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第7話 20年前
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(ついに幹部クラスを倒した。)
ワットは満身創痍であった。だが、親友の失踪の真相に一歩近づいたことを感じ、嬉しささえ感じていた。が、その時「ドォォォン!!」音がする方を見るとそこには誰かが立っていた。
「当然だな。ここは敵の本拠地。敵は溢れるように来る。」アインが静かに言う。
もうもうと立ち込める煙の中から男がゆっくり現れる。
「3人がかりとはいえ、まさかテイラーを倒すとはな…。やはり君だと思ったよ、ロバート。」男が言う。
「あんた、俺のことを知っているのか?」ワットが尋ねる。
「私に敵意はない。君たちももう魔力を使い果たしただろう?私と話しをしないか?」男が言う。
3人は何も言わない。男が話を続ける。
「まず私はシーザー。モンキード。リベレイションズのリーダーであり、君の父親の親友だ。」
「…!」ワットが驚く。
「君は知らなければならない。20年前に君の父親に何が起きたのか。何が起きたか知りたいか?」
「ああ…。話してくれ。」ワットがそう言うと、シーザーは話始めた。
ー20年前ー
「よう、お前シーザーだよな。」誰かがシーザーに話しかける。振り返ると、そこには1人の男が立っていた。
「俺はリチャード・ワトソン。お前は見込みがある。俺と一緒に来い。」
これがシーザーとワットの父、リチャードの最初の出会いだった。
それからシーザーとリチャードは話しているうちに気が合い仲良くなった。リチャードはシーザーの同級生であるノヴァとも仲良くなった。3人は既に各々就職していたが、暇さえあれば3人で集まり、様々な議論を重ねていた。
そんなある日、リチャードは2人を自身の家に呼び出した。大事な話がある、と。そしてリチャードは話し出した。
「俺たちが国に監視されていることはお前たちも知っていると思う。表向きには国民をだれ一人取り残さないというスローガンが掲げられているが、本当は国民を1人1人支配・監視するために仕掛けられている。俺たちにはプライバシーなんてものはない。これは間違いじゃないか?人間なら自由であるべきだろう?」リチャードは言う。
「ま、待てよ。お前は何を言っているんだ。シーザーが戸惑う。
「お前たちが簡単に信じてくれるとは思っていない。でも信じてくれ。」リチャードが頭を下げる。
「でも、なんで君はそんな情報を知っているんだい?」ノヴァが尋ねる。
「それは、今は言えない。すまない…。」
「俺はリチャードを信じるよ。俺は俺の常識よりも、ここまで共に過ごしてきたお前を信じる。」シーザーが言う。
「お、俺も。」ノヴァも言う。
「お前ら…。」リチャードは思わず目に涙を浮かべる。
「それで、俺らを鳥かごの中の鳥の状態にしてる奴らは誰だ?」シーザーが尋ねる。
「それは、the Human Unity Organization (HUO)という非公表の組織だ。」リチャードが答える。
「何者なんだ、そのHUOという人達は?」ノヴァが尋ねる。
「お前たちも歴史の授業で習ったと思う。この魔法文明を築いた最初の6人の魔法使いを。HUOのメンバーはこの最初の6人の子孫たちだ。」リチャードは真剣な眼差しで答えた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話がぶっとんでて頭が追いつかねえ。最初の6人?子孫がいたのか?」シーザーが困惑する。
「ああ。」リチャードは静かに頷く。しばらく沈黙が続く。
ーコンコンコンー
ドアのノックが沈黙を破る。リチャードがドアを開けようとすると、「バン!」ドアが無理やり破られる。
「秘密をバラすとは悪い子だな。リチャード。」招かれざる訪問者は、なんと中央局の長官、レオ・シェヘラザードだった。実質、この国のトップの男である。
