Magical Science

天網 慶

文字の大きさ
上 下
10 / 12

第10話 大いなる宝

しおりを挟む
レオは『デストロイ』を何度もワットに向かって放った。しかしすべてワットに直撃するが、まったく効いている様子はない。レオは冷や汗をかく。

「まさか、このタイミングで覚醒するとはな…。」

 ワットは仲間の死に瀕して、かつて自身の父親から託された特殊魔法に覚醒した。その特殊魔法とは、『インヴィンシブル』。敵の魔法のいかなる効果も受けないという能力だ。レオは自身が覚えているすべての魔法をワットに繰り出すが、まったく効果はない。

 ワットは敵の攻撃を気にすることなく魔力を溜める。

「幻影魔法奥義:サーペントオーガンスペクトラム」

 ワットの奥義がレオを襲い掛かる。レオはすんでのところで避けた。だがサーペントオーガンスペクトラムは追尾機能がある。ワットの奥義がレオを追いかけるが、

「ふんっこんな攻撃、避けるなんざわけないわ。」そういってレオは攻撃を避け続ける。だが、急に何者かの魔法が飛んできて、サーペントオーガンスペクトラムが姿を消す。攻撃が来た方向を見ると、そこにはシーザーが立っていた。

「20年間、この時を待っていた!」

「小癪な…!!」レオは一言そう言い放って、攻撃を喰らう。

 サーペントオーガンスペクトラムは対象の動き・思考を止めるだけでなく、それをワットが自在に操ることができる。もちろん、心臓を止めたりなど、器官も操ることができる。ワットはレオの意識と痛覚だけを残し、まずは全身の神経を刺激した。

「くあぁぁ…。」レオが苦しみの悲鳴を上げる。死ぬほどの激痛、だが死ぬことはできない。

「こんなもんじゃないぞ、今までお前が殺してきた人々の恨みは…。」ワットはそう言って、次にレオの呼吸を止める。そしてレオが意識を失う寸前に、レオに呼吸をさせ意識を回復させてから、また呼吸を止める。レオは常に空気を吸えない窒息の苦しみを味わい、気絶することもできない。

「もう止せ…。」シーザーが止める。

「なんで?コイツは父さんを、ニコを殺したんだ。もっと苦しめてやらなきゃ。」そうしてワットはレオに幻術を見せた。リチャードとニコにナイフで24時間刺され続ける幻覚を…。もちろん幻覚なので、ナイフで刺される痛みだけを体感し、それによって死ぬことはない。

「お前の気持ちは痛いほど分かる。俺も正直、こうしてやりたかったさ。だが復讐なんて何も残らん。俺たちの目的を思い出せ。」

 ワットは幻覚を見せることを止めた。確かにシーザーの言う通りだ。こんなことをしても、2人は浮かばれない。ワットはレオの意識を奪って、質問に答えさせた。

「大いなる宝はどこにある?」

「中央局の地下…。魔法牢獄よりもさらに奥深くにある…。」

「キャシー立てるか?」ワットはそう言って、キャシーの肩を組んだ。

「ついに、大いなる宝が見つかる。俺たちの夢が叶うぞ。」ワットは目を輝かせた。

「やっぱり…あんたは夢を諦めてなかったのね…。」キャシーがボソッと呟いた。

「最後にもう1つコイツに聞きたいことがある。」シーザーが言う。

「何だ?」

「リチャードがなぜ、HUOを世界の秘密を知っていたのかだ。」

 ワットは確かにそのことを疑問に思っていた。そのためレオにその旨を聞いた。

「なぜなら…リチャードは…HUOのメンバーだったからだ…。始まりの6人の魔法使い。リチャードもその末裔の1人だった。俺たち6人は大いなる宝の中身を知ったのだ。我々5人はその中身を封印すべきだと主張した。リチャードもそれに賛成はしたが、国民を管理するという封印の方法が気に食わなかったらしい。それでリチャードはHUOを脱退した。」

 レオから衝撃の真実が話される。

「…。」3人は誰一人口を開かなかった。

 ワット、キャシー、シーザーがレオを連れて地下に向かっていると、ゼイラとコーネリウスも合流した。彼らもHUOのメンバーを各々撃破したようだ。ワットたちは、途中ノヴァを見つけ出し解放する。ノヴァはワットとシーザーを見るなり、泣き崩れた。

「お前たち、すまない。本当にすまない。俺のせいでリチャードが…。俺が本拠地をバラしたせいで…。」

「もう過ぎたことだ。リチャードもお前を恨むようなちゃちい人間じゃない。」

「俺だってあなたを責めたりしませんよ。俺だってあなたのような選択をしたかもしれない。」2人はノヴァを立ち上がらせた。

「さあ、みんなで大いなる宝を見つけに行こう!」ワットはそう言って、5人を引き連れて最下層に向かった。

ー中央局最下層ー

 入るにはHUOのメンバーの魔力が必要だった。だが扉はワットに反応して開いた。ワットにリチャードの魔力が受け継がれていたからだろう。それで改めてさっきのレオの話が本当だったんだと痛感する。そこからさらに地下に続く扉を見つけた。ワットは扉に手をかける。

「みんな、準備はいいか?」5人に問いかける。

 5人は静かに頷く。

 ワットがゆっくり扉を開けると、そこは小さな部屋だった。中には何やら怪しい液体が入っている壺と2枚の紙きれがあるだけだった。

「なんだこれ、金銀財宝があるんじゃないのか?」ワットが叫ぶ。

「いや、これはとんでもないことが書いてある…。」シーザーがわなわなと震えながら、1枚の紙を見る。そしてそれを5人で共有する。そこには「電気」という概念について、そしてその電気を生み出すための「発電方法」が書かれていた。電気の使い道も記されていた。

「電気自動車というものを使えば、魔法で飛ぶよりも速く動けるだと?」

「飛行機というものは魔法を使わずに、空を飛べるのか…。」

「電車というものを使えば、ある1点から1点に高速で移動できる…。こんなのがあったら遠方の人とも交流が出来、もっと町が発展するぞ。」

「いちいち手紙で連絡を取らなくても、電話というもので一瞬で連絡が取れる?声まで聴きとれるなんでどんな魔法だ?」

「これらの技術が普及すれば、ノヴァのような魔法を使えない人の生活も豊かになるぞ!」

「わざわざドアを開けなくても、インターホンというもので誰が来たか分かるらしい。透視魔法かよ…。」

 6人は未知の技術に興奮していた。「これは一体何なんだ?」ワットがレオに聞く。

「それらは1000年前に書かれたものだ。魔法文明が誕生する前の技術だ。」

「なんでこんなすごいものをみんなで共有しないんだ?」シーザーがレオに言う。

「もう1枚の紙を見ろ。」そういって6人はもう1枚の紙を見る。そこには「核兵器」について書かれていた。核兵器とは何なのか。どうやって作るのか。その危険性すべてが記されていた。

「確かに書かれてることは、ひどいことばかりだけど、いまいちピンとこないな…。」ゼイラが言う。

「私だって最初はそうだったさ…。その壺の液体を飲んでみろ。それは記憶を液体化したものだ。記憶の中身は、最初の6人の記憶だ。飲めば記憶を体験できる。そして知るがいい、1000年前の人間が犯した罪を。」

 6人は記憶の液体を飲んだ。6人の脳内に最初の6人の記憶が流れ込んで来る。

ーTo be continued ー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした

星ふくろう
恋愛
 カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。  帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。  その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。  数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。    他の投稿サイトでも掲載しています。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...