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第四章

4.神殿とは

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 遺跡のある山頂を後に、一日中歩いて下山した。

 シオウも私もいるし、わりとその日の距離の進み具合は行き当たりばったり的だ。

「ここから、600キロ位先に大きなシュラルという街があります。そこで遺跡での依頼分を換金をすれば良いでしょう。あとは途中に村や町がいくらかあるので、宿屋があれば泊まるという事でいいでしょうか?」

「おっけー」

「何ですか、そのおっけーとは」

「おっけー、おっけー」←シオウ

「えーと、いいよって、こと」

「まったく・・・」

 私の言葉ってさ、全部チートでは変換されないみたい。おかしなひびきの音の羅列に聞こえるのかな?

 話は変わるけど、この国のギルドはとてもうまく作られていて、わざわざ依頼を受けたギルドに戻らなくても報酬は、冒険者の都合のいいギルドで受ける事ができる。

 

「そう言えば、シュラルって昔、浄化で行った事なかった?」

「よく覚えていらっしゃいますね。大きな神殿がありますから、確かに浄化に立ち寄りました」

「やっぱ、そうなんだ」

「シュラルの神殿ってさあ、神殿ってわりに、なんか瘴気が蔓延していてすごく感じ悪かった覚えがある」

「・・・そうですね。確かに濃い瘴気に覆われた街でした。私も覚えています。もともとあの神殿自体が血にまみれた歴史を持っていますので、そうなのでしょう」

「ベリン国の神殿とは、全てがそうしたもんだと言うからなあ」

 ハンターがそう言うので何故だろうかと思う。

「何で?神殿ってそもそも神域の、うーん、浄化された?場所なんじゃないの?」

「ベリン国の宗教は政治と一体化しています。この国では、大昔から王族が決めたラトゥー神の信仰をしなかった者は、殺されてきたのです。神殿は血にまみれた場所でした。そして、もう一つ、今も高位の神官は全て王族の血が入っている者でかためられ、一般の民には誰も逆らえません」

「えー、宗教アルアル話だねそれ。しかも王族で神殿を固める辺りこの国っぽくて嫌な感じだよね」

「貴女の言っている言葉は時々良く分からない事があります」

「うん。わかってる」

 信仰というのは、人の心の救いのためにあると思う。だから優しくそこでとどまってくれたら、何も問題はないんだと思うけど・・・。

 でも実際には信仰とは恐ろしいものだ。様々な諍いの元にもなり、利用される。

 

「そういえばさ、ハンターって何獣人なの?ヤトもだけど、聞いてなかったよね」

「なんだあ?今頃か?」

呆れた、ハンターの声に、ヤトのくすくす笑う声が聞こえた。

「うん、心に余裕がない時って、最低限の事しか気にしないじゃん。いまはそうじゃないんだと思う」

「そうか、俺は狼の獣人だ。狼獣人にも種類があるから村も色々あるし、それこそ混合の村もある。ヤトは山ヤギだな。すごく強いんだぞ」

「山ヤギかあ、私の世界にもそういう種類が居て、一緒かどうかはわからないけど、すごい強い生き物だって聞いたことあるよ。物凄い切り立った断崖絶壁をスーパーマンみたいに飛んで超えて行くんだよ」

「すーぱーまんが何だか分かんないが、確かにそういう感じかもな」

 とはハンターの言葉だ。

「シオウみたいな豹獣人も他に村があるのかな。いつか連れて行ってあげたいよ」

「ああ、あるぞ、豹獣人の村。俺が知ってるのは黒豹一族の村だけどな」

「そっかあ、あるんだね」

 良かった。それを聞いて少し安心する。もしも世界でたった一人の存在だったらとても孤独だろう。


「そうだ。アスランテの生まれ育ったとこは、どんな所?」

 この人はどんな所からやってきたんだろう?

「私が住んでいたのは、国の最北端にある北の大地です。一年の半分は雪に覆われるような厳しい土地ですが、美しく良い所ですよ。子供の頃はソリ等でよく遊びました」

「いいなあ、そういう子供のころの楽しい想い出って持ってないから羨ましいな。いつか行ってみたいな」

「そうですね。いつか行ければ・・・」

 彼の瞳に浮かぶ感情は読み取れない。ただ優しく微笑むだけだ。

 六日程かけてシュラルの街に辿りついた。身体強化をかけているのでわりと早かったわ。

「ねえ、ちょっと澱んでいない?この空気」

「・・・ええ、確かにそうですね」

 ムーランが眉を寄せている。

 アスランテとムーランは同じ方向を遠くに見ている。

「もしかして、あの尖った屋根は、神殿だよね」

 とてもいやーな予感というのか、そんなものを感じた。

 

 

 

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