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第二章
5.モトチチ、現れる
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結局、尾根山くんは、あの後百家くんの家に泊まり(神社の敷地の並びに立派な住居がある)、霊符を作ってもらったらしい。家用と自分用に作ってもらい。自分用のはお守りに入れて肌身離さずもっているみたい。
家用の霊符は貼り付ける場所があるらしく、百家くんが次の日に一緒にまた家に行き、貼り付けたそうだ。
その後、幽霊は出てないらしく、カリカリというラップ音も聞こえないそうだ。
時々、百家くんからそんなメールが来る。どうでもいいんだけど、『良かったね』とか『そうなんだ』位は返しておいた。
『反応、うっす』とかきてた。
それにしても、今日は塾が無いので、涼しい内に朝勉強して、お母さんが仕事に行った後、お祖父ちゃんはシルバーで依頼されている公園の管理の仕事の打ち合わせで出て行ったので、一人でお昼を食べていた時の事だ。
一応、田舎とはいえ空き巣被害や、老人を狙った押し売りなんかが横行しているので、玄関の引き戸にも錠をかけていたのだが、ガタガタいわせて声がする。
「どちら様ですか―?」
「麻美か?お父さんだ!開けてくれ!」
「・・・私には父はおりません」
「何言ってるんだ?お父さんだぞ」
「父は死にました」
「・・・いや、お父さんだから」
何言ってんだか、縁切ったオジサンと縁を戻すつもりはナイ。どうせ落ちぶれて、生活出来なくなって、お母さんを頼って来たに違いない。面倒事を家に入れるなんて御免だ。
因みに、父親の実家になんて行った事もない。ココよりももっと田舎の8人兄弟の七番目で、一番上の兄が継いだ家には戻って来るなと言われている関係だと、お母さんから聞いた事がある。
「お父さん、困ってるんだ。ちょっとここに泊めてくれないかな?」
「なんで?」
「何でって・・・お父さんじゃないか?」
「ここは、お母さんの家で、オジサンはもう他人でしょ?いい大人なのに分別ないの?」
「・・・でも、他に頼る所が無いんだ・・・」
「勝手すぎるとおもうよ」
ズルズルと玄関の曇りガラスの引き戸の前に座り込む様子が見える。あー、駄目だこりゃ。
こんなお荷物、お母さんに会わせて、いやな思いさせたくない。せっかくシングル生活楽しんでるのに。
二階に上がって、お祖父ちゃんの携帯に電話した。
「あ?どうした麻美?」
「お祖父ちゃん、家に、元父(もとちち)が来て玄関前に居座っているんだよ。多分、生活できなくなって、ここで寝泊まりしようって魂胆だと思う。私、絶対嫌だから。お母さんにも会わせたくない。なんとかならないかな?」
「・・・ああん?なんじゃと、そんなん祖父ちゃんにまかせろ。ええこと思いついた!麻美はわしが家に帰るまで外に出るなよ、直ぐに帰るけ」
「うん、わかった」
お祖父ちゃんの頼もしい返事を聞き、待つ事30分。
お母さんの漬物を食べてお茶を飲んでいると、下のガレージに軽トラが入って来る音がした。
お祖父ちゃんが。帰って来たようだ。重ねて車の音がしたので、もう一台入ってきたのかも知れない。
そういえば、モトチチはタクシーに乗って来たのだろうか。足音がしてお祖父ちゃんの声がした。
「あんたあ、何用かの?わしの家になんか用か?」
座り込んでいた元父が立ち上がり、オタオタしている。お祖父ちゃんの事なんて頭に無かったのだろう。
「あ、あの、ご無沙汰しております。麻美の父です」
こんな時だけ父だって。笑える。
