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22.ユーノスの守りたい者
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シタンに出会ったのはまだ彼女が幼い頃だ。私がよく行く王立図書館で衝撃的な言葉を私にかけてきた。
「お嫁さんにして下さい!ダメなら弟子にしてください・・・」
――――そう言われたのだ。
こんな告白めいた言葉を、しかも幼い少女から言われる等と、だれが想像するだろうか?
彼女にしてみれは、選択の余地がないように一生懸命考えたのだろうが、なんとも可愛らしいと思った事を憶えている。
それでなくとも、私の容姿は独特で、深紅の瞳に灰色の髪だ。この国の連中にはあまり受け入れられていない。
実際、この取り合わせの色を持つ者を、私以外には見た事がなかった。
赤い目は不吉で、年寄りでもないのに、灰色の髪だとは気味の悪い事だと言われた。
家族からは愛されず、他人からは畏怖の対象だとは何と悲しい事だろう。
だが。この国は魔法ありきの国だった事が幸いした。強い魔法が使える者は優遇された。
事実、私の持つ色は畏怖と尊敬の対象になると王にすら言われた事がある。
「それを、自分の武器にして上手く使う事だな」
そんな風に言われた言葉は、まるで喉につかえた魚の骨の様に感じた。
王の覚えも目出たい程に、魔術師の中で頭角を現した要因は、それこそ父親に対する憎しみからだ。
危ない橋を渡る事も、命を懸けることも、自分を心底案じてくれる者がいないのだから簡単に出来た。
それは、強さであり脆さだった。
隣国との小競り合いの中、私の功績は評価される。
そのおかげで、生まれた家を見返してやる事は出来、溜飲は下がった。
それだけだ。
宮廷魔術師の先輩にあたる人に、その色は私の魔力の強さゆえに本来の色から変化したのだろうと言われた事がある。
今となっては、さほども気にならない色の問題だが、子供の頃はこのせいで父親は私を嫌うのかと思って居た事もあるのだ。
それを、この小さい少女は、臆さずに見上げて、あのように可愛らしい事を言ったのだ。
艶のある黒髪に、美しい紫の瞳をもつ幼いこの娘は、その時から私の大切な保護対象となった。
彼女に纏わる特別な夢の話を聞いてからは、同じ秘密をかかえるという、絆を持つようになった気がする。
彼女はその年齢と幼い見た目にそぐわず、たいそう大人びた内面を持っていた。
それまでは、愛しいと思う存在などなかったのに、こんなにも可愛らしく愛おしい存在が出来るとは・・・。
今までは、考えるだけで心が温かくなるような存在など居なかったと言うのに、彼女は私の心の隙間を埋めるかのように、入り込んできたのだ。
そして、私の容姿を褒めるのだ。
「ユーノス様の赤い瞳はまるで特別なザクロ石の様に綺麗ですね。ずっと見ていたいです。灰色の髪と相まってとても神秘的です」
等と大人顔負けの賛辞のような言葉をいう。では、負けじと私も、慣れない女性への褒め言葉を考えなければならない。
そんな風に考えるようになった。
彼女の瞳は暮れ行く夕闇への、ほんの一時佇んだ、淡い天(そら)のまどろみの色だ。
等とは、恥ずかしくていえなかったが・・・。
あれから、彼女の事に気を配りながら生活するようになった。彼女自身には知らせていないが、彼女の父親の事も調べてある。彼女も私の様に、血を分けた親きょうだいから理不尽な扱いを受けているようだ。
だが救いは、義理関係の義母、義姉が彼女を守る立場になっている事だった。
そのため私は彼女を守るための魔道具を渡して見守る事にした。それでなければ、どんな手を使っても後見人になっていただろう。養子に向かえても良いと思っていたほどだ。
私が作り、渡した装身具や杖からは、私に対する紛う事のない好意の気持ちが彼女から伝わって来るのを感じた。それが敬愛といわれるものでも、私にとってはたいせつな愛情の欠片だった。
年月を経てもかわらない信頼の眼差しは、私を強くしてくれる。
彼女が望む様に、彼女のなりたい職業へ就かせてやりたい。それならば、私の手の中で大切に守ってやれると思った。
彼女を害する者は、私の力を使い排除してやる。
それは、国の行く末を左右する事に繋がるからではなく、私の純粋な彼女を守りたいという気持ちからだった。
「お嫁さんにして下さい!ダメなら弟子にしてください・・・」
――――そう言われたのだ。
こんな告白めいた言葉を、しかも幼い少女から言われる等と、だれが想像するだろうか?
