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14.旅立ちには覚悟が必要
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「そうよね、怒って当然だと思う。あんたは怒っていいの」
「あんた・・・」
フィルシャンテはそう呼ばれて目を丸くしている。そんなふうに呼ばれた事がないのだろう。
「そう、あんたも私のことアンタって言っていいのよ」
「別に言いたくないわよ。ジュジュって呼ばせて貰うわ」
ツンと顎を突き出してそういう。はっきりした性格みたい。
私達のやりとりを見ているヴィートレッドは吹き出した。
「貴族的ではないな、確かに」
「魔女では普通よ。フィルシャンテ、あんたは誕生日が来たら魔女に戻るの。第二の人生は魔女として生きる道が残ってる。それを伝えに来た」
「第二の人生?そんな事が可能なの?」
「“魔女の力は魂に宿る”、そう魔女の母から私は何度も聞いていた。だったらあんたは魔女なんだから母さんみたいに、“人形”が作れるはずよ」
母の一族の特殊能力だ。彼女にも使えるはず。私がどんなに欲しいと願っても手に入らなかった魔女の異能を彼女は使えるはずだ。自分が魔女だという事を受け入れなければ始まらない話だけど。
「ジュジュ、貴女はあの人を恨んでないの?私は・・・」
「私は・・・恨めない。恨めないほど幸せだったよ。ごめんね」
「!、なんで貴女が誤るのよ、貴女は被害者だわ。本来ならここで貴族令嬢として幸せな将来が約束されていたのに、」
「でも幸せだった。あんたもそんなに怒ってくれるほど幸せだったのね?だったら、それでいいことにしない?今度は新しい人生を歩くの。――――人生は旅だっていうし。いろんな旅が出来るのは、私は素敵だと思うんだけど、あんたには出来ないかしら?」
私はわざと意地悪な言い方をした。
「あの・・・ジュジュは私が居なくなったら、家に戻ってくれる?」
なるほど、フィルシャンテは家の家族が心配なのだ。だけど、それはかなりデリケートな問題だ。私は彼女じゃないし、何もなかったような顔をしてすり替わるなんて無理。する気もない。姿形が同じでも親ならば直ぐに別人だと気づくはずだ。また、ブラノア伯爵は真実を知ったらどうするのかは予想もつかない。
「う~ん、あんたの代わりにはなれないけど、私は私として私を産んでくれたお母さんに会ってみたい気持ちはある。事実を知って辛いのは産んでくれたお母さんだと思うし。あんたが今まで幸せだったのなら、きっと素敵な人だろうから・・・だけど、どんな風に真実を伝えるかは難しいね」
「竜に乗れるのでしょう?竜騎士の家を継ぐ事も出来るのにどうして?貴女はブラノア家の正当な跡取りなのに」
「だって私、魔女の娘として生きてきたのに、貴族の生活を今更するなんて窮屈だからいやなの。あんたはこの世界に未練がないのなら構わないけど、新しい人生を手に入れるなら覚悟を決めないとね」
「ジュジュ、君は考えてないみたいだけど、家を継がないなら私の婚約者という立場はどうするつもりだ?」
「ちょっと!今、口を挟まないでちょうだい」
「ハイハイ」
ヴィートレッドは肩をすくめた。
「どうしてそんなにあっけらかんとしていられるの?」
フィルシャンテは不思議そうに私に問いかけた。
「考えても仕方がないことは考えない。前に進むしかないなら進む手立てを考える。先の事を考えて過ぎて不安になってもしょうがないじゃない。動けなくなるでしょ」
「・・・そう・・・なのかしら」
「あ、そうだ。あんたに渡そうと思ってた物があるの」
私は自分のバッグを手に取った。母のバッグだ。そして蓋を開くと中に手を突っ込んで、ある物を引っ張り出した。
「これフィルシャンテに渡したかった。あんたなら使える。私は無理だったけど」
「・・・これ、あの人の?
