例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間

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中等部

【公爵】

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「どこまでルイとリナを苦しめるつもりだっ!!」

 旦那様は机を強く叩くと、悔しそうに歯を食いしばり、その瞳は憎悪に染まっていた。

「ルイ様に何か?」
 
 俺の質問に旦那様は黙った。
そして、ほんの少しの時間を空けて、旦那様は無表情に言う。

「…ロイス皇子がルイに危害を加えた」

「それは…」

 俺は顎に手を当てて考え込む。

 ルイ様の護衛に俺は我が国の皇室と絶対に縁がない、奴隷獣人を雇った。
もう一人は島国の子供。
 そしてルイ様は皇子と面識がない。

(親子揃ってここまで問題事に巻き込まれるのは、凄いなぁ)

「ロズワール…」

 旦那様はそう呟いて一つの写真を見ていた。

 俺が幼い頃、皇室は貴族の言いなりだった。
だけど数十年前、ロズワール皇子が皇帝に就くと同時に、貴族は権力を弱め、皇帝が貴族を従える様になった。
その時に力を貸したのが、現公爵当主の人達だ。

(それなのに…)

 ロズワール皇帝は旦那様…レイオット様を裏切り、傷つけた。
親友だったのに。

それ以降旦那様はロズワール皇帝を憎んでいる。

「…ルイをあの島へ送れ」

「クイアも、ですか?」

 クイアが以前住んでいた島国、リーデル島。

(…神の島)

「クイアはルイの代用なのだから離れさせられない。
あの子も分かっている事だ。」

 俺は少し、ほんの少しクイアに同情する。

(せっかく逃げられたのに可哀想に)

 あの島国ならば皇帝も手は出せないだろう。
それに、神月祭に対しても都合が良い。

「わかりました。その様に手続きしておきます」

「頼んだぞ」

(ルイ様の教育が遅れるのは嫌だなぁ)

 ただでさえ遅れているルイ様の勉強をこれ以上遅らせるわけにはいかないと思った俺は、皇室嫌いの優秀な友人に連絡を取った。

 水晶には綺麗な緑色の長髪を持った男が現れる。
 
「『どうしたの?君が連絡なんて珍しい!』」

「『今とある公爵の部下やってるんだよ。それでお前の力が必要になったから連絡した。OK?』」

「『敬虔な信者だった君が、生臭い公爵の部下、ねぇ?で、どこの公爵?場合によっては縁を切るよ!』」

 俺は世間のカロアス公爵の評判を知っている為、言い淀む。

「『か、カロアス公爵』」

「『…へぇー!良いよねカロアス公爵!!良いよ、引き受ける!!』」

「『いや、最後まで聞け!
リーデル島でカロアス公爵子息に勉強を教えてあげて欲しいんだ』」

「『リーデル…島…』」

 リーデル島はここから船で一週間は掛かる。それに向こうには独自の文化や法律がある。

楽な仕事ではない。

「『いいよ。子息とは縁を感じる』」

「『!ありがとう!』」

 友人はなぜかとても喜び、すぐに準備をしてくれるらしい。








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