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第47章
異世界の所有の印は激ヤバです(4)
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とまあ……ドリアが泣き出したときはどうなるかと思ったのだが、四十五分の時間制限があるお茶会は無事に終了した。
お茶を飲み、ケーキを食べて……フレドリックくんの講義と、ドリアの「書類が一向に減らないのは、どういう呪いなのだ」という愚痴を聞いていたら、四十五分なんて、あっという間に終わってしまった。
王太子殿下づきの近衛騎士がガゼボに迎えにきたとき、ドリアは目を大きく見開き、
「嘘だ! まだ四十五分ではないだろう! 十五分くらいではないのか!」
と、真顔で抗議の声をはりあげていた。
いや、そんなはずはないだろう。
きっちり四十五分後、時間厳守で近衛騎士は迎えに来たからね。
そもそも、最初の十五分くらいの間、ドリアは泣いていたからね……。実質三十分のお茶会だった……ということは、フレドリックくんもオレもそして、リニー少年も黙っていた。
「……お迎えにあがりました」
ベテランの近衛騎士が言葉少なにドリアを急かす。
若手と違って、凄みがある。
そういう人を迎えに選んだんだろうな。
「仕事中の四十五分はものすごく長いのに、マオといたら、一瞬で終わってしまう。なぜなのだ!」
「さあ……なぜなんだろうね」
オレはドライフルーツの入ったクッキーをポリポリかじりながら、溜息をつく。
ドリアがすくっと立ち上がったので、フレドリックくんとオレも席をたつ。
「マオ……」
目を潤ませながら、ドリアはオレの右腕をとる。
「とても楽しい時間だった」
「うん。そうだね」
ドリアの艶っぽい瞳にくらくらしながらも、オレは理性を総動員して、なんとかふみとどまる。
望んでもいないのに、『ハラミバラ』のスキルが勝手に発動しようとしている。
勘弁してほしい。
空気を読めよ『ハラミバラ』!
まあ、女神様にヒトの都合など理解できないだろうが。
ホント、ここでオレがドリアに襲いかかったら、宰相サンになにをされるかわからないので、必死に我慢する。
もっと駄々をこねるかと思ったのだが、ドリアはあっさりと茶会の終了を告げる。
あ……迎えに来た近衛騎士さんたちが驚いているぞ。驚きが顔にでちゃってるぞ。動揺が態度にでているぞ。
「次は……いつ会えるのか、全くわからないのだが」
へにょんと眉尻を下げて、今にも泣き出しそうな顔でドリアはオレを見つめる。
(あ……だめだ。そんな、顔で見ないでくれ……)
心臓が破裂しそうなくらい、鼓動がどんどん早くなる。
優しく抱きしめてあげたい、がんばるんだよ、と励ましのキスを贈りたい。
(それくらいなら大丈夫)
(いやいやまずいって)
(ドリアの成長を妨害してどうするんだ)
(いっそのことやっちまえよ)
(女神様もそれを望んでるぞ)
(ここで逃げるな。男がすたるぞ!)
と、オレの脳内会議が大混乱している。
オレがなにを考えているのか全くわかっていないドリアは、万感の思いをこめてオレを見つめてくる。
もう、今生の別れモードにスイッチが入ってしまったようだ。
「書類が片付くまでは、フレドリックにマオを預けておく。フレドリックだから預けるのだ。フレドリックは、絶対に、マオとわたしを傷つけることはしない。だが、それ以外はだめだぞ! それ以外の奴らが、マオに手をだそうとするなら、まずは王太子を倒してからにしろ! と言うんだぞ」
「…………」
これによく似たフレーズをつい最近、聞いたような気がするのだが……。
どうしたことか、フレドリックくんもドリアも、ものすごく好戦的になっている。
まじで、「刺したり刺されたり」な被害者がでてきそうで怖い。
「わたしの言っている意味がわかっているのか?」
「……たぶん、理解できていると思う?」
オレの頼りない返事に、ドリアはがっかりしたように首を横に振る。
「とにかく……フレドリックから離れるなよ」
そう言うと、ドリアは身を屈め、オレの手のひらに「チュッ」と大きな音をたててキスをすると、ダッシュでガゼボから立ち去ったのである。
お茶を飲み、ケーキを食べて……フレドリックくんの講義と、ドリアの「書類が一向に減らないのは、どういう呪いなのだ」という愚痴を聞いていたら、四十五分なんて、あっという間に終わってしまった。
王太子殿下づきの近衛騎士がガゼボに迎えにきたとき、ドリアは目を大きく見開き、
「嘘だ! まだ四十五分ではないだろう! 十五分くらいではないのか!」
と、真顔で抗議の声をはりあげていた。
いや、そんなはずはないだろう。
きっちり四十五分後、時間厳守で近衛騎士は迎えに来たからね。
そもそも、最初の十五分くらいの間、ドリアは泣いていたからね……。実質三十分のお茶会だった……ということは、フレドリックくんもオレもそして、リニー少年も黙っていた。
「……お迎えにあがりました」
ベテランの近衛騎士が言葉少なにドリアを急かす。
若手と違って、凄みがある。
そういう人を迎えに選んだんだろうな。
「仕事中の四十五分はものすごく長いのに、マオといたら、一瞬で終わってしまう。なぜなのだ!」
「さあ……なぜなんだろうね」
オレはドライフルーツの入ったクッキーをポリポリかじりながら、溜息をつく。
ドリアがすくっと立ち上がったので、フレドリックくんとオレも席をたつ。
「マオ……」
目を潤ませながら、ドリアはオレの右腕をとる。
「とても楽しい時間だった」
「うん。そうだね」
ドリアの艶っぽい瞳にくらくらしながらも、オレは理性を総動員して、なんとかふみとどまる。
望んでもいないのに、『ハラミバラ』のスキルが勝手に発動しようとしている。
勘弁してほしい。
空気を読めよ『ハラミバラ』!
まあ、女神様にヒトの都合など理解できないだろうが。
ホント、ここでオレがドリアに襲いかかったら、宰相サンになにをされるかわからないので、必死に我慢する。
もっと駄々をこねるかと思ったのだが、ドリアはあっさりと茶会の終了を告げる。
あ……迎えに来た近衛騎士さんたちが驚いているぞ。驚きが顔にでちゃってるぞ。動揺が態度にでているぞ。
「次は……いつ会えるのか、全くわからないのだが」
へにょんと眉尻を下げて、今にも泣き出しそうな顔でドリアはオレを見つめる。
(あ……だめだ。そんな、顔で見ないでくれ……)
心臓が破裂しそうなくらい、鼓動がどんどん早くなる。
優しく抱きしめてあげたい、がんばるんだよ、と励ましのキスを贈りたい。
(それくらいなら大丈夫)
(いやいやまずいって)
(ドリアの成長を妨害してどうするんだ)
(いっそのことやっちまえよ)
(女神様もそれを望んでるぞ)
(ここで逃げるな。男がすたるぞ!)
と、オレの脳内会議が大混乱している。
オレがなにを考えているのか全くわかっていないドリアは、万感の思いをこめてオレを見つめてくる。
もう、今生の別れモードにスイッチが入ってしまったようだ。
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「…………」
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数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
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