、脳震盪で倒れる。一番良くないのは、半矢(怪我をさせたまま)のまま逃がす事だ。怪我をさせたまま逃がすというのは、獣を無駄に苦しませる事を嫌がる事もあるが、手負いになった獣や魔獣はとても狂暴になる。村人には命取りになる場合も多い」
「分かった」
俺は武器に魔力を乗せて使う事が多い。弓や剣、ナイフと、時と場合により様々だ。
元々、炎系の魔法を得意としているので、必要な時以外は強い火力を山の中で使う事は避けたい。
自分が手本を見せた後、 試しに同じようにジェイに鹿を一頭狩らせて見たが、最小限に攻撃面積を小さくして、その代わりかなり強力な風魔法を使った殺傷能力の高い無駄のないやり方で獣を狩る傷の小ささに驚いた。
後頭部に小さな穴が空いていて、獣は昏倒している。
その後は、俺が鹿を処理する準備をして行く。
心臓が動いているうちに首をナイフで裂き頭を低い方に向けて放血させ、その後、早めに内臓を抜く必要がある。
ナイフも喉を裂いたり『止めさし』に使う物と、剥皮に使う物は形からして違う。
まず、内臓を傷つけない様に上手く正中線に沿って股から腹に刃を上に向けて切れ目を入れてやる。ここで、性線や乳腺は取り除く。
次に、腹から胸に切れ目を入れ、胃を傷つけないように胸骨を切断する。
その後は、鹿が食べた物をばら撒かないように食道を結束し、糞をばら撒かないように、骨盤を切断した後で、直腸を結束して、横隔膜を切り、内臓を取り出し、内臓を取り出した中を水で洗浄する。
生き物は食道や胃には食べた物があり、腸に糞が溜まって膀胱には尿がある。
それを傷つけて外に出さないようにしなければならないし、出口がある物は塞がなくては出て来てしまうのだ。
だから肛門周りをナイフで切って外し、その出口を紐で括って置くと処理が楽だ。
「つまり、腹を裂く時、胃や膀胱や糞の溜まった腸を傷つけると、肉が汚れて大変なことになるので気をつける事が必要だ」
「分かった」
アバルドは、『なんか、すみません、本当にすみません』と思いながら話をする自分が情けなかった。
どうしても、ジェイの顔を直視しながら話ができないのは何故だろう。
理由はわかっている、多分、あの魔女を彷彿とさせる美麗な顔が、いけないのだ、ふう。
「胆嚢も潰すと肉が苦くなるぞ」
場所をを示しながら教えると、ジェイは黙って頷いた。
シシでも鹿でも他の動物、魔獣でも同じだ。
「内臓を取り除いたら、腹の中を水で綺麗に洗浄する」
それを考えて、沢の近くで作業が出来る場所が有れば一番良い。
だが下流で飲み水にしている場所は使用してはならない。とまあ、そんな基本的な事を一つ一つ話ながら進めて行く。
取り除いた内臓は、必要な物を除くと深く掘った穴にいれ、火炎放射で焼いてから、土をかけた。
ダニや寄生虫は魔力を放つと死滅するので、先ず猟をしたければ魔力持ちである事が優先される。これは、差別ではなくヤトトジカ病等があり、命に関わる事だからだ。
大物を狩るといつも運ぶのが大変なのだが、その場で簡単に魔法陣を浮かび上がらせたジェイは、その中に獲物を飲み込ませ、洗浄しても良い沢まで飛ばした。
そして、今日は取り敢えず、肉の処理をしようと言う事になり、山を降り俺の家の傍にある解体作業小屋まで帰った。沢で内臓を抜いた鹿を作業小屋まで魔法陣でジェイに運んでもらう。
先ず、後ろ足を間接で切断し、吊るし専用の器具に後ろ足の骨を引っ掛けて吊るし、剥皮する。それから吊るされて下になった鹿の上半身の解体、次に下半身の解体となる。
細かい部位の切り分け方や、骨の抜き方など、一応一通り説明しながら俺はさっさとこなしていった。
最後に、部位によって分けた肉を、油紙で包むのを手伝いながら、ジェイがさらっと爆弾発言をした。
「あった方が便利だと思ったから、アバルドが準備してくれている家の裏の納屋に、状態維持の術式を施してある。広いので半分は肉の保存に使ってくれて良いぞ」
「状態維持!?」
「そうだ、薬草を保存するのにも必要なので、術式を組んで置いた。いつも、肉の処理や、暖かいものの準備が大変だろう、使いたい様に使ってくれ、便利な筈だ」
「あ、ああ、たすかるよ」
これは、とんでもない魔法だ。最上位の魔術師にしか扱えない代物ではないか、と思ったが、深く考えない事にした。考えたら負けだ。