「こんな大物がなぜこんなところに?」ノヴァが驚く。
「コイツがHUOのリーダーだ!」リチャードはそう言うや否や攻撃を繰り出した。
「お前たちの返事を聞く前に巻き込んでしまってすまない。」リチャードが謝る。
「詳しくは後でゆっくり聞かせてもらうぞ。今は逃げる!」そういってシーザーは魔法を繰り出した。
「逃げたか…。なかなか良い魔法を持っているな。」レオがニヤケる。
「はあはあ、ここまで来れば大丈夫だろう。さあ説明してくれ。」シーザーが催促をする。
「待て!俺たちには刻印が刻まれている。居場所はバレバレだ。まさか会話まで聞けるとは思わなかったが…。」リチャードが言う。
「居場所がバレバレって、じゃあどうすればいいんだ。」ノヴァが狼狽える。
「刻印ってそういう仕組みなんだ?」シーザーが尋ねる。
「刻印は、奴らの中の1人の特殊魔法で作られたものだ。生まれた時から全国民の脳に刻まれる。」
「じゃあ俺たちの脳には異物があるってことか?それならなんとかなるかも…。」
「本当か!?シーザー!」
「ああ、俺の特殊魔法『インビジブル』は、対象物の存在を消す魔法だ。俺の魔法で刻印を消せるかも…。」
「存在を消す?じゃあ、さっき俺たちは存在を消されたってことか?」リチャードが戸惑う。
「存在を消すっていうのは一種の比喩だよ。」ノヴァがフォローする。
「まあ、存在を消すっていのは言いすぎたな。要は姿隠しの魔法と一緒だ。だが絶対に見つからない姿隠しだけどな。インビジブルの対象は、一切存在を認識されなくなる。刻印にインビジブルをすれば、刻印は認識されなくなり、機能しなくなるんじゃないか?」シーザーが説明する。
「お前はなんてすばらしい魔法を持っているんだ。すぐに俺たちにかけてくれ!」リチャードが嬉しそうに叫ぶ。
シーザーは三人にインビジブルをかけた。そして遠くに逃げた。
「これからはここに3人で暮らそう。そしてお前たちを勝手に巻き込んですまない。」リチャードが言う。
「俺たちが今更怒ると思ったか?国民のため、誰かがやらなくちゃならないんだろ。」シーザーが答える。
「それにこれが成功したら、俺たちはヒーローってことだろ?」ノヴァも乗り気だ。
こうしてシーザーたちは、対HUO団体 リベレイションズを設立した。そして来るべき「聖戦」のために魔法の研鑽を重ねた。決して気を抜いていたわけではないが、この時間は平和だった。
だが、平和は長くは続かない。リベレイションズ設立から2年経ったある日ノヴァが食料の買い出しに出かけていた。その帰り道、レオに出くわしてしまった。本当に偶然な出来事だった。
「おや、君は確か2年前にリチャードと一緒にいた子だね。」レオが言う。
ノヴァは走り出した。(すぐに2人に知らせないと)ノヴァは本拠地に走り出す。だが、すぐにレオに追いつかれた。
「君と取引をしようではないか。何お互いに悪い話ではない。」
「取引だと?」
「ああ。本来ならば我々の存在を知った君たちは死刑だ。だが、今リチャードの居場所を教えてくれれば、少なくとも死刑は避けてやろう。そして君は無罪放免で自由に暮らすがいい。」
「俺に仲間を売れっていうのか?」
「いいや。私は仲間を救えと言っているんだ。君たちの本拠地を見つけるなど、時間の問題だ。そうなったら君の大切な友達は皆死ぬ。だがそれでは我々にとっても時間がかかりすぎる。そこでだ。今、居場所を教えてくれれば、誰も死ぬことはない。ちょっと取り調べをしたいだけだ。」
ノヴァは取り乱していた。冷静に考えればシーザーの特殊魔法が破られることは絶対にない。だが、自己への保身、生への執着がノヴァの判断を鈍らせた。
「分かった。約束は守れよ…。」
レオは薄ら笑いを浮かべる。
リチャードとシーザーは来るべき「聖戦」に向けて作戦を考えていた。
「いつやつらに仕掛ける?先手を打った方がいいだろ?」シーザーが問う。
「そうだな。ノヴァが帰ってきたら作戦会議をしよう。」リチャードが答える。
