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26.ユーノス様の懸念

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 ドルトンさんは、もう一人応援が来るまで、手伝ってから帰ると言ってくれたので、翌日から二人で分担して仕事をした。

 一緒に仕事をすると、勝手が分かるのでありがたかった。

 食堂にも一緒に行って、色々教わる。面倒見の良い人なのだ。

 昨日の魔獣騒ぎで酷い怪我人が多く、帰るにしてもある程度治ってからでないと、馬では移動出来ないので動かしても大丈夫な程度になった人は、魔法陣で城に送られる事になった。

 もう一つ、ここから一番近いケノビル村の事をユーノス様はとても気にされていた。

 仕事の合間に、私の休憩時間に茶菓子持参で現れたユーノス様は、こちらの砦で起こっている事で気になっている事を私に話をされた。

「念の為、近々ケノビル村の近くを見回りに行こうと思っている。何人か魔術師を連れて行くつもりだ。私が居ない間になにかあればすぐに連絡して欲しい。もちろん他からも連絡は入るようにしているが、砦も広いからな。自分に何か起きた時は直ぐに教えてくれ」

 ユーノス様から貰った装飾品は幼い時からずっと身に着けているので、個人的にはいちばん連絡が早くとれる。

「わかりました。でもユーノス様がわざわざ行かれるのですか?何か気になる事でも・・・」

「ああ、もしも、砦ではなく、ケノビル村にでも抜け道でも作られていたら大変だからな。ケノビル村には魔法陣を設置して来ようと思う」

「そうなんですね。でも、もしそうならとても怖い事です」

「何が起きているのか分からない恐ろしさもある。しっかりと確認しておいた方が良いだろう」

 その事はとても重要な話だと思われていたので、次の日すぐに朝早く魔術師を三名連れて馬で村まで行かれる事になり、帰りは魔法陣で帰るので早く帰ると言われた。

 とても心配だったけど、ユーノス様は強い。

 それにしても、小説の中ではもちろんこんな話は出て来なかった。

 この世界の大陸には、陸続きで国境を接している国は多い。

 セントレナ国もその一つだけど、魔法を使える者が多いので侵略を免れている。

 それが、魔力ありきの国の理由でもあった。

 魔力量が多く、強い魔法が使える者が優遇されるのはそれだけ国の未来が関わっているからだ。

 今の私は、ユーノス様の助けで、魔力量や使える魔法を秘匿して、普通の治癒師として働いている。

 望んでいた様に、普通の人生だ。国を亡ぼす様な悲惨な人生ではない。

 大切な家族も出来て、大切な人もいる。だからこの国を守りたいのだ。隣国に侵略などさせてはならない。

 もしもの時がくれば、私は大切な人を守る為に戦うだろうと思った。

 

      ※      ※      ※



「筆頭魔術師、どうしますか?まず村の中をくまなく見回った後ですが・・・」

「そうだな、村に魔石で結界を張ってから村人が魔物を見たという森へ行く」

 それぞれが、通信魔道具である銀のイヤーカフを付けているので、どこでも位置が特定できる。

「副官と私、後二人で組んで回る。一人で行動するな」

「分かりました」

 村の中には問題なかった。その後森へと移動する。入り口から少し入ると二手に分かれた。

 森の中は獣道のような細く入り組んだ道しかないので馬での移動は無理だ。

 その時、イヤーカフから別れていた二人の連絡が入る。

「筆頭魔術師、大変です。来てください!」

「分かった、気を付けろ」

 引き返し、彼らの入って行った道に入る。

 連絡によると、地面に穴が開いていて、魔物の道になっているらしいという。

 一番懸念していた事が現実となった。

 現場に到着すると、ポッカリと口を開けた通り道には、魔力が感じられた。

「これは、自然な物ではない。意図して造られた物だ」

「一体誰が!?」

 副官のゲノバが私に答えを求める。

「隣国の者だけでは無理だ。手引きした者がいるな」

「裏切り者がいるという事ですね」

「それか、間者が入り込んでいるのかもしれん。穴を塞ぎ、この一帯に入れば検知するように仕掛けを撒いておこう」

 その後村に戻り、森の事は気付かぬ振りをして、魔法陣を設置して砦に戻った。

 この魔法陣はもちろん関係の無い者は使えない。

 そうして、罠を張り、相手の出方を観察する事にした。

 



 

 
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