彼女にしてみれは、選択の余地がないように一生懸命考えたのだろうが、なんとも可愛らしいと思った事を憶えている。
それでなくとも、私の容姿は独特で、深紅の瞳に灰色の髪だ。この国の連中にはあまり受け入れられていない。
実際、この取り合わせの色を持つ者を、私以外には見た事がなかった。
赤い目は不吉で、年寄りでもないのに、灰色の髪だとは気味の悪い事だと言われた。
家族からは愛されず、他人からは畏怖の対象だとは何と悲しい事だろう。
だが。この国は魔法ありきの国だった事が幸いした。強い魔法が使える者は優遇された。
事実、私の持つ色は畏怖と尊敬の対象になると王にすら言われた事がある。
「それを、自分の武器にして上手く使う事だな」
そんな風に言われた言葉は、まるで喉につかえた魚の骨の様に感じた。
王の覚えも目出たい程に、魔術師の中で頭角を現した要因は、それこそ父親に対する憎しみからだ。
危ない橋を渡る事も、命を懸けることも、自分を心底案じてくれる者がいないのだから簡単に出来た。
それは、強さであり脆さだった。
隣国との小競り合いの中、私の功績は評価される。
そのおかげで、生まれた家を見返してやる事は出来、溜飲は下がった。
それだけだ。
宮廷魔術師の先輩にあたる人に、その色は私の魔力の強さゆえに本来の色から変化したのだろうと言われた事がある。
今となっては、さほども気にならない色の問題だが、子供の頃はこのせいで父親は私を嫌うのかと思って居た事もあるのだ。
それを、この小さい少女は、臆さずに見上げて、あのように可愛らしい事を言ったのだ。
艶のある黒髪に、美しい紫の瞳をもつ幼いこの娘は、その時から私の大切な保護対象となった。
彼女に纏わる特別な夢の話を聞いてからは、同じ秘密をかかえるという、絆を持つようになった気がする。
彼女はその年齢と幼い見た目にそぐわず、たいそう大人びた内面を持っていた。
それまでは、愛しいと思う存在などなかったのに、こんなにも可愛らしく愛おしい存在が出来るとは・・・。
今までは、考えるだけで心が温かくなるような存在など居なかったと言うのに、彼女は私の心の隙間を埋めるかのように、入り込んできたのだ。
そして、私の容姿を褒めるのだ。
「ユーノス様の赤い瞳はまるで特別なザクロ石の様に綺麗ですね。ずっと見ていたいです。灰色の髪と相まってとても神秘的です」
等と大人顔負けの賛辞のような言葉をいう。では、負けじと私も、慣れない女性への褒め言葉を考えなければならない。
そんな風に考えるようになった。
彼女の瞳は暮れ行く夕闇への、ほんの一時佇んだ、淡い天(そら)のまどろみの色だ。
等とは、恥ずかしくていえなかったが・・・。
あれから、彼女の事に気を配りながら生活するようになった。彼女自身には知らせていないが、彼女の父親の事も調べてある。彼女も私の様に、血を分けた親きょうだいから理不尽な扱いを受けているようだ。
だが救いは、義理関係の義母、義姉が彼女を守る立場になっている事だった。
そのため私は彼女を守るための魔道具を渡して見守る事にした。それでなければ、どんな手を使っても後見人になっていただろう。養子に向かえても良いと思っていたほどだ。
私が作り、渡した装身具や杖からは、私に対する紛う事のない好意の気持ちが彼女から伝わって来るのを感じた。それが敬愛といわれるものでも、私にとってはたいせつな愛情の欠片だった。
年月を経てもかわらない信頼の眼差しは、私を強くしてくれる。
彼女が望む様に、彼女のなりたい職業へ就かせてやりたい。それならば、私の手の中で大切に守ってやれると思った。
彼女を害する者は、私の力を使い排除してやる。
それは、国の行く末を左右する事に繋がるからではなく、私の純粋な彼女を守りたいという気持ちからだった。
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