彼らが話し合っていると、扉の開く音がした。(ノヴァが返って来たか)2人はそう思ったが、入って来た男はレオだった。2人は咄嗟に戦闘態勢に入る。リチャード・シーザーVSレオの戦闘が始まった。しかし、決着がつくのは一瞬だった。2人はレオにまったく歯が立たなかった。
(このままでは2人とも殺される。リチャードだけは何としても生きなければならない。リチャードこそ未来の希望だ。)シーザーは覚悟を決めた。そしてリチャードにインビジブルをかけた。
「逃げろ!お前だけは死んじゃダメだ!」シーザーがレオに攻撃を仕掛ける。
(すなまない。シーザー、ノヴァ。)リチャードは戦線を離脱した。
リチャードには家族がいた。恐らく家族も狙われる。リチャードはそう思い、妻のジェシカと息子のロバートを家から連れ出し、ひたすら逃げた。
どれくらい逃げただろうか。ロバートはまだ幼い。ジェシカも心配であるため少し休憩をすることにした。だがレオがすぐに追いついてくる。既にジェシカとロバートの刻印は外している。(シーザー…。)リチャードは戦う他道はなかった。
「ジェシカ…。ロバートを頼んだぞ。」
「ええ。今までありがとうあなた…。」2人は運命を悟ったが、余計な言葉は交わさなかった。
数分間、リチャードは全力で戦ったが、レオには勝てなかった。
「なぜ特殊魔法を使わない?貴様の特殊魔法なら私に勝てるだろう。」レオが言う。
リチャードの特殊魔法は強力が故に人生で1度しか使えない。HUOはレオだけではない。まだ使うわけにはいかなかった。そこでリチャードは自己の特殊魔法をワット(ロバート)に受け継がせていた。
「お前みたいなヤツはいつか絶対失敗するって相場は決まってんだよ。くそ野郎。」リチャードは中指を立て、レオの攻撃を喰らった。
レオはジェシカとワットを追いかけた。レオとすれ違うようにシーザーが現れた。
「生きてたのか…シーザー…。」リチャードが言う。
「ああ…。何とかな」シーザーが答える。
「俺は…もう…駄目だ。この世界を解放するには…ロバートの力が必要だ…。シーザー…後のことは頼む…。」リチャードはそう言って息を引き取った。
「まったく手間をかけさせる。」レオがため息交じりに言う。レオはジェシカとワットを見つけ出していた。
「なぜあなたは私たちを狙うの?」ジェシカがワットを抱きかかえて言う。
「リチャードの思想とリチャードの能力は、我々の障害となる。それを早々に排除しなければならない。」レオが淡々と答える。
「つまり、あなたたちを殺すためにはワットの力が必要ということね。」ジェシカが強気に答える。そして顔に笑みを浮かべ、ワットに魔法を唱えた。
「特殊魔法:トランスポート」
ジェシカも特殊魔法の使い手であり、その能力は対象を瞬間移動させる能力である。対象は1つなので、今まで使えずにいたが、ジェシカは今、自分の命に代えてもワットを守ると心に誓い、ワットを祖母の元へと瞬間移動させた。
「これであなたは絶対にワットの居場所が分からない。」ジェシカが言う。
「小癪な…。」そういってレオはジェシカに魔法をかけ、ジェシカも息を引き取った。
ー現代ー
「その後、私は君を必死で探したのだがついに見つけることはできなかった。俺はてっきり…君もレオにやられてしまったんじゃないかって思った。リチャードの意思を絶やしてはならない。そう思って、俺はリベレイションズを復活させたんだ。本当に生きてて良かった…。」シーザーは泣きながら言う。
「泣かないでください。こちらこそ父さんの意思を絶やさずにいてくれてありがとう。この20年間奴らに見つからずに行動してたなんて、本当にすごい。」ワットは優しく答える。
「君を最後に見た時は、ほんの赤ん坊だったのに。立派になったな。」シーザーはまだ泣いている。
「ちょっと待て、ワトソン!お前はこいつらのことを信じるのか。」アインが口をはさむ。
「それに関しては信じてくれ、としか言えないな。」シーザーが答える。
「俺は信じるよ。何よりこの人は知らない人って感じがしないんだ。なんかこの人と話してると安心する…。」ワットが目を閉じて言う。