「じゃけ、なんな?うちの娘は確かにあんたと離婚したが、わしゃあその相手が此処に来るとは聞いてないがの」
「え、あ、すいません・・・」
「麻美も会いたくないゆうとるし、あんたあ、急に来てどうするつもりじゃ?それが当たり前じゃとおもうとるんかの?」
「・・・」
「わしゃあ、ヒモみたいな男はスカンけえな。あんたあ、娘と結婚させて下さいゆうて来た時は、儂になんていうたか覚えとるか?」
「・・・」
「娘さんを大切にしますから一緒にさせて下さい、そういうたんじゃ。ちっとも大切にしゃあせんといてな」
「・・・」
だんまりだ。本当の事を言われてる。だんまりしか出来ないモトチチは情なさすぎる。
「麻美に泊めてくれいうたらしいが、断る。泊まる所が無いんじゃったら、働くなら寮がある所がある。そこに行きんさい」
「・・・どこに、どこに、行ったらいいですか?」
なんか、観念したみたいで、初めてまともな言葉をモトチチが発した。
「よっさん、頼んでもええかの?」
「おう、ええで。寝るとこはあるけの。働くなら飯も食わせるしの。丁度、道の駅に野菜持って来とったけ良かったわ」
ああ、横山のおじさんだ。熊山牧場の。
野菜も作ってるから、道の駅に少し出してるって言ってた。
確か、農場の仕事がきつくて、直ぐに人が辞めるから困るって言ってたし。なるほど、お祖父ちゃんナイス。
根性叩き直してもらえるかもしれないよね。だけどあんなんじゃ、暫くは使い物にならないかもしれないけど。
牧場はここからまた車で50分位かかる所にある。車がなかったら勝手に出入り出来ない場所だ。
「まあ、落ち着いたら話を聞きに行くが、勝手に孫や娘に会おうなんてマネしたら、警察呼ぶようにいうとくけな。よう考えてくれ」
こっそり裏口から出て、垣根の隙間から見て見たら、めっちゃ無精ひげ生やして、ゲッソリ痩せて、仙人モードになっていた。別人級。
なんか、警察に連れて行かれる犯人みたいになってた。
横山のおじさんの軽トラに乗せられて連れていかれてた。
サヨウナラ出来ればもう会いたくないです。特にお母さんには会わないで下さい。心からそう願った。
家用の霊符は貼り付ける場所があるらしく、百家くんが次の日に一緒にまた家に行き、貼り付けたそうだ。
その後、幽霊は出てないらしく、カリカリというラップ音も聞こえないそうだ。
時々、百家くんからそんなメールが来る。どうでもいいんだけど、『良かったね』とか『そうなんだ』位は返しておいた。
『反応、うっす』とかきてた。
それにしても、今日は塾が無いので、涼しい内に朝勉強して、お母さんが仕事に行った後、お祖父ちゃんはシルバーで依頼されている公園の管理の仕事の打ち合わせで出て行ったので、一人でお昼を食べていた時の事だ。
一応、田舎とはいえ空き巣被害や、老人を狙った押し売りなんかが横行しているので、玄関の引き戸にも錠をかけていたのだが、ガタガタいわせて声がする。
「どちら様ですか―?」
「麻美か?お父さんだ!開けてくれ!」
「・・・私には父はおりません」
「何言ってるんだ?お父さんだぞ」
「父は死にました」
「・・・いや、お父さんだから」
何言ってんだか、縁切ったオジサンと縁を戻すつもりはナイ。どうせ落ちぶれて、生活出来なくなって、お母さんを頼って来たに違いない。面倒事を家に入れるなんて御免だ。
因みに、父親の実家になんて行った事もない。ココよりももっと田舎の8人兄弟の七番目で、一番上の兄が継いだ家には戻って来るなと言われている関係だと、お母さんから聞いた事がある。
「お父さん、困ってるんだ。ちょっとここに泊めてくれないかな?」
「なんで?」
「何でって・・・お父さんじゃないか?」
