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傾国の女 2

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「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」

 その悲鳴が聞こえたのは丁度夜中と言える時間帯だった。

「魔物!?」

 私は魔石をはめた杖を持ってテントから出た。
このテントはレビル卿が私だけに用意した物だ。

「王女様、見てはいけませんっ!」

 私は勇者に剣を構えるレビル卿に驚いた。

「どうしたのです!?」

「……勇者が、食べたのです」

 …暗くて見えにくいが、確かに勇者は食べていた。
あの勇者は一週間に一人、人間を食べるという。そして3日前、私達に隠れて村人を食べたばかりだった。

「だれを」
 
 恐怖で声が上手く出ない。私は勇者が人間を食べる事をずっと知っていた。だけど言わなかった。ただ観察していた。

それは人類が魔族に勝つ為の尊い犠牲だと思っていたから。

でも、それは…

「……魔法使い、です」

  私達以外が犠牲者だったから、だ。

「うそ…でしょ」

「っ本当、です。俺も、信じられません…。なんで…」

 私はレビル卿を疑った訳ではない。私は今、いや…これまで、何をしていたの。

『それは人類が魔族に勝つ為の尊い犠牲だと思っていたから』

 そんな理由で私は、国民を見殺しにしていた。

(どうしてっ、なんで!!)

「ゆる…ない…」

「?」

 勇者が何かを言っている。

「レビル卿、勇者は、」

「王女様、俺が勇者を止めます。だから近くの町まで逃げてください」

「!?何を言っているの!?」

 レビル卿は知らないのだ。あの勇者が人間を食べる理由を。

「え?」

(食べる理由…?そんなの私も知らないわよ!!)

「ちがっ」

「王女様?ッ!どうしました王女様!!」

 酷い頭痛に耐えきれなくて私は倒れた。

 レビル卿が私に駆け寄ってくる。

(私は知っている。昔に何かで見たんだ。でもどこで…?)

【ヤツキはヤヨウを抱きしめ、食べた。全ての力を手に入れた彼は全てを失い、その悲しみからーーー】

「ニ、ホン…」

 勇者がレビル卿を襲おうとしている。

『おうじょさま』

 小さいレビル卿が私に微笑む。

これはきっと、走馬灯なのかもしれない。

(あぁ…貴方は死んではダメなの…)

 私はレビル卿の前に出た。

「ゆるさない…おれの…おれのレビルなのに…!」

【レビル卿を失ったヤツキはそれでも前に進んだ。全てはヤヨウに会う為に】

 首から大量に流れる血に、私は助からない事を悟った。

(私はこの世界でも誰かに殺されるのね)

「おうじょ、さま…」

 力なく座り込むレビル卿に私は微笑む。
そして思う

(あれ?私、推し救ってね?)

と。

「王女様を離せっ!!」

 流石私の推し。すぐに意識を戻し私を連れて森へ逃げる。

(うひょ~~!お姫様抱っこ来た~~!)

 苦しくは早く記憶が戻らなかった事かっ!

「れ、レビル…」 

 せめて最後は推しの為に、最重要事項を教えてあげよう。

でも、その前に…

「貴方のこと(売った)……(薄本)ごめん…(売上)微妙…」

「割りと悲しい」

「でも…生きてね…私の(騎士ではないし)……なんだ…ろう?」

「王女様、最後まで天然ですね」

 霞んできた視界に死ぬまで長くない事を知る。
もっと色々話したい。もう少し前に思い出していれば良かったのに。 

そうすれば皆幸せになれたかもしれないのにな~。

「可愛い可愛い可愛いーーー」

 勇者の声が聞こえる。設定通りならそろそろ正気に戻っているはずだ。

あ、最重要事項を忘れていた。

「レビル…最後に…いいか…しら…?」

「なんでしょうか?」

 薄い涙目になっているレビルに親指を立てたくなる。

「貴方…軟膏は…もってる…?」

 あのドエロ軟膏を。

「え、えぇ。王様から賜りました物があります。」

「それは処女を淫乱のビッチに、させるこうかがあるの…しょやはできないようにね」

「え?なんて??」

 泣きそうになる推し可愛いマジ天使。

(あー…死にたく、なかったなぁ)

 でも死ぬから、悲しい。

次の人生はせめて老衰か自死が良いなぁ…。










『傾国の王女を殺せっ!』

『あの王女が私の婚約者をたぶらかしたのよっ!!』

『『あの王女を殺せ!!』』

『お前はもういらん。処刑か勇者パーティーへ付いていくか選べ』

 かなしくてもいつもたすけてくれた。

『ずっとまもります!おうじょさま!!』

『絶対に守ります。王女様』

 さよなら。わたしのたいせつな…とてもたいせつな、なにか。





 
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