勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

文字の大きさ
上 下
293 / 339
第51章

異世界のホウレンソウはイマイチです(3)

しおりを挟む
 宰相サンはお茶をオレたちに勧めながら、すごく嫌で迷惑なんですけど……というのを全身全霊でアピールしている。

 テーブル席にはオレ、宰相サン、そして、聖女サマが座っている。

 なぜか、聖女サマはわざわざオレの側に椅子を移動させて座っている。

 ちょっと……スペースは平等に、三等分しようよ。狭いよ……。

 引き続き、オレの後ろにはフレドリックくんとリニー少年が控えている。

 リニー少年が低い唸り声をあげて、聖女サマを睨んでいるのが、今までとはちょっと違うけどね。聖女サマに敵意むきだしなのが怖い。
 ご主人様を奪われそうになって威嚇しているワンコみたいだ。今にも噛みつきそうだよ。

 宰相サンの背後には、騎士団長サンと彼の息子二名がいる。
 三人は壁になりたいようで、見事に気配を消していた。
 ラーカス家の壁同化率、すごく高い。
 フレドリックくんも気配を消すのが上手かったけど、この三人もなかなかだ。存在感ありすぎる騎士団長サンも、今や普通の壁になっているよ。

 そして、聖女サマの背後には、新しく就任した大神官長さんが立っていた。

 気配を消そうが、なにをしようが、とにもかくにも、ガゼボ内の人口密度が高すぎるよ……。

 お茶の準備が整い、再びガゼボに結界が張られたのだが、さりげなく結界が先程よりも強力なものになっている。
 最大出力に加え、宰相サンも自前で結界を展開していた。

 これは……推測するまでもなく、聖女様対策だろう。

 オレも念のため、さっきよりも強力な結界を展開しておこう。

 それに気づいた大神官長さんが、不快感もあらわに眉を潜めるが、だからといって、結界を解くわけにはいかない。

 聖女サマはそれに気づいていないのか、どうでもいいことと思っているのか、特に反応らしい反応はない。

 まあ、確かに、聖女様相手にこの強固な結界は失礼かもしれないが、なにしろ、相手があの聖女様である。

 いつなんどき、どんなドッキリ失言が飛びだすかわからないからねぇ。

 ガゼボの外で待機している騎士たちには聞こえない方がよいだろう。それがお互いのためだ。

「それで……どういったご用件でしょうか? 大神官長様がついていながら、先触れもなく、聖女様が大神殿を抜けだして、城内に乱入されるとは、よほどの事情がおありのようですね」

 つまらない用事だったら、ぜったいに許さないぞ、と宰相サンの碧い瞳が語っている。
 そうだそうだ!
 その勢いで、さっさと追い払ってください!

「えっと、先日のお詫びと、神託が誤って伝わってしまった件についてのご報告と、今後の対策をお伝えにきました」

 宰相サンの殺気に怯むことなく、聖女サマがにっこりと微笑む。聖女サマってば、無駄にキランキランしていて……眩しい。

 聖女サマは頬を朱に染めながら、そろそろとオレの方に手を伸ばしてきた。ちょこんと手を添えてきたので、オレはしっかりと握り返す。

 ……変なところを触られないように、手はちゃんと握っていた方がいいだろう。

 なぜか、聖女サマの輝きが五割増した。

 ……う、うん……? ものすごく喜んでくれたみたいで、オレも嬉しいな。

 頼むから、じっとして、騒ぎを起こさないでくれよな。

「聖女様……そのようなことには、下級神官をお使いください。聖女様が自ら動く必要は全くございません」

 背後に控える大神官長を睨みつけながら、宰相サンが厳かに告げる。

「それに、そういうことは、勇者様ではなく、わたくしにおっしゃってください。勇者様は異世界の御仁。国賓です」
「宰相閣下は、謝罪もことづてでないといけない、とおっしゃるのですか?」
「はい。そうでございます。大神官長もそう申し上げたのではないのですか?」
しおりを挟む
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...