そう言えば魔女との付き合いも、いつもそうだったではないかと、思いだしたのだ。
それから場所を先ほどジェイが言っていた状態維持の術式のかかった納屋に変える事にした。
ついでに先ほどの肉をジェイが魔術で倉庫に移動させた、かなり量があったので助かった。
鹿の骨は、頭蓋や角、下顎、肩甲骨は工芸品を作るのに欲しがる者がいるので、ギルドに卸すか、村の者と物々交換にも使える。
そちらは、綺麗に肉を削いだあと、大きな鍋で油脂や肉片を落とす為に2時間程ゆでる必要があるので、明日の午前中にする事にした。
後は、不要な骨等を、穴を掘った中で火炎放射で燃やしてから、土に埋めた。
それが終わってから、今日、山を歩いた時に見つけて採取しておいた薬草を並べて見る。今から季節は夏に向かう、まだ朝晩冷える事も多い。
「イエゾウコギ、ギドウシ、ガリアクス、クコルの実、ガビアの葉、マカル…、少し見て歩いただけだが、結構色々あるな」
ジェイが自分の取った薬草を何処からともなく出して来る。
今、取ったばかりの様に瑞々しい。
アバルドも濡らした布に包み油紙に包んでいたので、そうは傷んでいないが、ジェイが出した薬草に比べると少し新鮮さにかける。
ジェイは確認すると、またそれらを何処ともなく片してしまった。
空間の中に溶け込むように消えたと言ったら分かりやすいかもしれない。
それはそうと、朝から山に入り、昼飯にはクラッカーに甘いクロナッツバターを挟んだ物を二人分持って行っただけだったので、腹が減ったのだった。
飲み物は竹筒に水を持って行っただけだった。
ジェイは文句も言わずに昼飯はそれを齧っていたが、アバルドも日が暮れて、腹が減って来た。
「一度、家に帰って水浴びして着替えて来る、今日はウサギ肉と香草の煮込みスープと、色々な種類の獣のソーセージがある、ソーセージをボイルしながら、ストーブの上で茹でたソーセージと野菜も色々焼いて食べよう、ディップやマスタードソースを付けて食べると旨いんだ。飲みながら焼こう」
猟に出る前から煮込んであったウサギ肉と香草の煮込みスープは、炭火の残ったストーブの上にかけて出たので、とろ火で煮込まれ肉の繊維が崩れる程柔らかく煮込まれている。
俺が、自分の家に帰ると、木の扉の隙間に緑の封筒が挟まれていた。
『魔女からの手紙』だった。
その手紙には、簡潔に言えば『甥の面倒を見てくれてありがとう』と言う内容のお礼が書いてあった。
※ ※ ※
一方、ジェイフォリアの方にも叔母からの手紙が届いていた。
家の扉の前に立つと、叔母の魔力が彼を取り巻き一瞬にして花の香と風が嵐の様に取り巻き上昇した。
すると、上からひらひらと緑の封筒が手元に落ちて来た。
「なんだ、この派手な演出は…」
少々呆れながら直ぐに封筒から手紙を取り出した。
彼は繊細な風魔法を封筒の封を切るペーパーナイフ変わりに使って開き、手も使わずに便箋を取り出し目の前に浮かせて内容に目を通し、読み終えた手紙を封筒ごと空中で燃やした。
ジェイフォリアは叔母にヴァルドフ大陸の動向を調べて貰う様に頼んでいたのだ。
『 竜ノ大罪ニヨル、狂竜ハ、イットキ封印サレタリ 』
竜の大罪とは、『 番殺し 』の事だ、竜人の世界での、最も忌むべき罪である。これにより、番を殺した竜は竜神に魂を呪われ狂竜に堕ちると言われていた。
注※ 獣の処理やお話に出てくる病気などは、作者の脳内世界での設定になります。
「まず、身支度からだが、俺は見ての通り色持ちと言われる魔力持ちなので、魔力が弱い村人の様な身を守る為の身支度はしていない。ジェイにも必要なさそうだが、どうする、一応それなりの身支度を整えてみるか?」
エルフの中には、自分の属性の色が髪に出る色持ちと呼ばれる者がいる。
そういう者は魔力が強いのだ。俺の髪は赤い色で、炎属性だった。
「いや、それは必要ない。私は魔力が強い方なので防御の身支度は必要ない。それに村人の猟師の身支度等は、今から目にする機会があるだろうから、気になる事はそのうち聞くだろう。その時に説明してくれるか?」
「もちろんだ。では猟についての説明は俺が猟をやりながらという事で良いか?」
「そうしてくれ、極力私は邪魔をしない様に気を付ける。だから、いつもアバルドがしているように猟をしながら教えてくれたら良い」
「よし、じゃあそうさせて貰う」