「ここは、お母さんの家で、オジサンはもう他人でしょ?いい大人なのに分別ないの?」
「・・・でも、他に頼る所が無いんだ・・・」
「勝手すぎるとおもうよ」
ズルズルと玄関の曇りガラスの引き戸の前に座り込む様子が見える。あー、駄目だこりゃ。
こんなお荷物、お母さんに会わせて、いやな思いさせたくない。せっかくシングル生活楽しんでるのに。
二階に上がって、お祖父ちゃんの携帯に電話した。
「あ?どうした麻美?」
「お祖父ちゃん、家に、元父(もとちち)が来て玄関前に居座っているんだよ。多分、生活できなくなって、ここで寝泊まりしようって魂胆だと思う。私、絶対嫌だから。お母さんにも会わせたくない。なんとかならないかな?」
「・・・ああん?なんじゃと、そんなん祖父ちゃんにまかせろ。ええこと思いついた!麻美はわしが家に帰るまで外に出るなよ、直ぐに帰るけ」
「うん、わかった」
お祖父ちゃんの頼もしい返事を聞き、待つ事30分。
お母さんの漬物を食べてお茶を飲んでいると、下のガレージに軽トラが入って来る音がした。
お祖父ちゃんが。帰って来たようだ。重ねて車の音がしたので、もう一台入ってきたのかも知れない。
そういえば、モトチチはタクシーに乗って来たのだろうか。足音がしてお祖父ちゃんの声がした。
「あんたあ、何用かの?わしの家になんか用か?」
座り込んでいた元父が立ち上がり、オタオタしている。お祖父ちゃんの事なんて頭に無かったのだろう。
「あ、あの、ご無沙汰しております。麻美の父です」
こんな時だけ父だって。笑える。
「じゃけ、なんな?うちの娘は確かにあんたと離婚したが、わしゃあその相手が此処に来るとは聞いてないがの」
「え、あ、すいません・・・」
「麻美も会いたくないゆうとるし、あんたあ、急に来てどうするつもりじゃ?それが当たり前じゃとおもうとるんかの?」
「・・・」
「わしゃあ、ヒモみたいな男はスカンけえな。あんたあ、娘と結婚させて下さいゆうて来た時は、儂になんていうたか覚えとるか?」
「・・・」
「娘さんを大切にしますから一緒にさせて下さい、そういうたんじゃ。ちっとも大切にしゃあせんといてな」
「・・・」
だんまりだ。本当の事を言われてる。だんまりしか出来ないモトチチは情なさすぎる。
「麻美に泊めてくれいうたらしいが、断る。泊まる所が無いんじゃったら、働くなら寮がある所がある。そこに行きんさい」
「・・・どこに、どこに、行ったらいいですか?」
なんか、観念したみたいで、初めてまともな言葉をモトチチが発した。
「よっさん、頼んでもええかの?」
「おう、ええで。寝るとこはあるけの。働くなら飯も食わせるしの。丁度、道の駅に野菜持って来とったけ良かったわ」
ああ、横山のおじさんだ。熊山牧場の。
野菜も作ってるから、道の駅に少し出してるって言ってた。
確か、農場の仕事がきつくて、直ぐに人が辞めるから困るって言ってたし。なるほど、お祖父ちゃんナイス。
根性叩き直してもらえるかもしれないよね。だけどあんなんじゃ、暫くは使い物にならないかもしれないけど。
牧場はここからまた車で50分位かかる所にある。車がなかったら勝手に出入り出来ない場所だ。
「まあ、落ち着いたら話を聞きに行くが、勝手に孫や娘に会おうなんてマネしたら、警察呼ぶようにいうとくけな。よう考えてくれ」
こっそり裏口から出て、垣根の隙間から見て見たら、めっちゃ無精ひげ生やして、ゲッソリ痩せて、仙人モードになっていた。別人級。
なんか、警察に連れて行かれる犯人みたいになってた。
横山のおじさんの軽トラに乗せられて連れていかれてた。
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