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11.再び王都へ
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翌日、朝起きるとベッドのヘッドボードに白い鳩が止まっているのが目に入った。簡素な木で出来たボードの上に止まって赤い目でこちらをじっと見ている。
「あ・・・鳩さんおはよう」
羽音をさせて私の足の上のあたりに降りると首を前後に動かしながらこちらに寄ってくる。すごい本物そっくり。これって幻影なんだろうか?
『昼前に行く』
鳩からヴィートレッドの声がして、私に要件を伝えると鳩は元の紙の形代に戻った。
「わあ~」
感動して口から思わず声が漏れる。
貴族らしく前触れというやつかな。彼らしいというか、突然訪ねて来たりはしないらしい。
鳩の連絡通り彼の訪問は昼前だった。
宿の部屋がノックされてドアを開けると彼が立っていた。
「君、早かったんだな」
「ええ、向こうでの用事が早く済んだから戻ってきたの」
「淑女の部屋に入るのは気が引けるので外のレストランに行かないか?食事はまだだろう?」
「嬉しい、ちょうどお腹がすいていたの、行きます!」
そういうと彼は目を丸くして肩をすくめる。
「そうだろうと思ったよ」
彼に連れられて街中のレストランに入る。流石に王都、石畳が美しい。それと整備された街並みと驚嘆すべきは貴族街と言われる辺りには水路が作られていたことだ。知恵者がいるんだなと感服。(後にアド・ファルルカが発案者だと知る)
貴族御用達といった感じがする高級感のあるレストランに入る。一応、身支度は彼に外で待って貰って着替えたので、一番ましな服を身に着けている。動きやすいスタイルの服しか持って来ていないのでパンツスタイルにブーツだけど、清潔な物だ。奥にある個室に通されたので人目を気にしなくて良いのがいい。
「何が食べたい?なんでもあるが・・・」
「お肉と魚と野菜」
「じゃあ、どちらも出るコースにしよう。デザートもつけようか。でも本当にそんなに食べられるのか?」
「私、こう見えて食欲はすごいのよ」
「・・・それって女性は自慢にしないほうがいいんじゃないか?」
「なんで?」
「なんでって、貴族女性は沢山食べる事を自慢にはしないんだ」
「私は貴族じゃないからいいの」
「フッ、そうは言っても、君、男爵位をもっているじゃないか。身分証もそうなっていた。まだ無位の僕よりも身分は高いって事になる」
「それは・・・アド・ファルルカが持っていればいいって言ったのよ。母が貰うはずだった爵位を私が貰ったの。私はここで貴族の生活をするつもりはないから」
「ふうん。王都には住まないのか?」
「用事がすんだら、森に帰るわ」
「へえ、そうなんだ。それは残念」
「残念?貴方こそおかしな人よね。私の相手をしてくれるし」
「それは・・・君は僕の婚約者そっくりで、他人とは思えない。非常に稀な事だが、僕は君の事を気に入ってしまったらしい」
「そうなの?変わった人ね。嫌われるよりは素敵だわ。それに美味しい物を食べに連れてきてくれる親切な人」
「――――評価が良くて嬉しいよ。で、指輪の事だけど、どうするのか決まったのか?」
「そのことだけど、私の誕生日に呪いが解ける事がわかったの」
「本当に?」
「本当よ。それであなたにお願いがあったんだけど・・・」
「どんな?」
「私、フィルシャンテ嬢に会いたいの。どうしたら会えるかな?もちろんお屋敷に直接行くつもりはないから、外で会いたいの。彼女の生命にかかわる事だから、貴方にも協力してほしい」
「生命に?それはただ事じゃないな」
「そう」
「私は君の事はどうしてか信用してしまっているんだが、それでも理由を教えてもらえなければ難しい。仮にもこの国の将軍の令嬢だ。普段は護衛もついている。そうなると僕が一緒にいるときに会わせることになる。何かあれば一大事だ」
「貴方にも関係することだから、今まで私に起こった事を貴方にも聞かせるけど、長い話になります。でも、話を聞いてしまったら、貴方に選択権はないけどいいかしら?」
「なるほど随分と勝手な事を君は言うな。だが、私は君の話を聞きたい」
「きっと貴方はそういうと思った」
私はそう言って笑った。彼は変わり者だけど、なかなかに面白い人だと思う。
それから食事をしながら私は長い話を彼にした。彼は聞き上手で、急かすこともなく淡々と話しを聞いてくれた。
「あ・・・鳩さんおはよう」
羽音をさせて私の足の上のあたりに降りると首を前後に動かしながらこちらに寄ってくる。すごい本物そっくり。これって幻影なんだろうか?