これは、手始めにジェイの身体能力を見る為でもあったが、そのたおやかな見た目を大きく裏切った、バケモノ並みの身体能力を保持している事を直ぐに思い知らされた。 それは、強い魔力が体内を廻り、身体の内部も外部も守っているからに他ならない。 そして、極めて自然に息をする様に魔術を行使する力量。
一応、ジェイの注文として、普通に一般の者に教えるように猟の基本から教えて欲しいと言う事だったので、一般的な基本から教える事にした。
「獣も魔獣もなるべく頭を側面から狙う事。心臓や肺もそうだ、正面から狙うと的が小さくなるし、頭蓋は正面からでは術の入る角度が悪いと魔力が弾かれ弱くなる。これは弓などで射る場合も同じだ」
「成る程、気をつける」
「後は、やはり血抜きは心臓が動いているうちが良いので、なるべくなら後頭部を狙え、脳震盪で倒れる。一番良くないのは、半矢(怪我をさせたまま)のまま逃がす事だ。怪我をさせたまま逃がすというのは、獣を無駄に苦しませる事を嫌がる事もあるが、手負いになった獣や魔獣はとても狂暴になる。村人には命取りになる場合も多い」
「分かった」
俺は武器に魔力を乗せて使う事が多い。弓や剣、ナイフと、時と場合により様々だ。
元々、炎系の魔法を得意としているので、必要な時以外は強い火力を山の中で使う事は避けたい。
自分が手本を見せた後、 試しに同じようにジェイに鹿を一頭狩らせて見たが、最小限に攻撃面積を小さくして、その代わりかなり強力な風魔法を使った殺傷能力の高い無駄のないやり方で獣を狩る傷の小ささに驚いた。
後頭部に小さな穴が空いていて、獣は昏倒している。
その後は、俺が鹿を処理する準備をして行く。
心臓が動いているうちに首をナイフで裂き頭を低い方に向けて放血させ、その後、早めに内臓を抜く必要がある。
ナイフも喉を裂いたり『止めさし』に使う物と、剥皮に使う物は形からして違う。
まず、内臓を傷つけない様に上手く正中線に沿って股から腹に刃を上に向けて切れ目を入れてやる。ここで、性線や乳腺は取り除く。
次に、腹から胸に切れ目を入れ、胃を傷つけないように胸骨を切断する。
その後は、鹿が食べた物をばら撒かないように食道を結束し、糞をばら撒かないように、骨盤を切断した後で、直腸を結束して、横隔膜を切り、内臓を取り出し、内臓を取り出した中を水で洗浄する。
生き物は食道や胃には食べた物があり、腸に糞が溜まって膀胱には尿がある。
それを傷つけて外に出さないようにしなければならないし、出口がある物は塞がなくては出て来てしまうのだ。
だから肛門周りをナイフで切って外し、その出口を紐で括って置くと処理が楽だ。
「つまり、腹を裂く時、胃や膀胱や糞の溜まった腸を傷つけると、肉が汚れて大変なことになるので気をつける事が必要だ」
「分かった」
アバルドは、『なんか、すみません、本当にすみません』と思いながら話をする自分が情けなかった。
どうしても、ジェイの顔を直視しながら話ができないのは何故だろう。
理由はわかっている、多分、あの魔女を彷彿とさせる美麗な顔が、いけないのだ、ふう。
「胆嚢も潰すと肉が苦くなるぞ」
場所をを示しながら教えると、ジェイは黙って頷いた。
シシでも鹿でも他の動物、魔獣でも同じだ。
「内臓を取り除いたら、腹の中を水で綺麗に洗浄する」
それを考えて、沢の近くで作業が出来る場所が有れば一番良い。
だが下流で飲み水にしている場所は使用してはならない。とまあ、そんな基本的な事を一つ一つ話ながら進めて行く。
取り除いた内臓は、必要な物を除くと深く掘った穴にいれ、火炎放射で焼いてから、土をかけた。
ダニや寄生虫は魔力を放つと死滅するので、先ず猟をしたければ魔力持ちである事が優先される。これは、差別ではなくヤトトジカ病等があり、命に関わる事だからだ。
大物を狩るといつも運ぶのが大変なのだが、その場で簡単に魔法陣を浮かび上がらせたジェイは、その中に獲物を飲み込ませ、洗浄しても良い沢まで飛ばした。
そして、今日は取り敢えず、肉の処理をしようと言う事になり、山を降り俺の家の傍にある解体作業小屋まで帰った。沢で内臓を抜いた鹿を作業小屋まで魔法陣でジェイに運んでもらう。
先ず、後ろ足を間接で切断し、吊るし専用の器具に後ろ足の骨を引っ掛けて吊るし、剥皮する。それから吊るされて下になった鹿の上半身の解体、次に下半身の解体となる。
