勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

文字の大きさ
上 下
267 / 339
第47章

異世界の所有の印は激ヤバです(4)

しおりを挟む
 とまあ……ドリアが泣き出したときはどうなるかと思ったのだが、四十五分の時間制限があるお茶会は無事に終了した。

 お茶を飲み、ケーキを食べて……フレドリックくんの講義と、ドリアの「書類が一向に減らないのは、どういう呪いなのだ」という愚痴を聞いていたら、四十五分なんて、あっという間に終わってしまった。

 王太子殿下づきの近衛騎士がガゼボに迎えにきたとき、ドリアは目を大きく見開き、

「嘘だ! まだ四十五分ではないだろう! 十五分くらいではないのか!」

 と、真顔で抗議の声をはりあげていた。

 いや、そんなはずはないだろう。

 きっちり四十五分後、時間厳守で近衛騎士は迎えに来たからね。

 そもそも、最初の十五分くらいの間、ドリアは泣いていたからね……。実質三十分のお茶会だった……ということは、フレドリックくんもオレもそして、リニー少年も黙っていた。

「……お迎えにあがりました」

 ベテランの近衛騎士が言葉少なにドリアを急かす。
 若手と違って、凄みがある。
 そういう人を迎えに選んだんだろうな。

「仕事中の四十五分はものすごく長いのに、マオといたら、一瞬で終わってしまう。なぜなのだ!」
「さあ……なぜなんだろうね」

 オレはドライフルーツの入ったクッキーをポリポリかじりながら、溜息をつく。

 ドリアがすくっと立ち上がったので、フレドリックくんとオレも席をたつ。

「マオ……」

 目を潤ませながら、ドリアはオレの右腕をとる。

「とても楽しい時間だった」
「うん。そうだね」

 ドリアの艶っぽい瞳にくらくらしながらも、オレは理性を総動員して、なんとかふみとどまる。

 望んでもいないのに、『ハラミバラ』のスキルが勝手に発動しようとしている。

 勘弁してほしい。

 空気を読めよ『ハラミバラ』!

 まあ、女神様にヒトの都合など理解できないだろうが。

 ホント、ここでオレがドリアに襲いかかったら、宰相サンになにをされるかわからないので、必死に我慢する。

 もっと駄々をこねるかと思ったのだが、ドリアはあっさりと茶会の終了を告げる。

 あ……迎えに来た近衛騎士さんたちが驚いているぞ。驚きが顔にでちゃってるぞ。動揺が態度にでているぞ。

「次は……いつ会えるのか、全くわからないのだが」

 へにょんと眉尻を下げて、今にも泣き出しそうな顔でドリアはオレを見つめる。

(あ……だめだ。そんな、顔で見ないでくれ……)

 心臓が破裂しそうなくらい、鼓動がどんどん早くなる。
 優しく抱きしめてあげたい、がんばるんだよ、と励ましのキスを贈りたい。

(それくらいなら大丈夫)
(いやいやまずいって)
(ドリアの成長を妨害してどうするんだ)
(いっそのことやっちまえよ)
(女神様もそれを望んでるぞ)
(ここで逃げるな。男がすたるぞ!)

 と、オレの脳内会議が大混乱している。

 オレがなにを考えているのか全くわかっていないドリアは、万感の思いをこめてオレを見つめてくる。

 もう、今生の別れモードにスイッチが入ってしまったようだ。
 
「書類が片付くまでは、フレドリックにマオを預けておく。フレドリックだから預けるのだ。フレドリックは、絶対に、マオとわたしを傷つけることはしない。だが、それ以外はだめだぞ! それ以外の奴らが、マオに手をだそうとするなら、まずは王太子を倒してからにしろ! と言うんだぞ」
「…………」

 これによく似たフレーズをつい最近、聞いたような気がするのだが……。

 どうしたことか、フレドリックくんもドリアも、ものすごく好戦的になっている。
 まじで、「刺したり刺されたり」な被害者がでてきそうで怖い。

「わたしの言っている意味がわかっているのか?」
「……たぶん、理解できていると思う?」

 オレの頼りない返事に、ドリアはがっかりしたように首を横に振る。

「とにかく……フレドリックから離れるなよ」

 そう言うと、ドリアは身を屈め、オレの手のひらに「チュッ」と大きな音をたててキスをすると、ダッシュでガゼボから立ち去ったのである。
しおりを挟む
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

処理中です...