5 / 31
5.シタンは身体を張る
しおりを挟む
メリーにまた鞭で打たれた。
尻や背中がヒリヒリする。きっとたくさん赤い痕がついているだろう。
あまりにお腹がへったので、戸棚の中のかびたパンをナイフで少し削いで食べたのがバレたのだ。
みてよ、この細い手足、ミイラじゃん、生きながら干からびてる。
こんなんじゃやってられないから、そろそろメリーを退治しなきゃ。
ということで、メリーがこっそりと、この離れで一人でお茶を淹れては食べている、高級菓子を食べてやった。
この菓子だって、本来ならシタンの為のお金を使って買ったものだ。
街に出ては、人の金だと思って好き勝手に使っている。
他の部屋のクローゼットには、メリーが自分の為の洋服や装飾品等を買って隠しているのを知っている。
ヴィエルジュ伯爵家の使用人の寮は同僚との二人部屋なので、色んなドレスやバッグに装飾品や靴等、大量に買い込んでいるのが一目瞭然だ。金回りが良いとすぐにバレてしまうのでここに隠しているのだ。
ここはお前の倉庫か!メリーのしている事は横領だ。
仕事をしている振りをして、離れでは好き勝手に怠惰に過ごし、シタンの為の金を横領しているのだ。
だけどこれを家令にこっそり伝えても、メリーに注意して、お金の管理を任せない様にする程度で、たぶんもみ消されるだろう。
だって、それって自分の監督不行き届きってやつだ。自分が不利になるような事は隠すに決まってる。
貴族家の使用人の雇用は、全て紹介制度で成り立っている。
何かしでかして辞めさせられて、主家を追い出された場合、次の紹介等してもらえない。
そういった場合、この小説の世界ではどうなるのかというと、あとは実家に帰るか、娼館といった紹介なしでも雇ってもらえる場所に行くかしかないような世界観だった。
小説では、シタンがメリーに仕返しをするようなシーンは出て来なかったが、ここまで酷いことをされてるのに、しなくてどうする。
メリーには、自分がやった事の落とし前をつけて貰おう。
菓子を食べ散らかしておいたら、思った通りメリーは怒髪天で大きな声で私を叫んで呼んでいる。
カビたパンを少し食べただけでも怒るのに、楽しみにしていたお菓子を全部食べられていたら、そりゃ腹が立つよね。
この離れで少々怒鳴った所で、誰も来ないのは分かっているから。口から火でも吐きそうな位怒っている。
メリーの楽しみにしていた高級菓子は食べ尽くされ、包装紙や菓子箱が台所には散乱していた。
この世界のお菓子はまあ、そんな大したことないけど、高級菓子だけあってバターや砂糖がふんだんに使われていて、シタンの痩せた体に染み入るようだった。
逆に身体が驚くかもしれない。腹具合が気になる。
「お嬢様!あんたが食べたんでしょ!この、食い意地の汚い、泥棒猫が!このっ、根性叩き直してやるっ!」
泥棒猫はお前だ!そう思ったが、口汚く罵りながら私を捕まえに来るメリーが怖い。
首根っこ掴まれて、振り回される。ううっ、首が詰まって死にそうだ。首がスレて痕が付いただろう。
シタンが震えている、心底恐ろしいのだ。鞭で打たれる痛みを思い出し身体が固まる。ダメよ、こんなことでビビッてちゃ!奮起させる。
私の身体を振り回して突き飛ばすと、鞭を手に迫って来た。
容赦なく鞭が頭に振り下ろされる。
いつもなら、両手で庇うので、私の両腕は、服を脱いだら鞭の痕がたくさん傷になって残っている。
避けずに受けてやった。額に当たった鞭は、子供の柔らかい頭皮を傷つけ血が流れ始めた。
「あ、」
メリーはとっさにマズイと思った様だったが、私はくるりと向きを変え走り出した。
床に点々と血が落ちて痕を残す。
「まっ、待ちなさい!」
私はそのまま家の中を走り抜け、玄関の扉を押し開き、外に出た。
血が顔を伝い、服を汚す。ちょっと目や口にも流れて入る。まあ、かまやしない。
こんな姿の子供が走って目の前に出て来たら絶叫ものだろう。
「くっくっ・・・」
可笑しくてたまらない。今から起こる事を思うと、わくわくする。
今の時間帯に誰がどうしているのかは、だいたい頭の中に入っていた。