「なんだそれ。キャシーお前も信じるのか?」アインが尋ねる。
「私はワットを信じる。確かにこの人の言うことは信じられないけど、幼馴染のワットが信じることは私も信じることができる。」
「ありがとう、キャシー。」ワットはそう言い、さらに続ける。
「俺、魔法省止めるよ。」その言葉に2人は驚く。
「正気か、ワトソン!?出世コースを棒に振る気か?」アインが言う。
「ああ、俺は父さんと母さんを殺したレオを絶対に許さない。」ワットが言う。
「なら私も協力するわ。ここまで来たんだから最後まで付き合うわよ。」キャシーが言う。
「本当にいいのか?下手したら死ぬんだぞ。」シーザーが言う。
「そんなこと百も承知ですよ。」
「私も。」2人は答える。
「本当にありがとう。信頼の証にリベレイションズの残る幹部を紹介しよう。」シーザーはそう言って仲間を呼び寄せた。まず1人来た。
「幹部は全員で3人いる。まず君たちが倒したテイラー。そしてこの屈強な男がゼイラ・コールフィールド。そしてもう1人が…」シーザーが話してる途中にもう一人入って来た。
「コーネリウス・ハッチだ。」来たのはなんと、ワットとキャシーの魔法学校時代に先生だった。
「先生!?」ワットとキャシーは同時に言う。
「実はさっきはああ言ったが、実はワットの居場所は分かってたんだ。だが、君の意思なしに我々の活動の参加させるべきではないと思ってね。そこで私の部下のコーネリウスを先生として学校に潜り込ませ、君を見守っていたんだ。」シーザーが言う。
「ただ見守っていたわけではありませんよ。こっそりあなたたちを鍛えていたんです。こうなることを見越してね。まさか幹部を倒せるまで成長するとは思いませんでしたが…。」
ワットとキャシーは目を丸くする。初めての実戦でチカマツを倒せたのは、既にある程度のレベルに達していたからかとワットは納得する。
「そして新メンバーの君たちに、最後に言いたいことがある。我々のもう1つの目的を」シーザーはそう言って息を整えた。そしてゆっくりと口を開いた。
「我々のもう1つの目的は、『大いなる宝』を見つけることだ。」
ーTo be continued ー
ワットは満身創痍であった。だが、親友の失踪の真相に一歩近づいたことを感じ、嬉しささえ感じていた。が、その時「ドォォォン!!」音がする方を見るとそこには誰かが立っていた。
「当然だな。ここは敵の本拠地。敵は溢れるように来る。」アインが静かに言う。
もうもうと立ち込める煙の中から男がゆっくり現れる。
「3人がかりとはいえ、まさかテイラーを倒すとはな…。やはり君だと思ったよ、ロバート。」男が言う。
「あんた、俺のことを知っているのか?」ワットが尋ねる。
「私に敵意はない。君たちももう魔力を使い果たしただろう?私と話しをしないか?」男が言う。
3人は何も言わない。男が話を続ける。
「まず私はシーザー。モンキード。リベレイションズのリーダーであり、君の父親の親友だ。」
「…!」ワットが驚く。
「君は知らなければならない。20年前に君の父親に何が起きたのか。何が起きたか知りたいか?」
「ああ…。話してくれ。」ワットがそう言うと、シーザーは話始めた。
ー20年前ー
「よう、お前シーザーだよな。」誰かがシーザーに話しかける。振り返ると、そこには1人の男が立っていた。
「俺はリチャード・ワトソン。お前は見込みがある。俺と一緒に来い。」
これがシーザーとワットの父、リチャードの最初の出会いだった。
それからシーザーとリチャードは話しているうちに気が合い仲良くなった。リチャードはシーザーの同級生であるノヴァとも仲良くなった。3人は既に各々就職していたが、暇さえあれば3人で集まり、様々な議論を重ねていた。
そんなある日、リチャードは2人を自身の家に呼び出した。大事な話がある、と。そしてリチャードは話し出した。
