例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間

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神の島

【薬の代償】

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「海は広いな」

「ですね~」

「海だな」

「ですね~」

 ガァガァと不気味な声を上げる黒い鳥。今にも雷と大雨が降りそうな灰色な雲。
爽やかな笑顔で僕を見る緑髪の男。

そして、真っ青な顔で震えているサルフィ。

「で、どういう状況?」

起きたら豪華客船の客室ってどんなミステリードラマ?

「さぁ?」

「どこに行こうとしているんだ?」

「リーデル島です」

「へー。なんで?」

「さぁ?」

 僕の質問に緑髪の男はクスクス笑いながら答える。
僕は一回目の時、この緑髪の男と城で何度かすれ違った事がある。

「お前は誰だ?」

「ルルです。貴方の臨時家庭教師です」

「へー」

学園の門でシュローズと会った後の記憶がない。

(まぁ薬が切れて暴れたんだろうな)

だから学園入学が取り消しになり、こんな名も知れない孤島のような島に送られたのだろう。

「はぁ…」

(シナリオが大分変わった。まぁ物語の根本を揺るがすような変化はないだろうけど…)

ゲームで使われるシナリオは何十年も何百年も前から続く邪悪な存在との対立が主だ。

(僕は『お前らはまだ知らない。本当の闇をっ!』的な事を言う為だけの存在だし)

そう考えると逆にお気楽に悪道を進んで良いんじゃないか?

(むしろ僕、ここまでやる必要ある?)

勝手に生きていれば勝手にシナリオが皆を殺していく。
僕の意志なんて関係ない。僕は所詮悪役公爵の役目。

「海が綺麗だなー」

(何だかやる気というか…力が湧いてこない)

 僕はお花畑で寝ているような、ふわふわした気持ちになっている。

「あれがリーデルかー」

 赤い十字架の男神像が見える。
瞳には血のように赤く、巨大な宝石が詰められている。

まだ距離があるこの場所からでもその像の大きさが分かるほどだ。

「凄いですね~」

「なー」

 僕はただぼーっと像を見ていた。
だけどその時、微かに聞こえたんだ。誰かの声が。

「…今何か言ったか?」

「私がですか?」

「…気のせいだ」

僕は欠伸をして呑気に島を見た。

(あれ?僕、誰だっけ…?)
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