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27.第三王子
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私が第三王子として生まれた事は、王家の一部の者にとっては喜ばしくない事だったようだ。
私の母が身分の低い男爵令嬢であった事もあるが、国王陛下が母を寵愛しすぎた事で両陛下のバランスを崩してしまったのだ。
王妃様はこの国の北に領土を接するラスタリカの王女だった。それが完全なる政略結婚だったとはいえ、二人の王子に恵まれ、表面上は上手くいっていたはずだった。
それを壊したのが、私の母である妾妃の存在だと言われている。
まあ、それすらも母がどうこう出来た話ではないのだが、立ち場も弱く気の弱い方だった。
だが、救いと言えば、母も陛下をとても愛していた事だと思う。
そう言った事が今私に正しく理解できるのも、ずっと国から離れていたからだろう。
国王陛下は王妃様との間に王子が二人出来た事で、務めは果たしたとばかりに、王城のパーティーで見初めた母をあろうことかそのまま召し上げられたのだ。
ところが、私が生まれて七歳になる前に、母は毒殺されてしまった。証拠など残っていない。
国王陛下は母の住む離宮の警備は十分に注意し、信頼に値しない者の出入りを禁じられていたが、いともたやすく掻い潜られたのだ。しかも毒を盛ったとされる侍女は口封じに殺されてしまった。
その後、国王陛下は王妃様とは袂を分けられた。証拠は無くとも王妃様の命令意外考えられなかったと言えばそうなのだろう。
王妃様はラスタリカの王女だ。証拠もないのに彼女を廃する事等できるはずもない。
元はと言えば国王陛下が安易に妾妃を作られ寵愛された事が原因だ。
隣の大国から輿入れした王女の誇りに砂をかけた様なものだったのかもしれない。
だが、陛下は私が殺される事を恐れて西方の隣国、アウドラゼンに留学生として送って下さった。
そのことには感謝している。
そのまま15歳までを過ごし、城に帰って来たが、やはり王妃様側からの風当たりはきつかった。
国王陛下としては、第一王子が立太子され、私には王妃様はもう興味はないだろうと思われたようだが、女性の嫉妬というのは怖いそうだ。従者のサイカンに甘く見てはいけないと言われてしまった。
どうしてあいつはそんな事に詳しいのだろう?
出来れば私は、そのままアウドラゼンから戻りたくはなかったが、王命とあれば仕方がない。
なるべく目立たぬ様に動いても、国王陛下は母を愛していらっしゃったので、私にもその愛情をかけようとなさる。
有難迷惑だった。だが肝心な時には王妃様に言いくるめられて口も手も封じられてしまわれている。
それが、今回のこの北の砦への出発命令だ。皇太子からの命令だと言われたが、王妃様の差し金だろう。
大方、この年になるまで、遠征にも出た事がないなどと王子としての立ち場が成り立たないとでも言われておしきられたのではないだろうか?
「体に気を付けて必ず帰ってくるのだ」
と、国王陛下の言葉を賜った。私を見ては母を思い出されている様子に、げんなりする。
私とて、毒殺された母の事は思い出さない様に心に蓋をして生きてきた。恨んでいないかと聞かれればいないわけもない。だが、それを通せば国が荒れる。そんな事は望んではいない。
この度の遠征は、重々注意して行かなければならないと側近のサイカンにも言われている。
サイカンは国王陛下が私が幼い時に選んで付けて下さった側近だ。宰相の第三子で次男でもある。
彼にとっては災難だったかもしれないが、アウドラゼンにもついて来てくれた。年は三つ上で、唯一信用出来る身近な者だった。国王陛下と宰相の二人ともう一人味方がいる。
この遠征の総指揮官でもある、ユーノス・シャオリオンも私を守ってくれている。
彼は公平な人物で、父の懐剣でもある。今回の件でもかなり心配してくれた。
いくつか守護の魔道具を渡されている。何事もなく北の砦の遠征が済めばよいのだが・・・。
ラスタリカは王妃様が輿入れされてから暫く和平協定が結ばれていたが、ラスタリカ国王が崩御され、次に国王となられた王妃様の兄上は、和平協定そのものを破棄されてしまった。