「俺たちが国に監視されていることはお前たちも知っていると思う。表向きには国民をだれ一人取り残さないというスローガンが掲げられているが、本当は国民を1人1人支配・監視するために仕掛けられている。俺たちにはプライバシーなんてものはない。これは間違いじゃないか?人間なら自由であるべきだろう?」リチャードは言う。
「ま、待てよ。お前は何を言っているんだ。シーザーが戸惑う。
「お前たちが簡単に信じてくれるとは思っていない。でも信じてくれ。」リチャードが頭を下げる。
「でも、なんで君はそんな情報を知っているんだい?」ノヴァが尋ねる。
「それは、今は言えない。すまない…。」
「俺はリチャードを信じるよ。俺は俺の常識よりも、ここまで共に過ごしてきたお前を信じる。」シーザーが言う。
「お、俺も。」ノヴァも言う。
「お前ら…。」リチャードは思わず目に涙を浮かべる。
「それで、俺らを鳥かごの中の鳥の状態にしてる奴らは誰だ?」シーザーが尋ねる。
「それは、the Human Unity Organization (HUO)という非公表の組織だ。」リチャードが答える。
「何者なんだ、そのHUOという人達は?」ノヴァが尋ねる。
「お前たちも歴史の授業で習ったと思う。この魔法文明を築いた最初の6人の魔法使いを。HUOのメンバーはこの最初の6人の子孫たちだ。」リチャードは真剣な眼差しで答えた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話がぶっとんでて頭が追いつかねえ。最初の6人?子孫がいたのか?」シーザーが困惑する。
「ああ。」リチャードは静かに頷く。しばらく沈黙が続く。
ーコンコンコンー
ドアのノックが沈黙を破る。リチャードがドアを開けようとすると、「バン!」ドアが無理やり破られる。
「秘密をバラすとは悪い子だな。リチャード。」招かれざる訪問者は、なんと中央局の長官、レオ・シェヘラザードだった。実質、この国のトップの男である。
「こんな大物がなぜこんなところに?」ノヴァが驚く。
「コイツがHUOのリーダーだ!」リチャードはそう言うや否や攻撃を繰り出した。
「お前たちの返事を聞く前に巻き込んでしまってすまない。」リチャードが謝る。
「詳しくは後でゆっくり聞かせてもらうぞ。今は逃げる!」そういってシーザーは魔法を繰り出した。
「逃げたか…。なかなか良い魔法を持っているな。」レオがニヤケる。
「はあはあ、ここまで来れば大丈夫だろう。さあ説明してくれ。」シーザーが催促をする。
「待て!俺たちには刻印が刻まれている。居場所はバレバレだ。まさか会話まで聞けるとは思わなかったが…。」リチャードが言う。
「居場所がバレバレって、じゃあどうすればいいんだ。」ノヴァが狼狽える。
「刻印ってそういう仕組みなんだ?」シーザーが尋ねる。
「刻印は、奴らの中の1人の特殊魔法で作られたものだ。生まれた時から全国民の脳に刻まれる。」
「じゃあ俺たちの脳には異物があるってことか?それならなんとかなるかも…。」
「本当か!?シーザー!」
「ああ、俺の特殊魔法『インビジブル』は、対象物の存在を消す魔法だ。俺の魔法で刻印を消せるかも…。」
「存在を消す?じゃあ、さっき俺たちは存在を消されたってことか?」リチャードが戸惑う。
「存在を消すっていうのは一種の比喩だよ。」ノヴァがフォローする。
「まあ、存在を消すっていのは言いすぎたな。要は姿隠しの魔法と一緒だ。だが絶対に見つからない姿隠しだけどな。インビジブルの対象は、一切存在を認識されなくなる。刻印にインビジブルをすれば、刻印は認識されなくなり、機能しなくなるんじゃないか?」シーザーが説明する。
「お前はなんてすばらしい魔法を持っているんだ。すぐに俺たちにかけてくれ!」リチャードが嬉しそうに叫ぶ。
シーザーは三人にインビジブルをかけた。そして遠くに逃げた。
「これからはここに3人で暮らそう。そしてお前たちを勝手に巻き込んですまない。」リチャードが言う。
「俺たちが今更怒ると思ったか?国民のため、誰かがやらなくちゃならないんだろ。」シーザーが答える。
「それにこれが成功したら、俺たちはヒーローってことだろ?」ノヴァも乗り気だ。
