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第五章

6.地下神殿

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 地下に続く階段を駆けおりて行く。

「巫女姫、この地下、見覚えはありますか?あなたが最初に喚び出された場所でなのでは?」

 言われてみれば地下の通路に何となく見おぼえがある。

「ああ、ここ引きずられて牢に連れていかれた覚えがある。抵抗したらめちゃくちゃ凹られた。もう目の周りパンダだったよ。ふつー女の子の顔殴る?」

 あの時はわけわからないし、恐ろしいし、小突き回されて痛いし大変だった。

 でも、屈服だけは、絶対にするかと思ったのだ。


「――――そうですか。それは大変申し訳ありませんでした」

「べつにムーランにされたわけじゃないから、謝らないでよ。ムーランには感謝してる」

「身に余るお言葉です。――目的の場所までもうすぐです。気を引き締めて参りましょう」

「りょうかい」

 ムーランの杖(じょう)が、輝きを増し始めた。

 

 この地下神殿が最終地点。

 そう、ここは始まりの場所。


 地下神殿の扉の前に立つと、扉がひとりで軋んだ音をたてて開いた。

「待っておったぞ、巫女姫よ」

 神殿の中には王だろうと思われる人物が立派な椅子に座り、その周りに王族らしき者達が20人近くいた。

 王は一回しか見た事ないからあまり覚えてない。

 シワシワのじいさんだけど、今はめっちゃ禍々しさを感じる。

 ふんぞり返ってる。王がもってる杖から瘴気が出てる。

 正に悪の根源てカンジ。


「悪い王様の国を滅ぼしに来ました」

「フン、悪と善の違いなど結果で左右されるものだ。全ては国の存続の為。小さな犠牲にしか過ぎない・・・終わりにはせん。まだ終われるものか」

「いや、私がここに来たのは終わるためだから。だって許せないから。たくさんの命を屠ってきたでしょう?」

「今一度この世界にお前を呼び寄せたのは私だ。ここで役に立たずにどうする。おかげで魔術師も底をついた。この国の結界が消えようとしている今。獣人達だけの犠牲では足らない事に気付いたのだ。やはり、巫女姫という尊い犠牲が必要なのだ」

 なんていうか、全く噛みあわない。言葉が通じていない。

「何が犠牲だ。王よ、貴方達王族は自分達の為に、国民であるはずの異種族を生贄にするために飼い殺して来た。それは許される事ではない。まだ続けるのですか?」

 そうムーランが言った。

「馬鹿な事を。当たり前だ。この先もわれらの王国を守る。異種族など人ではない。国の為に差し出す命だ、ありがたいだろう」

「我らの王国ではなく、王族の為の国なのでしょう」

「どちらでも同じだ」

「いいえ、まったく違います。至上の黒が現れた時に、古に貴方の一族が邪神と交わした契約は終焉を迎えると予言されていたではないですか?」

「知らぬ。終わりなど来ぬわ、捻じ曲げてしまえば元に戻る」

「おかしな事をおっしゃる。はじめは至上の黒を恐れて殺そうとされたのに?」

「煩い。それがどうでもお前達には関係ない」

「われら二つの一族は覚悟してきました。たとえ我らが滅んでも、必ず世界を取り戻すと」

「ばかな事よ。勝つのはこの国の王である私だ」

 王族達が、其々に自分達を守る為の黒い騎士を呼び出した。

「こんな狭い場所に雑魚をたくさん喚び出しても無駄な事」

 私はポケットから全ての種を取り出した。

「さあ、出番だよ。こんな城はもういらないから崩しちゃえ」

 種は散らばり、地中に潜っていく物や、人喰い蔓となって花を咲かせて王族を追い回し食べてしまう。

 
 私を狙って飛びかかってくる黒騎士達はムーランが杖を一振りすれば、崩れるように消えていく。

 ロドリゴが作り出す黒騎士達とは比べ物にならない位弱い。

 あっという間に王だけになっている。

「ええい、ロドリゴ、何をしている。戻って来い!」

 王が醜く顔を歪ませて叫んだ。

 すると、地下の天井の一部が吹き飛び、石が崩れて来た。

 そこにボロボロの姿のロドリゴとアスランテが現れた。蔓が天井を支えている。

 ロドリゴは片腕が無くなっていた。切り落とされたようだ。

 けれども私と戦った時と同じで、少し血が流れた程度で止まっている。

 やはり、不死者の身体なのだ。

「ええい、何をしている、さっさと片付けてしまえ!我の為に働け!」

「聖騎士と神官相手に、不死者の俺では分が悪すぎるだろ、じじい。お前も戦え。もう後はないぞ」

 ロドリゴの言葉で、それまで椅子に腰かけていた王は、ゆっくりと立ち上がった。

 

 
 
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