『昼前に行く』
鳩からヴィートレッドの声がして、私に要件を伝えると鳩は元の紙の形代に戻った。
「わあ~」
感動して口から思わず声が漏れる。
貴族らしく前触れというやつかな。彼らしいというか、突然訪ねて来たりはしないらしい。
鳩の連絡通り彼の訪問は昼前だった。
宿の部屋がノックされてドアを開けると彼が立っていた。
「君、早かったんだな」
「ええ、向こうでの用事が早く済んだから戻ってきたの」
「淑女の部屋に入るのは気が引けるので外のレストランに行かないか?食事はまだだろう?」
「嬉しい、ちょうどお腹がすいていたの、行きます!」
そういうと彼は目を丸くして肩をすくめる。
「そうだろうと思ったよ」
彼に連れられて街中のレストランに入る。流石に王都、石畳が美しい。それと整備された街並みと驚嘆すべきは貴族街と言われる辺りには水路が作られていたことだ。知恵者がいるんだなと感服。(後にアド・ファルルカが発案者だと知る)
貴族御用達といった感じがする高級感のあるレストランに入る。一応、身支度は彼に外で待って貰って着替えたので、一番ましな服を身に着けている。動きやすいスタイルの服しか持って来ていないのでパンツスタイルにブーツだけど、清潔な物だ。奥にある個室に通されたので人目を気にしなくて良いのがいい。
「何が食べたい?なんでもあるが・・・」
「お肉と魚と野菜」
「じゃあ、どちらも出るコースにしよう。デザートもつけようか。でも本当にそんなに食べられるのか?」
「私、こう見えて食欲はすごいのよ」
「・・・それって女性は自慢にしないほうがいいんじゃないか?」
「なんで?」
「なんでって、貴族女性は沢山食べる事を自慢にはしないんだ」
「私は貴族じゃないからいいの」
「フッ、そうは言っても、君、男爵位をもっているじゃないか。身分証もそうなっていた。まだ無位の僕よりも身分は高いって事になる」
「それは・・・アド・ファルルカが持っていればいいって言ったのよ。母が貰うはずだった爵位を私が貰ったの。私はここで貴族の生活をするつもりはないから」
「ふうん。王都には住まないのか?」
「用事がすんだら、森に帰るわ」
「へえ、そうなんだ。それは残念」
「残念?貴方こそおかしな人よね。私の相手をしてくれるし」
「それは・・・君は僕の婚約者そっくりで、他人とは思えない。非常に稀な事だが、僕は君の事を気に入ってしまったらしい」
「そうなの?変わった人ね。嫌われるよりは素敵だわ。それに美味しい物を食べに連れてきてくれる親切な人」
「――――評価が良くて嬉しいよ。で、指輪の事だけど、どうするのか決まったのか?」
「そのことだけど、私の誕生日に呪いが解ける事がわかったの」
「本当に?」
「本当よ。それであなたにお願いがあったんだけど・・・」
「どんな?」
「私、フィルシャンテ嬢に会いたいの。どうしたら会えるかな?もちろんお屋敷に直接行くつもりはないから、外で会いたいの。彼女の生命にかかわる事だから、貴方にも協力してほしい」
「生命に?それはただ事じゃないな」
「そう」
「私は君の事はどうしてか信用してしまっているんだが、それでも理由を教えてもらえなければ難しい。仮にもこの国の将軍の令嬢だ。普段は護衛もついている。そうなると僕が一緒にいるときに会わせることになる。何かあれば一大事だ」
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「なるほど随分と勝手な事を君は言うな。だが、私は君の話を聞きたい」
「きっと貴方はそういうと思った」
私はそう言って笑った。彼は変わり者だけど、なかなかに面白い人だと思う。
それから食事をしながら私は長い話を彼にした。彼は聞き上手で、急かすこともなく淡々と話しを聞いてくれた。
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