こうしてシーザーたちは、対HUO団体 リベレイションズを設立した。そして来るべき「聖戦」のために魔法の研鑽を重ねた。決して気を抜いていたわけではないが、この時間は平和だった。
だが、平和は長くは続かない。リベレイションズ設立から2年経ったある日ノヴァが食料の買い出しに出かけていた。その帰り道、レオに出くわしてしまった。本当に偶然な出来事だった。
「おや、君は確か2年前にリチャードと一緒にいた子だね。」レオが言う。
ノヴァは走り出した。(すぐに2人に知らせないと)ノヴァは本拠地に走り出す。だが、すぐにレオに追いつかれた。
「君と取引をしようではないか。何お互いに悪い話ではない。」
「取引だと?」
「ああ。本来ならば我々の存在を知った君たちは死刑だ。だが、今リチャードの居場所を教えてくれれば、少なくとも死刑は避けてやろう。そして君は無罪放免で自由に暮らすがいい。」
「俺に仲間を売れっていうのか?」
「いいや。私は仲間を救えと言っているんだ。君たちの本拠地を見つけるなど、時間の問題だ。そうなったら君の大切な友達は皆死ぬ。だがそれでは我々にとっても時間がかかりすぎる。そこでだ。今、居場所を教えてくれれば、誰も死ぬことはない。ちょっと取り調べをしたいだけだ。」
ノヴァは取り乱していた。冷静に考えればシーザーの特殊魔法が破られることは絶対にない。だが、自己への保身、生への執着がノヴァの判断を鈍らせた。
「分かった。約束は守れよ…。」
レオは薄ら笑いを浮かべる。
リチャードとシーザーは来るべき「聖戦」に向けて作戦を考えていた。
「いつやつらに仕掛ける?先手を打った方がいいだろ?」シーザーが問う。
「そうだな。ノヴァが帰ってきたら作戦会議をしよう。」リチャードが答える。
彼らが話し合っていると、扉の開く音がした。(ノヴァが返って来たか)2人はそう思ったが、入って来た男はレオだった。2人は咄嗟に戦闘態勢に入る。リチャード・シーザーVSレオの戦闘が始まった。しかし、決着がつくのは一瞬だった。2人はレオにまったく歯が立たなかった。
(このままでは2人とも殺される。リチャードだけは何としても生きなければならない。リチャードこそ未来の希望だ。)シーザーは覚悟を決めた。そしてリチャードにインビジブルをかけた。
「逃げろ!お前だけは死んじゃダメだ!」シーザーがレオに攻撃を仕掛ける。
(すなまない。シーザー、ノヴァ。)リチャードは戦線を離脱した。
リチャードには家族がいた。恐らく家族も狙われる。リチャードはそう思い、妻のジェシカと息子のロバートを家から連れ出し、ひたすら逃げた。
どれくらい逃げただろうか。ロバートはまだ幼い。ジェシカも心配であるため少し休憩をすることにした。だがレオがすぐに追いついてくる。既にジェシカとロバートの刻印は外している。(シーザー…。)リチャードは戦う他道はなかった。
「ジェシカ…。ロバートを頼んだぞ。」
「ええ。今までありがとうあなた…。」2人は運命を悟ったが、余計な言葉は交わさなかった。
数分間、リチャードは全力で戦ったが、レオには勝てなかった。
「なぜ特殊魔法を使わない?貴様の特殊魔法なら私に勝てるだろう。」レオが言う。
リチャードの特殊魔法は強力が故に人生で1度しか使えない。HUOはレオだけではない。まだ使うわけにはいかなかった。そこでリチャードは自己の特殊魔法をワット(ロバート)に受け継がせていた。
「お前みたいなヤツはいつか絶対失敗するって相場は決まってんだよ。くそ野郎。」リチャードは中指を立て、レオの攻撃を喰らった。
レオはジェシカとワットを追いかけた。レオとすれ違うようにシーザーが現れた。
「生きてたのか…シーザー…。」リチャードが言う。
「ああ…。何とかな」シーザーが答える。
「俺は…もう…駄目だ。この世界を解放するには…ロバートの力が必要だ…。シーザー…後のことは頼む…。」リチャードはそう言って息を引き取った。
「まったく手間をかけさせる。」レオがため息交じりに言う。レオはジェシカとワットを見つけ出していた。