細かい部位の切り分け方や、骨の抜き方など、一応一通り説明しながら俺はさっさとこなしていった。
最後に、部位によって分けた肉を、油紙で包むのを手伝いながら、ジェイがさらっと爆弾発言をした。
「あった方が便利だと思ったから、アバルドが準備してくれている家の裏の納屋に、状態維持の術式を施してある。広いので半分は肉の保存に使ってくれて良いぞ」
「状態維持!?」
「そうだ、薬草を保存するのにも必要なので、術式を組んで置いた。いつも、肉の処理や、暖かいものの準備が大変だろう、使いたい様に使ってくれ、便利な筈だ」
「あ、ああ、たすかるよ」
これは、とんでもない魔法だ。最上位の魔術師にしか扱えない代物ではないか、と思ったが、深く考えない事にした。考えたら負けだ。
そう言えば魔女との付き合いも、いつもそうだったではないかと、思いだしたのだ。
それから場所を先ほどジェイが言っていた状態維持の術式のかかった納屋に変える事にした。
ついでに先ほどの肉をジェイが魔術で倉庫に移動させた、かなり量があったので助かった。
鹿の骨は、頭蓋や角、下顎、肩甲骨は工芸品を作るのに欲しがる者がいるので、ギルドに卸すか、村の者と物々交換にも使える。
そちらは、綺麗に肉を削いだあと、大きな鍋で油脂や肉片を落とす為に2時間程ゆでる必要があるので、明日の午前中にする事にした。
後は、不要な骨等を、穴を掘った中で火炎放射で燃やしてから、土に埋めた。
それが終わってから、今日、山を歩いた時に見つけて採取しておいた薬草を並べて見る。今から季節は夏に向かう、まだ朝晩冷える事も多い。
「イエゾウコギ、ギドウシ、ガリアクス、クコルの実、ガビアの葉、マカル…、少し見て歩いただけだが、結構色々あるな」
ジェイが自分の取った薬草を何処からともなく出して来る。
今、取ったばかりの様に瑞々しい。
アバルドも濡らした布に包み油紙に包んでいたので、そうは傷んでいないが、ジェイが出した薬草に比べると少し新鮮さにかける。
ジェイは確認すると、またそれらを何処ともなく片してしまった。
空間の中に溶け込むように消えたと言ったら分かりやすいかもしれない。
それはそうと、朝から山に入り、昼飯にはクラッカーに甘いクロナッツバターを挟んだ物を二人分持って行っただけだったので、腹が減ったのだった。
飲み物は竹筒に水を持って行っただけだった。
ジェイは文句も言わずに昼飯はそれを齧っていたが、アバルドも日が暮れて、腹が減って来た。
「一度、家に帰って水浴びして着替えて来る、今日はウサギ肉と香草の煮込みスープと、色々な種類の獣のソーセージがある、ソーセージをボイルしながら、ストーブの上で茹でたソーセージと野菜も色々焼いて食べよう、ディップやマスタードソースを付けて食べると旨いんだ。飲みながら焼こう」
猟に出る前から煮込んであったウサギ肉と香草の煮込みスープは、炭火の残ったストーブの上にかけて出たので、とろ火で煮込まれ肉の繊維が崩れる程柔らかく煮込まれている。
俺が、自分の家に帰ると、木の扉の隙間に緑の封筒が挟まれていた。
『魔女からの手紙』だった。
その手紙には、簡潔に言えば『甥の面倒を見てくれてありがとう』と言う内容のお礼が書いてあった。
※ ※ ※
一方、ジェイフォリアの方にも叔母からの手紙が届いていた。
家の扉の前に立つと、叔母の魔力が彼を取り巻き一瞬にして花の香と風が嵐の様に取り巻き上昇した。
すると、上からひらひらと緑の封筒が手元に落ちて来た。
「なんだ、この派手な演出は…」
少々呆れながら直ぐに封筒から手紙を取り出した。
彼は繊細な風魔法を封筒の封を切るペーパーナイフ変わりに使って開き、手も使わずに便箋を取り出し目の前に浮かせて内容に目を通し、読み終えた手紙を封筒ごと空中で燃やした。
ジェイフォリアは叔母にヴァルドフ大陸の動向を調べて貰う様に頼んでいたのだ。
『 竜ノ大罪ニヨル、狂竜ハ、イットキ封印サレタリ 』
竜の大罪とは、『 番殺し 』の事だ、竜人の世界での、最も忌むべき罪である。これにより、番を殺した竜は竜神に魂を呪われ狂竜に堕ちると言われていた。
注※ 獣の処理やお話に出てくる病気などは、作者の脳内世界での設定になります。
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