それは母の箒だった。アド・ファルルカから受け取った形見の。
「そう、私は箒には乗れなかったけど、代わりに竜を貰ったから。これはあんたの。母さんもそうして欲しかったと思う」
「箒・・・乗れるかしら?私に」
「乗れる。母さんの娘だもの。でもその前にしなきゃいけない事がある。誕生日前後は私と二人で過ごそう。私達が生まれ変わる時だから」
「――――誕生日は、成人の祝いも兼ねているからブラノア家で人を招待してパーティーがあるの。今更止められないわ。すっぽかしたりしたらブラノア家の評判が悪くなる・・・お願い、貴女が出てくれないと困る」
フィルシャンテは縋るような目をして私を見つめる。
「えっ、そんなこと急に言われても・・・」
「仕方ないじゃないか、彼女が元の姿に戻れば、君の姿をする者は君しか居なくなるんだ。幸いにもパーティーのパートナーは婚約者である私だ。頼ってくれて構わない」
急に、新しい旅立ちの難易度が上がってきた。私も先ずはすべきことがあるようだ。
「あんた・・・」
フィルシャンテはそう呼ばれて目を丸くしている。そんなふうに呼ばれた事がないのだろう。
「そう、あんたも私のことアンタって言っていいのよ」
「別に言いたくないわよ。ジュジュって呼ばせて貰うわ」
ツンと顎を突き出してそういう。はっきりした性格みたい。
私達のやりとりを見ているヴィートレッドは吹き出した。
「貴族的ではないな、確かに」
「魔女では普通よ。フィルシャンテ、あんたは誕生日が来たら魔女に戻るの。第二の人生は魔女として生きる道が残ってる。それを伝えに来た」
「第二の人生?そんな事が可能なの?」
「“魔女の力は魂に宿る”、そう魔女の母から私は何度も聞いていた。だったらあんたは魔女なんだから母さんみたいに、“人形”が作れるはずよ」
母の一族の特殊能力だ。彼女にも使えるはず。私がどんなに欲しいと願っても手に入らなかった魔女の異能を彼女は使えるはずだ。自分が魔女だという事を受け入れなければ始まらない話だけど。
「ジュジュ、貴女はあの人を恨んでないの?私は・・・」
「私は・・・恨めない。恨めないほど幸せだったよ。ごめんね」
「!、なんで貴女が誤るのよ、貴女は被害者だわ。本来ならここで貴族令嬢として幸せな将来が約束されていたのに、」
「でも幸せだった。あんたもそんなに怒ってくれるほど幸せだったのね?だったら、それでいいことにしない?今度は新しい人生を歩くの。――――人生は旅だっていうし。いろんな旅が出来るのは、私は素敵だと思うんだけど、あんたには出来ないかしら?」
私はわざと意地悪な言い方をした。
「あの・・・ジュジュは私が居なくなったら、家に戻ってくれる?」
なるほど、フィルシャンテは家の家族が心配なのだ。だけど、それはかなりデリケートな問題だ。私は彼女じゃないし、何もなかったような顔をしてすり替わるなんて無理。する気もない。姿形が同じでも親ならば直ぐに別人だと気づくはずだ。また、ブラノア伯爵は真実を知ったらどうするのかは予想もつかない。
「う~ん、あんたの代わりにはなれないけど、私は私として私を産んでくれたお母さんに会ってみたい気持ちはある。事実を知って辛いのは産んでくれたお母さんだと思うし。あんたが今まで幸せだったのなら、きっと素敵な人だろうから・・・だけど、どんな風に真実を伝えるかは難しいね」
「竜に乗れるのでしょう?竜騎士の家を継ぐ事も出来るのにどうして?貴女はブラノア家の正当な跡取りなのに」
「だって私、魔女の娘として生きてきたのに、貴族の生活を今更するなんて窮屈だからいやなの。あんたはこの世界に未練がないのなら構わないけど、新しい人生を手に入れるなら覚悟を決めないとね」
「ジュジュ、君は考えてないみたいだけど、家を継がないなら私の婚約者という立場はどうするつもりだ?」
「ちょっと!今、口を挟まないでちょうだい」
「ハイハイ」
ヴィートレッドは肩をすくめた。
「どうしてそんなにあっけらかんとしていられるの?」
フィルシャンテは不思議そうに私に問いかけた。
「考えても仕方がないことは考えない。前に進むしかないなら進む手立てを考える。先の事を考えて過ぎて不安になってもしょうがないじゃない。動けなくなるでしょ」
「・・・そう・・・なのかしら」
「あ、そうだ。あんたに渡そうと思ってた物があるの」
私は自分のバッグを手に取った。母のバッグだ。そして蓋を開くと中に手を突っ込んで、ある物を引っ張り出した。
「これフィルシャンテに渡したかった。あんたなら使える。私は無理だったけど」
「・・・これ、あの人の?
それは母の箒だった。アド・ファルルカから受け取った形見の。
「そう、私は箒には乗れなかったけど、代わりに竜を貰ったから。これはあんたの。母さんもそうして欲しかったと思う」
「箒・・・乗れるかしら?私に」
「乗れる。母さんの娘だもの。でもその前にしなきゃいけない事がある。誕生日前後は私と二人で過ごそう。私達が生まれ変わる時だから」
「――――誕生日は、成人の祝いも兼ねているからブラノア家で人を招待してパーティーがあるの。今更止められないわ。すっぽかしたりしたらブラノア家の評判が悪くなる・・・お願い、貴女が出てくれないと困る」
フィルシャンテは縋るような目をして私を見つめる。
「えっ、そんなこと急に言われても・・・」
「仕方ないじゃないか、彼女が元の姿に戻れば、君の姿をする者は君しか居なくなるんだ。幸いにもパーティーのパートナーは婚約者である私だ。頼ってくれて構わない」
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