「なぜあなたは私たちを狙うの?」ジェシカがワットを抱きかかえて言う。
「リチャードの思想とリチャードの能力は、我々の障害となる。それを早々に排除しなければならない。」レオが淡々と答える。
「つまり、あなたたちを殺すためにはワットの力が必要ということね。」ジェシカが強気に答える。そして顔に笑みを浮かべ、ワットに魔法を唱えた。
「特殊魔法:トランスポート」
ジェシカも特殊魔法の使い手であり、その能力は対象を瞬間移動させる能力である。対象は1つなので、今まで使えずにいたが、ジェシカは今、自分の命に代えてもワットを守ると心に誓い、ワットを祖母の元へと瞬間移動させた。
「これであなたは絶対にワットの居場所が分からない。」ジェシカが言う。
「小癪な…。」そういってレオはジェシカに魔法をかけ、ジェシカも息を引き取った。
ー現代ー
「その後、私は君を必死で探したのだがついに見つけることはできなかった。俺はてっきり…君もレオにやられてしまったんじゃないかって思った。リチャードの意思を絶やしてはならない。そう思って、俺はリベレイションズを復活させたんだ。本当に生きてて良かった…。」シーザーは泣きながら言う。
「泣かないでください。こちらこそ父さんの意思を絶やさずにいてくれてありがとう。この20年間奴らに見つからずに行動してたなんて、本当にすごい。」ワットは優しく答える。
「君を最後に見た時は、ほんの赤ん坊だったのに。立派になったな。」シーザーはまだ泣いている。
「ちょっと待て、ワトソン!お前はこいつらのことを信じるのか。」アインが口をはさむ。
「それに関しては信じてくれ、としか言えないな。」シーザーが答える。
「俺は信じるよ。何よりこの人は知らない人って感じがしないんだ。なんかこの人と話してると安心する…。」ワットが目を閉じて言う。
「なんだそれ。キャシーお前も信じるのか?」アインが尋ねる。
「私はワットを信じる。確かにこの人の言うことは信じられないけど、幼馴染のワットが信じることは私も信じることができる。」
「ありがとう、キャシー。」ワットはそう言い、さらに続ける。
「俺、魔法省止めるよ。」その言葉に2人は驚く。
「正気か、ワトソン!?出世コースを棒に振る気か?」アインが言う。
「ああ、俺は父さんと母さんを殺したレオを絶対に許さない。」ワットが言う。
「なら私も協力するわ。ここまで来たんだから最後まで付き合うわよ。」キャシーが言う。
「本当にいいのか?下手したら死ぬんだぞ。」シーザーが言う。
「そんなこと百も承知ですよ。」
「私も。」2人は答える。
「本当にありがとう。信頼の証にリベレイションズの残る幹部を紹介しよう。」シーザーはそう言って仲間を呼び寄せた。まず1人来た。
「幹部は全員で3人いる。まず君たちが倒したテイラー。そしてこの屈強な男がゼイラ・コールフィールド。そしてもう1人が…」シーザーが話してる途中にもう一人入って来た。
「コーネリウス・ハッチだ。」来たのはなんと、ワットとキャシーの魔法学校時代に先生だった。
「先生!?」ワットとキャシーは同時に言う。
「実はさっきはああ言ったが、実はワットの居場所は分かってたんだ。だが、君の意思なしに我々の活動の参加させるべきではないと思ってね。そこで私の部下のコーネリウスを先生として学校に潜り込ませ、君を見守っていたんだ。」シーザーが言う。
「ただ見守っていたわけではありませんよ。こっそりあなたたちを鍛えていたんです。こうなることを見越してね。まさか幹部を倒せるまで成長するとは思いませんでしたが…。」
ワットとキャシーは目を丸くする。初めての実戦でチカマツを倒せたのは、既にある程度のレベルに達していたからかとワットは納得する。
「そして新メンバーの君たちに、最後に言いたいことがある。我々のもう1つの目的を」シーザーはそう言って息を整えた。そしてゆっくりと口を開いた。
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