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第二章

4.やさしい夢

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 シオウを懐に入れて、次の街に足を踏み入れる。今度の街も結構大きい。歴史のある古い街で建物も古く、歴史を感じさせる。

 ドワーフのオサーンのくれた釣り竿はすごい逸品だった。

 あの時釣りを教えてもらっても、結局一匹も釣れなかったのに、その後にまた川を見つけて習った事を復習した時には物凄く釣れるじゃないか?なんでだ。

 ポルフおじさんのくれた竿を使ったのだ。釣れる釣れる。入れ食い状態だ。

 変だなと思い、拾って入れていた釣り竿の方を使うと全く釣れない。これは凄い物もらっちゃったと思った。

 今後は魚には困らない。ありがたい話だ。感謝します。オサーンに感謝。


 まずは、やはりギルドに地図を貰いに行こうと思い、近くにあった金物屋のおばあちゃんにギルドの場所を聞く。

「ほら、そこの角をまがってさ、次の通りなんだけど、青い屋根の先がちょっと見えてるだろ、あそこだよ。おまえさん、小さいのに一人で旅をしてるのかい?」

「うん、そうだよ。ありがとうおばあちゃん」

「はいはい、きをつけてね」

「あ、そうだ。おばあちゃん、あの街道から来たんだけど、あっちの方向にドワーフの村があるの?」

「・・・なんでだい?」

 それまで、にこにこしていたおばあちゃんの顔が目に見えて暗くなった。

「え、途中でドワーフのおじさんに、釣りのやり方を教えてもらったからさ。どっか途中にドワーフの村があるのかと思って」

「あんた・・・そりゃ、多分夢だよ。あの街道を通るもんは、たまにそういう事があるって聞くさね」

「夢?でも魚焼いて食べたよ」

 ばあちゃんボケ入ってる?夢じゃないし。そう思った。

「やさしい夢だよ。だって、あの街道にあったドワーフの村は30年位前に全滅してるんだから」

「えっ?」

「全滅だって聞いてるよ。誰も生きている者はいなかったそうだ。何かと戦って死んだ戦士の死骸以外は、他は誰も残ってなかったそうだよ。まるでそれ以外のドワーフは突然、皆消えちまったんじゃないかと思うような有様だったってね。怖い話だよ」

「都市伝説?」

「あ”?なんて?」

 おばあちゃんは耳に手を当てて聞いて来る。

「えーと、本当に、そうなの?」

「ここじゃ有名な話だよ。年寄りは皆知ってる。よそでも聞いてみな」

「・・・そうなんだ。教えてくれてありがとう。そうだ、おばあちゃん。これ傷薬だよ、スース―するけどよく効くから使ってみてね」

 おばあちゃんの手がめちゃくちゃ荒れていたので、三角形にして葉に包んだスース―する傷薬をリュックから出して一つ渡した。すごい喜ばれた。

 なんか、さっきの話、釈然としないんだけど・・・心の一部が?マークでいっぱいだった。

「にゃーん」

「いいこ、いいこ。宿屋についたら出してあげるね。露店でお肉買って食べようね」

「にゃーん」

 肉が食える時に食っておかねば。動物を捌くのは手間がかかるから、なるべく街で食べて、あとは干し肉やハムで凌ぐ事にした。シオウにちゃんと肉を食べさせてやりたのだ。

 あったかい。いつもシオウがいてくれてあったかい。一人じゃないのだ。

 そうこうしながらギルドに行く。その間もシオウはいい子でいる。

 シオウは私以外の人間が怖いのか、絶対に他の者に近寄ろうとはしなかった。ああ、でもドワーフのオサーンは別だ。オサーンの手から焼き魚を貰って食べていたし、オサーンの手も舐めていた。

 あの、オサーンが夢だなんて、どうしても思えなかった。不思議すぎる。

 ギルドで地図を貰い、ついでにギルドに隣接する食堂で握り飯とゆで卵と肉団子が三つ刺してある串を二つずつ買う事にした。テイクアウト出来るものが色々あって楽しい。

 お店でそれを竹の子の皮みたいなババンブの皮に包んでくれた。

 シオウを連れているので、外で食べようと思った。買った物をもって外に出ようとした時にオサーンのしている会話が耳に入った。エールを飲みながら四人の冒険者が話をしていたのだ。

「なんでもよう、ベルクアト地方にある獣人の村が一夜にして全滅したってよ」

 ヒゲモジャの大柄なオサーンがそういうと、隣にすわっていたハゲで鼻髭の伸びたオサーンが言った。

「ほんとか?またか」

 今度は対面に座っている顔は見えないけど太ったオサーンが言った。

「またって・・・、アレか?ドワーフ村の話の」

 その後の話は中継するのが面倒なので誰が何を言ったか省く。

「そうだよ、俺あ知らんかったけどよ、三十年置き位にあちこちで起ってるらしいじゃないか・・・」

「他にもあるって事か?」

「あるあるらしいで、コワイ話だよ」

「にゃーん」

 シオウが一声鳴いたので、その場を後にした。

 何だった?今の話・・・。ものすごくモヤモヤした。

「ほら、シオウ。食べようか」

 外に出て広い公園の様な場所に行き、大きな石に腰かけた。包を横に置き、シオウを懐から取り出そうとして驚いた。シオウが震えているのだ。

「にゃーん」

「どうしたの、シオウ具合が悪いの?」

 そのまま上からローブで巻いて撫でてやる。

「にゃーん、にゃおーん」

 悲しそうな泣き声に、私も悲しくなった。

「よしよし、いいこ、大丈夫だよ」

 そうやってシオウが落ち着く迄ずっと撫でていた。

 このモヤモヤは放って置く事は出来ない。そう思った。

 





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