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第49章
異世界の書類は間違いだらけです(6)
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フレドリックくんの手から離れた書類は年配の書記官のところに運ばれ、返却理由がかかれた紙と共に、提出者へと戻される。
最終チェックはフレドリックくんの役目で、その時点で見つかった間違いは、異世界のオレにも、そして、サボってろくに知識もないドリアにもわかるように、丁寧な説明がはじまる。
フレドリックくんの説明はわかりやすくて的確で、書記官たちも手を止め、感心したように聞き入っている。
「……という理由から、この書類は返却です」
と話をしめくくり、書類を書記官へと渡す。
さすが、フレドリックくんだ。
思わず拍手したくなったよ。
書類に目を通す真剣な横顔、書記官に指示をだすときの少しだけ尊大な態度は、うっとりするくらい美しい。
そんな手厳しいフレドリックくんの検閲を無事にクリアできた書類が、いよいよドリアの手元に渡る。
書類を検討するのに必要な資料や書類は、フレドリックくんの指示で、書記官たちが探し出してきて用意されている。
添付されていた資料に不備がある場合は、オレの指摘と、フレドリックくんの「返却」という言葉で片付けられていく。
ドリアは書類を読みながら、資料をめくって、内容を吟味する。
フレドリックくんチェックもあるし、なんといっても、宰相サンが事前に振り分けているので、ドリアの一存で決定して問題のないものばかりらしい。
今更であるが、ドリアの手にある書類は、ドリアが目を通さずとも、サインさえすればそれで終了する段階にまでなっている。
だが、ドリアはオレたちに教えられたとおりに書類をチェックし、資料を確認して、問題がないと判断してからサインをするようになった。
(うん。やればできる子じゃないか……)
書類を読んでいたドリアの視線が止まった。
「フレドリック」
「なんでしょうか?」
「この書類だが、サインしないといけないのか?」
「と申されますと?」
「いや……ちょっと、この事業にこんなにも予算が必要なのだろうか? 内容と申請された金額を比べると、どうも……」
だんだんと声が小さくなり、最後にはごにょごにょと言葉に詰まる。
「だそうだ」
「承知いたしました。予算の縮小、もしくは、納得できる資料の再提出を要請いたします」
フレドリックくんの言葉をひきついだ書記官が、ドリアから書類一式をひきあげていく。
「間違いのない書類だったのに、サインしなくてもよかったのだろうか……」
「次に奏上されるときは、王太子殿下も納得される内容になっているでしょう。これは私見ですが……確かに、申請している予算には余裕がありすぎる、とは思っていました」
「わたしを試したのか?」
ドリアの眉がひそめられる。
「いえ。通常は、ああいった書類が王太子殿下の元に集まります。それにサインをするか、しないかを判断されるのは、王太子殿下ご自身でございます」
ドリアは真剣な顔で話を聞いている。
「じゃあ、こちらの書類だが、申請されている予算を増額して、もっとしっかりしたものを完成させるように指示したい場合は、どうしたらよいのだ?」
机の脇に避けていた書類をドリアがおずおずと差しだす。
「孤児院の増設ですか……」
「そうだ。さっきの施設よりも広い建物なのに、こちらの方が予算が少ない。これでは、冬が寒いと思うのだ。部屋も狭いし」
「承知いたしました。宰相閣下にお伝えし、指示を仰ぎます」
「よろしく頼むぞ」
といったようなやりとりを挟みながら、オレたちは時間をかけて、書類を片づけていく。
フレドリックくんの辛抱強い解説のおかげで、オレもこの国のルールをおぼろげながらも理解しはじめる。
ドリアも書類の読み方、さばき方のコツというものがわかってきたらしく、書類を読み始めてからサインを書くまでの間がだんだんと短くなってきた。
荒れていた天候も快復し、心配されていた大きな水害もギリギリのところで発生しなかったという。
いやあ、よかったよ。
ここで自然災害とかになっちゃったら、きっとドリアでは処理しきれなかっただろうね。
オレたちの手伝いは五日間つづいた。
最終チェックはフレドリックくんの役目で、その時点で見つかった間違いは、異世界のオレにも、そして、サボってろくに知識もないドリアにもわかるように、丁寧な説明がはじまる。
フレドリックくんの説明はわかりやすくて的確で、書記官たちも手を止め、感心したように聞き入っている。
「……という理由から、この書類は返却です」
と話をしめくくり、書類を書記官へと渡す。
さすが、フレドリックくんだ。
思わず拍手したくなったよ。
書類に目を通す真剣な横顔、書記官に指示をだすときの少しだけ尊大な態度は、うっとりするくらい美しい。
そんな手厳しいフレドリックくんの検閲を無事にクリアできた書類が、いよいよドリアの手元に渡る。
書類を検討するのに必要な資料や書類は、フレドリックくんの指示で、書記官たちが探し出してきて用意されている。
添付されていた資料に不備がある場合は、オレの指摘と、フレドリックくんの「返却」という言葉で片付けられていく。
ドリアは書類を読みながら、資料をめくって、内容を吟味する。
フレドリックくんチェックもあるし、なんといっても、宰相サンが事前に振り分けているので、ドリアの一存で決定して問題のないものばかりらしい。
今更であるが、ドリアの手にある書類は、ドリアが目を通さずとも、サインさえすればそれで終了する段階にまでなっている。
だが、ドリアはオレたちに教えられたとおりに書類をチェックし、資料を確認して、問題がないと判断してからサインをするようになった。
(うん。やればできる子じゃないか……)
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「フレドリック」
「なんでしょうか?」
「この書類だが、サインしないといけないのか?」
「と申されますと?」
「いや……ちょっと、この事業にこんなにも予算が必要なのだろうか? 内容と申請された金額を比べると、どうも……」
だんだんと声が小さくなり、最後にはごにょごにょと言葉に詰まる。
「だそうだ」
「承知いたしました。予算の縮小、もしくは、納得できる資料の再提出を要請いたします」
フレドリックくんの言葉をひきついだ書記官が、ドリアから書類一式をひきあげていく。
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「次に奏上されるときは、王太子殿下も納得される内容になっているでしょう。これは私見ですが……確かに、申請している予算には余裕がありすぎる、とは思っていました」
「わたしを試したのか?」
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数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
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