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10話「知りすぎている」

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「さっきの話の続きだが…」

「冒険者のリズ?」

「そうだ。協力してくれたなら何でも叶える」

まだミールが皇子だとは限らない。でも、可能性がある限り正体がバレる事は避けなければ。

「協力は無理かな。そこまでの権限は結婚と同時に破棄しちゃったから」

「破棄できるものなのか?権限は精霊との契約だと聞くが」

「権限の事をよく知ってるね。
誰が喋ったか知らないけど一定の条件を満たせば破棄できるんだよ」

いや、本当に誰だよ!その情報王国の極秘事項だぞ!?敵国にその情報伝わってるとか…普通にダメだろ!!

「ならリズと王族の関係を知りたい」

「…あのさ、何でも素直に知りたい知りたいって皇子としてどうなのさ」

僕は呆れ顔をする裏で冷や汗をかく。
この皇子はどこまで知っているのだろうか。

マスターと王族、そして宰相しか知らない情報であるのに、なぜリズと王族の関係を聞くのだろう。

変装魔法を誤魔化す方法を考えたいのに、考えられない。

「望む報酬は払う。…お前は帝国冷遇されたいわけではないだろう?」

「僕が王国で冷遇されていたみたいな言い方じゃないか」

「第二王子の結婚式に直系の王族が誰も来なかったんだ。余程のトラブルか、お前が疎まれているかのどちらかだろう」

ある意味どっちも合っているけどね。

「僕の事が大好きな弟の王子がいるんだけど、『兄さんの結婚式を見たくない』って家出したから、皆で探しに行ったんだよ。結婚式の最後の方で見つかったらしいけど、早い結婚式だったからね。最後に会えなくて残念だよ」

たしか弟の王子は三人いたよな。…いや、四人だったか?

「なら帝国での冷遇は耐えられないかもな」

「……その代わり衣食住は約束してね」

あとで入れ替わる事を考えたら最低限整った環境でないと、あの兄は持たないだろう。

「神に誓う」

「……リズは宰相に直接雇用されている冒険者であり、王族の護衛が任務だ」

「だからあの時…」

そう言うと皇子は何か考え始めた。

あの時?あの時ってどの時???

僕はその事で精一杯で忘れていた。

「そろそろ帝国に着きますよ」

変装魔法対策を考える事を。




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