我が国の国王陛下としては、いくら王妃様がラスタリカ出身だとはいえ、自分の息子が皇太子であるセントレナ国に攻め入らせたりはしないだろうと考えられているようだった。
私の母が身分の低い男爵令嬢であった事もあるが、国王陛下が母を寵愛しすぎた事で両陛下のバランスを崩してしまったのだ。
王妃様はこの国の北に領土を接するラスタリカの王女だった。それが完全なる政略結婚だったとはいえ、二人の王子に恵まれ、表面上は上手くいっていたはずだった。
それを壊したのが、私の母である妾妃の存在だと言われている。
まあ、それすらも母がどうこう出来た話ではないのだが、立ち場も弱く気の弱い方だった。
だが、救いと言えば、母も陛下をとても愛していた事だと思う。
そう言った事が今私に正しく理解できるのも、ずっと国から離れていたからだろう。
国王陛下は王妃様との間に王子が二人出来た事で、務めは果たしたとばかりに、王城のパーティーで見初めた母をあろうことかそのまま召し上げられたのだ。
ところが、私が生まれて七歳になる前に、母は毒殺されてしまった。証拠など残っていない。
国王陛下は母の住む離宮の警備は十分に注意し、信頼に値しない者の出入りを禁じられていたが、いともたやすく掻い潜られたのだ。しかも毒を盛ったとされる侍女は口封じに殺されてしまった。
その後、国王陛下は王妃様とは袂を分けられた。証拠は無くとも王妃様の命令意外考えられなかったと言えばそうなのだろう。
王妃様はラスタリカの王女だ。証拠もないのに彼女を廃する事等できるはずもない。
元はと言えば国王陛下が安易に妾妃を作られ寵愛された事が原因だ。
隣の大国から輿入れした王女の誇りに砂をかけた様なものだったのかもしれない。
だが、陛下は私が殺される事を恐れて西方の隣国、アウドラゼンに留学生として送って下さった。
そのことには感謝している。
そのまま15歳までを過ごし、城に帰って来たが、やはり王妃様側からの風当たりはきつかった。
国王陛下としては、第一王子が立太子され、私には王妃様はもう興味はないだろうと思われたようだが、女性の嫉妬というのは怖いそうだ。従者のサイカンに甘く見てはいけないと言われてしまった。
どうしてあいつはそんな事に詳しいのだろう?
出来れば私は、そのままアウドラゼンから戻りたくはなかったが、王命とあれば仕方がない。
なるべく目立たぬ様に動いても、国王陛下は母を愛していらっしゃったので、私にもその愛情をかけようとなさる。
有難迷惑だった。だが肝心な時には王妃様に言いくるめられて口も手も封じられてしまわれている。
それが、今回のこの北の砦への出発命令だ。皇太子からの命令だと言われたが、王妃様の差し金だろう。
大方、この年になるまで、遠征にも出た事がないなどと王子としての立ち場が成り立たないとでも言われておしきられたのではないだろうか?
「体に気を付けて必ず帰ってくるのだ」
と、国王陛下の言葉を賜った。私を見ては母を思い出されている様子に、げんなりする。
私とて、毒殺された母の事は思い出さない様に心に蓋をして生きてきた。恨んでいないかと聞かれればいないわけもない。だが、それを通せば国が荒れる。そんな事は望んではいない。
この度の遠征は、重々注意して行かなければならないと側近のサイカンにも言われている。
サイカンは国王陛下が私が幼い時に選んで付けて下さった側近だ。宰相の第三子で次男でもある。
彼にとっては災難だったかもしれないが、アウドラゼンにもついて来てくれた。年は三つ上で、唯一信用出来る身近な者だった。国王陛下と宰相の二人ともう一人味方がいる。
この遠征の総指揮官でもある、ユーノス・シャオリオンも私を守ってくれている。
彼は公平な人物で、父の懐剣でもある。今回の件でもかなり心配してくれた。
いくつか守護の魔道具を渡されている。何事もなく北の砦の遠征が済めばよいのだが・・・。
ラスタリカは王妃様が輿入れされてから暫く和平協定が結ばれていたが、ラスタリカ国王が崩御され、次に国王となられた王妃様の兄上は、和平協定そのものを破棄されてしまった。
我が国の国王陛下としては、いくら王妃様がラスタリカ出身だとはいえ、自分の息子が皇太子であるセントレナ国に攻め入らせたりはしないだろうと考えられているようだった。
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