勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

文字の大きさ
上 下
283 / 339
第49章

異世界の書類は間違いだらけです(7)

しおりを挟む
 オレが異世界に召喚されて四十六日目。

 ドリアの執務の手伝いは昨日でいったん終了になった。

 処理待ちの書類はまだたくさん残っていたから、今日も手伝ってあげたいところなんだけど……あまり甘やかせすぎるのもよくない、と、フレドリックくん、リニー少年、そして書記官たちまでもが、手伝いの終了をオレに宣言してきたのである。

 ダメダメっこちゃん全開だったドリアも、ずいぶんと書類処理に慣れてきた。
 ドリアはやらないだけで、やればできる子だからね。

 がんばったかいあって、フレドリックくんの足元には及ばないけど、この国のことをよく知らないオレよりは、できるようになっている。

 ドリアがそこまで成長したので、最初の頃に紛れ込んでいた不備だらけの書類は、書記官たちがチェックして返却するようになったということも大きい。

 つまり、オレたちがやっていた仕事を書記官たちがやりはじめたということだ。

 そろそろドリアがちゃんとひとりで書類の処理ができるようになったか見定めないといけない時期になったってことだよね。

 それに……

「あまりこちらに長居しすぎると、宰相閣下からそんなに執務がやりたいのなら王配にならないかと打診されますよ」

 と、フレドリックくんに恐喝……いや、忠告されたので、オレはさくっと断念した。

 もっとフレドリックくんの講義を聞いていたかったし、ドリアと同じ空間にいて、一緒に作業をしたかったんだけどね。

「マオとの共同作業だな!」

 と、ドリアはこの五日間の執務に大変満足されていたようだが、ちょっと意味が違うと思う。

 というか、すっかり『王太子様』になっちゃって、以前のようなガツガツしたところがなくなったのは……ちょっぴり残念だ。

 リニー少年の情報によると、十五人の奥様方とよろしくやっている宰相サンが、色々と王太子殿下に『勇者様を確実に堕とす方法』とやらを伝授しているらしい。

 どうせ、ろくなことを教えていないのだろうが、はっきり言って、迷惑極まりない。
 オレをダシに使わないでほしいよ。

「マオは仕事のできる『オトナなオトコ』に弱いと聞いた。わたしもそういうオトコになってみせるから、フレドリックと大人しく待っていてくれ。いいか、フレドリック以外はだめだぞ! フレドリックが許したとしても、わたしは許さないからな!」

 とかもう、わけのわからないことを言う始末だ。

 そもそも、『オトナなオトコ』はそんな残念なセリフを発することはないと思うよ。そこから間違っているからね。

 宰相サンの定義する『オトナなオトコ』
と、ドリアが解釈した『オトナなオトコ』と、オレが好きな『オトナなオトコ』が同一だとは限らない……なんとなく言いそびれてしまった。

 ただ、これはちょっと……働かせすぎでドリアの判断能力が落ちているのではないだろうか? と心配になった。
 フレドリックくんも同じようなことを思ったようで、仕事は日付がかわるまでにして、休息はしっかりとりましょう……ということになった。

 眠たそうにしているのに、必死でオレたちにつきあっているリニー少年も視野に入れての判断だ。

 子どもは早寝早起きが大事だからね。
 夜更かしなんかさせられないよ。

 早く仕事を片付けたいドリア、仕事が大好きなオレとしたら、徹夜もありだけど、書類処理の指揮権をがっちり握っているフレドリックくんの言うことには逆らうことができない。

 継承権第二位モードになっているフレドリックくんは、カッコいいくらいに傲慢で、惚れ惚れする支配者だった。

 こんなカッコいいフレドリックくんを不特定多数に見せちゃだめだ。
 絶対に、王太子派と元王太子派ができてしまう。

 その辺りのことは、リニー少年も宰相サン厳選の優秀な書記官たちも心得ているんだろうけど、このことは内密にするように、とオレの方からも念押ししておいた。

 だって、みんながフレドリックくんに惚れたら困るからね。

 リニー少年ってば

「勇者様、そのように心配なさらなくても大丈夫です。この部屋にいる者は、若干一名を除きまして、みな、口が堅い者ばかりです。フレドリック様の雄姿が漏れることはございません」

 と、自信満々に宣言する。
 いや、まあ、その若干一名が致命的とは思うのだけど。そこはあまり触れたくないね。

「フレドリック様のことを漏らせば、騎士団長様に家族まとめて消されることぐらい、みな知っております」
しおりを挟む
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...