勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

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第54章

異世界の……(9)※

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「医者の来訪も困るし、リニー少年にも、護衛の騎士にも……しばらく部屋には入ってこないように伝えておいてくれないか?」
「マオ……」
「みんなが出ていったら、部屋に結界を張りなおしておくから、心配はない」

 しばらくの間、ひとりになりたい、とお願いしてみる。

「……わかった」

 返事まで少しの間があったが、ドリアはオレの希望に素直に頷いてくれた。

「わたしは、次のために、溜まった仕事を片づけなければいけないが、マオとフレドリックは疲れただろう。今日はゆっくりと休むがいい」

 これから仕事をするというドリアの胆力、体力、精神力には正直驚いたし、見直した。

 まあ、その原動力が「次のため」って……。次って、ナニだ? ちょっと怖いぞ。

「ドリア……がんばれよ……あと、ありがとう……その、色々と……」
「うん。がんばるぞ」

 オレの言葉に、ドリアの声が一段階高くなる。
 すごく張り切っているよね。

「王太子殿下……ご迷惑をおかけしました……」

 フレドリックくんの頭を下げる気配が伝わってくるよ。

「迷惑? そんなことはないぞ。まあ、次にやるときは、もうちょっと、優しくして欲しいが、あれはあれで、刺激的でとてもよかったし……」
「……いえ。あのようなことは、もう二度と……」
「そんな、寂しいことを言うな。マオには挿れられるよりも、絶対に、挿れたいのだが、フレドリックにならいくらでも挿れられてもいいぞ」
「…………」

 ちょ、ちょっと、ドリア!
 なんてことを言っているんだ!
 フレドリックくんが完全に固まってしまったよ!
 今、自分が何を言っているのか、わかっているのか! 自覚はあるのか!

 衝撃的なドリアの言葉に思わず顔を上げると、頬を上気させ、恥ずかしそうにしているドリアの姿が目に入る。

 キラキラはいつものことなのだが、整った容貌に艶めいた色気が加わって、なんとも言えない雰囲気を醸しだしている。

 まずいよ。これは……本当に、新しい世界が拓かれてしまったようだ。

 フレドリックくんは……というと、ベッドに額をくっつけている。見事な土下座だ。

 勢いあまって襲ってしまって、翌日、相手に責任をとります……とか言ってそうな構図だ。

 こ、こ、これが、異世界か!

 異世界なんだよな!

 さすが、多夫多妻の世界だ……。

 怖いよ異世界!

「改めて話し合わなければならないことはあるが、今でなくともよいだろう。急がないと、仕事は溜まる一方だからな。とにかく、ふたりは身体を休めろ。また、三人でやろうな!」

 呆然としているオレと、とてつもなく落ち込んでいるフレドリックくんに、ドリアは爽やかな笑顔とともに、残酷なトドメの言葉を投げかける。

 そして、軽やかな足取りで、ドリアは寝室を後にしたのだった。

「フレドリックくん……」

 長い、長い、沈黙の後、オレは土下座したまま固まってしまっているフレドリックくんに声をかける。

 オレの声を耳にしたフレドリックくんは、のろのろと顔を上げるが、目は伏せたままだ。

 オレもまともにフレドリックくんの顔を見ることができなかった。

 再び、部屋に重苦しい沈黙が訪れる。

「勇者様……」
「なんだ?」
「お体の具合はいかがですか? その……どこか痛みとか……ご気分は?」
「大丈夫だよ。回復した。フレドリックくんは?」
「はい。わたしも大丈夫です」

 本当は、腰とか、アソコとか、アッチも痛かったり、ヒリヒリしてたりするんだけど、あれだけのことをしたのだから、そうなってもおかしくない。

 それらの痛みは、行為の結果、付属的に発生するものであって、やりすぎた後の正常な反応だ。異常事態ではない。

 回復魔法もかけたので外傷はない。ただ、身体が痛みを覚えているだけだ。

 そもそもアソコの状態など、馬鹿正直に申告する必要もないだろう。

「勇者様、申し訳ございませんが、本日は……」
「うん。わかってる。ゆっくり休め。オレもひとりになりたい……」

 フレドリックくんは緩慢な動きでベッドを降り、扉へと向かって歩き始めて……そのまま扉に激突する。

 ゴチン、という、ものすごく大きな音がした。

「ふ、フレドリックくん!」
「あっ、申し訳ございません。少し……考え事をしておりまして、扉があることに気づきませんでした」
「だ、大丈夫か?」

 かなりの重症だ。
 フレドリックくん――シーナの記憶を持つフレドリックくん――にとって、これはかなり辛い現実だろう。

「……かすり傷です」

 いや、オレが心配しているのは、キミの額よりも、メンタルな方だよ!

「勇者様、失礼いたします」

 それだけを言い残し、フレドリックくんは立ち去った。
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