尻や背中がヒリヒリする。きっとたくさん赤い痕がついているだろう。
あまりにお腹がへったので、戸棚の中のかびたパンをナイフで少し削いで食べたのがバレたのだ。
みてよ、この細い手足、ミイラじゃん、生きながら干からびてる。
こんなんじゃやってられないから、そろそろメリーを退治しなきゃ。
ということで、メリーがこっそりと、この離れで一人でお茶を淹れては食べている、高級菓子を食べてやった。
この菓子だって、本来ならシタンの為のお金を使って買ったものだ。
街に出ては、人の金だと思って好き勝手に使っている。
他の部屋のクローゼットには、メリーが自分の為の洋服や装飾品等を買って隠しているのを知っている。
ヴィエルジュ伯爵家の使用人の寮は同僚との二人部屋なので、色んなドレスやバッグに装飾品や靴等、大量に買い込んでいるのが一目瞭然だ。金回りが良いとすぐにバレてしまうのでここに隠しているのだ。
ここはお前の倉庫か!メリーのしている事は横領だ。
仕事をしている振りをして、離れでは好き勝手に怠惰に過ごし、シタンの為の金を横領しているのだ。
だけどこれを家令にこっそり伝えても、メリーに注意して、お金の管理を任せない様にする程度で、たぶんもみ消されるだろう。
だって、それって自分の監督不行き届きってやつだ。自分が不利になるような事は隠すに決まってる。
貴族家の使用人の雇用は、全て紹介制度で成り立っている。
何かしでかして辞めさせられて、主家を追い出された場合、次の紹介等してもらえない。
そういった場合、この小説の世界ではどうなるのかというと、あとは実家に帰るか、娼館といった紹介なしでも雇ってもらえる場所に行くかしかないような世界観だった。
小説では、シタンがメリーに仕返しをするようなシーンは出て来なかったが、ここまで酷いことをされてるのに、しなくてどうする。
メリーには、自分がやった事の落とし前をつけて貰おう。
菓子を食べ散らかしておいたら、思った通りメリーは怒髪天で大きな声で私を叫んで呼んでいる。
カビたパンを少し食べただけでも怒るのに、楽しみにしていたお菓子を全部食べられていたら、そりゃ腹が立つよね。
この離れで少々怒鳴った所で、誰も来ないのは分かっているから。口から火でも吐きそうな位怒っている。
メリーの楽しみにしていた高級菓子は食べ尽くされ、包装紙や菓子箱が台所には散乱していた。
この世界のお菓子はまあ、そんな大したことないけど、高級菓子だけあってバターや砂糖がふんだんに使われていて、シタンの痩せた体に染み入るようだった。
逆に身体が驚くかもしれない。腹具合が気になる。
「お嬢様!あんたが食べたんでしょ!この、食い意地の汚い、泥棒猫が!このっ、根性叩き直してやるっ!」
泥棒猫はお前だ!そう思ったが、口汚く罵りながら私を捕まえに来るメリーが怖い。
首根っこ掴まれて、振り回される。ううっ、首が詰まって死にそうだ。首がスレて痕が付いただろう。
シタンが震えている、心底恐ろしいのだ。鞭で打たれる痛みを思い出し身体が固まる。ダメよ、こんなことでビビッてちゃ!奮起させる。
私の身体を振り回して突き飛ばすと、鞭を手に迫って来た。
容赦なく鞭が頭に振り下ろされる。
いつもなら、両手で庇うので、私の両腕は、服を脱いだら鞭の痕がたくさん傷になって残っている。
避けずに受けてやった。額に当たった鞭は、子供の柔らかい頭皮を傷つけ血が流れ始めた。
「あ、」
メリーはとっさにマズイと思った様だったが、私はくるりと向きを変え走り出した。
床に点々と血が落ちて痕を残す。
「まっ、待ちなさい!」
私はそのまま家の中を走り抜け、玄関の扉を押し開き、外に出た。
血が顔を伝い、服を汚す。ちょっと目や口にも流れて入る。まあ、かまやしない。
こんな姿の子供が走って目の前に出て来たら絶叫ものだろう。
「くっくっ・・・」
可笑しくてたまらない。今から起こる事を思うと、わくわくする。
今の時間帯に誰がどうしているのかは、だいたい頭の中に入っていた。
10
お気に入りに追加
1,593
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる