42 / 46
第五章
11.霊符
しおりを挟む
私の家には、百家くんの伯母さんが、百家神社の巫女としてお祓いのアルバイトに一緒に来て欲しいという話を前もって連絡してくれていたのでスムーズに家から神社に行く事が出来た。
だけどお祖父ちゃんはすごく心配してくれていた。
「ほんまに大丈夫なんかのぅ、夜になるのにしんぱいじゃのぉ」
なんかオロオロと家の中を右往左往しているのを見ると申し訳なくなる。
「百家さんから責任を持って翌日の朝に送り届けますという話だったし、麻美が行くっていうんだからしょうがないわよ、お父さん」
お母さんがそう言ってくれたので、しぶしぶ頷いてくれた。それにしても、お母さんがやけに協力的なのにはちょっと引っ掛かるけど、まあ今から大仕事があるから気にしていられない。
「お祖父ちゃんごめんね、心配させて。でも付いて行くだけだし、大丈夫だよ。安心して寝ててね」
そう言って家を後にする。
百家神社に着くと巫女の衣裳に着替えた。着替えを百家くんのお母さんと伯母さんが手伝ってくれた。
コンタクトレンズにして髪は後ろで一つに纏めた。
「わあ、麻美ちゃん、まるで絵にかいた天女みたいよ、本当に綺麗ねぇ」
「ほんとねえ、斜陽にはもったいないパートナーね」
女性二人に似合うと褒めちぎられ恥ずかしかった。
まあ、パートナーっていうのも彼の霊力増幅器みたいな役目を持つ意味だろうから、深くは突っ込むのやめておこう。でないと自分がおこがましくて身の置き所がなくなる。
その後、二人で部屋で休憩する事になった。今夜の説明も百家くんがしてくれるそうだ。
座卓の上には色々な霊符が並べられていて、百家くんに少し説明をしてもらった、
霊符とは陰陽師だけでなく密教僧や修験者も使っていたらしい。
もとは神仙道や道教の符籙というものから来ているそうだ。古代中国の割符から護符となる。
それは神々と特定個人の契約関係を表す割符が護符となったというものらしいけど、そういうのをちょっと聞いただけではよく分からない。とりあえず聞き流す事にした。
とにかく、江戸時代にも陰陽道は民間呪法でもてはやされ、お札も盛んに取り入れられたらしい。例えば、
東方寳柱菩薩乃至入地
第會東方南方法戈戈菩薩
乃至入地第會西方北方
虚空性菩薩乃至入池大會
北方六法亦復如是乃至無
量音樂中央護舎曳功徳乃
至般若波羅蜜門戸守護符
↑家を守る護符 仁王経 家の北から四方位に貼り付ける
山
■■■
日日日
日日日
◇
〇
急
如
律
令
↑霊符 化生が通る道を封じる札
【〇急如律令】というのは 勅令を速やかに実行せよ、という意味。これを文末に置くのが日本では一般的なのだそうだ。
ありそうだけど日本では使われていない漢字を奇妙に組み合わせたような秘文字を使った霊符と
前に尾根山君の石事件の時にちょっと触れた陳宅霊符の、線と〇を繋げて作ったような不思議な霊符も混ざっている。有名な鎮宅七十二霊符という七十二の厄災から守ってくれるという護符にあるような霊符だ。
それを神職の常装である狩衣に着替えた百家くんが手で触れると不思議な事に全てが消えて行った。
「え、消えた・・・どこに消えたの?」
「秘密、と言いたい所だけど、う~ん、白狐のドラえもんのポケットみたいな所?」
「はぁ?」
思わず不機嫌な声を出してしまったが、白狐は私の前に突然姿を現すと、前にやってくれたみたいに肩に飛び乗り冷たい鼻スタンプを私の額に押し付けたのだ。
すると急に身体が涼しくなった。あ、これ好き。
『ヨメのメンド-みる』
「は?ヨメ?」
なんか、変んな狐の言語が聞こえたような気がした。これまで『きゅいーん』としか聞こえなかった狐の声が言葉に聞こえるとは・・・?
ジロリと百家くんを見ると、ガシガシ頭を毟って言った。
「あ~、多分、それは、う~ん、そう、『称号』だ」
「称号って・・・あの、ゲームで出て来るみたいな?」
「そう!それっ」
「称号もらったら、なんかいい事あるの?」
すごく胡散臭い感じがして思わず聞いた。
「そりゃあるさ、白狐の言葉は聞こえるし、守護される。あ、今も涼しくしてもらえただろ」
そこで、なんでそういう事になっているのかとか疑問はいっぱいあったけど、今から東神家に行かなければならない。守護はもちろん欲しいし、涼しいのはありがたい。巫女の装束なんて着てたら汗だくになるはずだ。
「ふぅん。まあいいや。それで、私は付いて行って東神家でどうしていたらいいの?」
※■◇〇記号は使われていない文字
※神仙道:神道の神を祀る日本流の仙人の道
※道教:漢民族の伝統的な宗教
※【仁王経 Rén wáng jīng】にんのうきょう: 《仁王護国般若波羅密経》の略称。
※符籙:中国,道教修行者が身につけていた秘密の文書。符とは,元来は身分を証明する割り札である。道教ではそれに呪文を記して守り札とした。 籙は天官や神仙の名簿であり,すべて白絹に書かれた。すでに『隋書』「経籍志」に符 籙の重要性は説かれ,天子が即位するごとにこの符 籙を授かることにした王朝もあった。符 籙を身につけていると,邪を払い,治病に効能があるとされる。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より
だけどお祖父ちゃんはすごく心配してくれていた。
「ほんまに大丈夫なんかのぅ、夜になるのにしんぱいじゃのぉ」
なんかオロオロと家の中を右往左往しているのを見ると申し訳なくなる。
「百家さんから責任を持って翌日の朝に送り届けますという話だったし、麻美が行くっていうんだからしょうがないわよ、お父さん」
お母さんがそう言ってくれたので、しぶしぶ頷いてくれた。それにしても、お母さんがやけに協力的なのにはちょっと引っ掛かるけど、まあ今から大仕事があるから気にしていられない。
「お祖父ちゃんごめんね、心配させて。でも付いて行くだけだし、大丈夫だよ。安心して寝ててね」
そう言って家を後にする。
百家神社に着くと巫女の衣裳に着替えた。着替えを百家くんのお母さんと伯母さんが手伝ってくれた。
コンタクトレンズにして髪は後ろで一つに纏めた。
「わあ、麻美ちゃん、まるで絵にかいた天女みたいよ、本当に綺麗ねぇ」
「ほんとねえ、斜陽にはもったいないパートナーね」
女性二人に似合うと褒めちぎられ恥ずかしかった。
まあ、パートナーっていうのも彼の霊力増幅器みたいな役目を持つ意味だろうから、深くは突っ込むのやめておこう。でないと自分がおこがましくて身の置き所がなくなる。
その後、二人で部屋で休憩する事になった。今夜の説明も百家くんがしてくれるそうだ。
座卓の上には色々な霊符が並べられていて、百家くんに少し説明をしてもらった、
霊符とは陰陽師だけでなく密教僧や修験者も使っていたらしい。
もとは神仙道や道教の符籙というものから来ているそうだ。古代中国の割符から護符となる。
それは神々と特定個人の契約関係を表す割符が護符となったというものらしいけど、そういうのをちょっと聞いただけではよく分からない。とりあえず聞き流す事にした。
とにかく、江戸時代にも陰陽道は民間呪法でもてはやされ、お札も盛んに取り入れられたらしい。例えば、
東方寳柱菩薩乃至入地
第會東方南方法戈戈菩薩
乃至入地第會西方北方
虚空性菩薩乃至入池大會
北方六法亦復如是乃至無
量音樂中央護舎曳功徳乃
至般若波羅蜜門戸守護符
↑家を守る護符 仁王経 家の北から四方位に貼り付ける
山
■■■
日日日
日日日
◇
〇
急
如
律
令
↑霊符 化生が通る道を封じる札
【〇急如律令】というのは 勅令を速やかに実行せよ、という意味。これを文末に置くのが日本では一般的なのだそうだ。
ありそうだけど日本では使われていない漢字を奇妙に組み合わせたような秘文字を使った霊符と
前に尾根山君の石事件の時にちょっと触れた陳宅霊符の、線と〇を繋げて作ったような不思議な霊符も混ざっている。有名な鎮宅七十二霊符という七十二の厄災から守ってくれるという護符にあるような霊符だ。
それを神職の常装である狩衣に着替えた百家くんが手で触れると不思議な事に全てが消えて行った。
「え、消えた・・・どこに消えたの?」
「秘密、と言いたい所だけど、う~ん、白狐のドラえもんのポケットみたいな所?」
「はぁ?」
思わず不機嫌な声を出してしまったが、白狐は私の前に突然姿を現すと、前にやってくれたみたいに肩に飛び乗り冷たい鼻スタンプを私の額に押し付けたのだ。
すると急に身体が涼しくなった。あ、これ好き。
『ヨメのメンド-みる』
「は?ヨメ?」
なんか、変んな狐の言語が聞こえたような気がした。これまで『きゅいーん』としか聞こえなかった狐の声が言葉に聞こえるとは・・・?
ジロリと百家くんを見ると、ガシガシ頭を毟って言った。
「あ~、多分、それは、う~ん、そう、『称号』だ」
「称号って・・・あの、ゲームで出て来るみたいな?」
「そう!それっ」
「称号もらったら、なんかいい事あるの?」
すごく胡散臭い感じがして思わず聞いた。
「そりゃあるさ、白狐の言葉は聞こえるし、守護される。あ、今も涼しくしてもらえただろ」
そこで、なんでそういう事になっているのかとか疑問はいっぱいあったけど、今から東神家に行かなければならない。守護はもちろん欲しいし、涼しいのはありがたい。巫女の装束なんて着てたら汗だくになるはずだ。
「ふぅん。まあいいや。それで、私は付いて行って東神家でどうしていたらいいの?」
※■◇〇記号は使われていない文字
※神仙道:神道の神を祀る日本流の仙人の道
※道教:漢民族の伝統的な宗教
※【仁王経 Rén wáng jīng】にんのうきょう: 《仁王護国般若波羅密経》の略称。
※符籙:中国,道教修行者が身につけていた秘密の文書。符とは,元来は身分を証明する割り札である。道教ではそれに呪文を記して守り札とした。 籙は天官や神仙の名簿であり,すべて白絹に書かれた。すでに『隋書』「経籍志」に符 籙の重要性は説かれ,天子が即位するごとにこの符 籙を授かることにした王朝もあった。符 籙を身につけていると,邪を払い,治病に効能があるとされる。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より
6
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる