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嫉妬王子

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【サムラクト王国第三王子サリー・クローズウェル・サムラクト。
王妃の二番目の息子であり、双子の兄である。
王妃はリバーナ王国ロロリア公爵の親戚筋であり、ロロリア公爵特有の赤を受け継いでいる。

リバーナ王国賢王ロズバルド・ルーリ・リバーナからも注目される魔法使い見習いであり、炎の魔法を得意とする。

そして妹は水の魔法を得意とし、合成して水蒸気爆発を起こす事がある。】

スノーヴァは妖精達の談笑を覚えていた。
なので隣国は勿論、各国の要人の情報は全て知っている。

決して努力などしていなく『へ~そうなんだ~』と豆知識程度の感覚のスノーヴァだが、各国にそれが知られれば我先にとスノーヴァを欲しがり、ある種のモテ期になるだろう。

「よ、よく分かったな」

サリー王子が真っ赤にしながら俯く。

バリチェロが『サリー王子』と呼んでいたからサリー王子なのか、と決めていたスノーヴァだが、スノーヴァ以外は驚いていた。

「よく分かったなぁ…」

シルフィが緑の瞳を大きく開く。
スノーヴァに結果として答えを教えたバリチェロもその事に気が付かないのか驚いている。

「お前ら馬鹿なのか…?」

スノーヴァはつい思った事を口に出していた。


†††

「う、うぅ…」

「お母様!」

真っ赤なキングサイズベッドで魘されている女がいた。
女は【血濡れ公爵】と名高いロロリア公爵の長女だった者だ。

「ミィファルト、貴方は王になる者よ。泣いてはいけません。」

「ですが…」

女に寄り添っていた少年 ミィファルトはそれでも涙を流した。

「あの忌々しき聖女の子供に王座を渡してはいけません。尊き血筋を持つ者でなければいけません。」

「はい…お母様」

「バルド…あの女が居なければ私の物だったのに」

女…第一側妃 ミフィール・ルーリ・ロロリアはぼんやりと天井を見て呟いている。

「絶対許さない…」

そう言うとミフィールは再び眠りについた。

ミィファルトは爪を噛んだ。

「狡い。狡い狡い狡い狡い狡い狡い。
魔力無しじゃ無かったのかよ!死ね!消えろ!」

ミィファルトは近くにあった花瓶を投げて割った。
普段大人しいミィファルトでは想像つかない程荒れていた。

「王子!今此方で大きな音がっ」

「狡い狡い狡い狡い狡い」

扉の前で護衛していた騎士が音に気が付き中に入る。

「お、おうじ?」

「…………片付けとけ。僕はお兄様に会いに行く」

騎士は急ぎ敬礼をとった。
ミィファルトが騎士を通りすぎる。

「流石ロロリア公爵のお孫様…怖っ!」

騎士はミィファルトが去った後ちまちま花瓶を片付けた。

†††

「僕は可愛くて馬鹿な弟。僕は可愛くて馬鹿な弟。僕は可愛くて馬鹿な弟」

ミィファルトは鏡の前で何度もそう呟く。

「僕が王になったら全員打ち首だ」



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