264 / 339
第47章
異世界の所有の印は激ヤバです(1)
しおりを挟む
道端で転んで泣いている子どもを介抱してやったことはたくさんあるが、こんなに大きなオコチャマを慰めるのは初めての経験なので、ちょっとドキドキするよ。
今までドリアの膝の上に座ったことはあったけど、その位置が逆転しているのも、なにやら新鮮というか、背中が少しばかりむず痒いね。
「ドリアはそんなにオレのことが好きなのか? 好きでいてくれるのか?」
「ああ。とっても好きだ。ものすごく好きだ」
泣き止んだドリアがオレの顔をじっと見つめてくる。
(ち、近い。近すぎるぅっ)
鼻と鼻が擦れ合うくらいに近いぞ。
キスされる……と思ったのだが、ドリアはオレから視線を外すと、自分の席へと素直に戻った。
(ええ? どういうこと?)
意外だった。
今までのドリアとはちがう行動パターンに、オレはとまどいを隠せない。
「マオ。取り乱してすまなかった。せっかくのお茶の時間を台無しにしてしまった」
目は少し潤んでいたけど、妙にキリリと引き締まった顔になるドリア。
ちょっと、カッコいいぞ、と言いたいところだが、無理して大人ぶっているようで、なんとも微笑ましいね。
「……いや、大丈夫だよ。ドリアこそ大丈夫か?」
温もりが不意に消えてしまい、よくわからない寂しさと切ない気持ちが、オレの中に溜まっていく。
「うん。大丈夫だ。これくらいのことで泣いていたらだめだよな。そうだよな。わたしは戦わないといけない」
闘志むきだしなドリアに、オレは若干、恐怖を感じる。
ドリアは一体、なにを相手に戦うつもりなのだろうか。怖いよ。
「負けるわけにはいかないんだ。わたしはあきらめないぞ。なにがなんでも、一番を目指す!」
いったい、ドリアはなにを目指しているのだろうね。
願わくば、そのやる気を政務に向けて、滞っている仕事をさっさと片付けてほしいよ。
でないと、色々な人が迷惑を被るだろうからね。
ドリアが落ち着いた頃合いを見計らって、フレドリックくんがゆっくりとお茶を飲み、ケーキにフォークを優雅な仕草で「ぐさり」とつきたてる。
(ぐさり?)
もし、ケーキに生命というものが宿っているのなら、今のは確実に、ケーキの急所を意図的に狙った攻撃だ。即死だろう。
ちょっと、怖い。
ドリアも紅茶を口にし、ケーキを食べ始める。
チョコプレートは最後に食べるつもりらしいよ。
嫌なものを後回しにするから、仕事が溜まって首が回らなくなるんだよ……。
気はすすまなかったが、オレもふたりにならって紅茶を飲み、ケーキを口に入れた。
ひとくちめは、生クリームとスポンジだけの部分をすくい取る。
ケーキの中心にぐさりとフォークをつきたてるような真似はしない。
「美味しい……」
オレの表情がキランと輝く。
ほっぺたが落ちそう、とか、舌がとろけそうといった表現にふさわしいケーキだ。
美味しい。
美味しすぎる!
糖分万歳だ!
生クリームは王者だ!
ウキウキしながら、ふたくちめはフルーツと一緒に食べてみる。
ドリアとフレドリックくんが、じっとオレの口元を見ているが、それに気づかないくらい、オレは全神経を目の前のケーキに注いでいた。
「マオの食べているケーキになりたい……」
という、ドリアの残念なコメントが聞こえたような気がしたが、おそらく幻聴だろう。
今までドリアの膝の上に座ったことはあったけど、その位置が逆転しているのも、なにやら新鮮というか、背中が少しばかりむず痒いね。
「ドリアはそんなにオレのことが好きなのか? 好きでいてくれるのか?」
「ああ。とっても好きだ。ものすごく好きだ」
泣き止んだドリアがオレの顔をじっと見つめてくる。
(ち、近い。近すぎるぅっ)
鼻と鼻が擦れ合うくらいに近いぞ。
キスされる……と思ったのだが、ドリアはオレから視線を外すと、自分の席へと素直に戻った。
(ええ? どういうこと?)
意外だった。
今までのドリアとはちがう行動パターンに、オレはとまどいを隠せない。
「マオ。取り乱してすまなかった。せっかくのお茶の時間を台無しにしてしまった」
目は少し潤んでいたけど、妙にキリリと引き締まった顔になるドリア。
ちょっと、カッコいいぞ、と言いたいところだが、無理して大人ぶっているようで、なんとも微笑ましいね。
「……いや、大丈夫だよ。ドリアこそ大丈夫か?」
温もりが不意に消えてしまい、よくわからない寂しさと切ない気持ちが、オレの中に溜まっていく。
「うん。大丈夫だ。これくらいのことで泣いていたらだめだよな。そうだよな。わたしは戦わないといけない」
闘志むきだしなドリアに、オレは若干、恐怖を感じる。
ドリアは一体、なにを相手に戦うつもりなのだろうか。怖いよ。
「負けるわけにはいかないんだ。わたしはあきらめないぞ。なにがなんでも、一番を目指す!」
いったい、ドリアはなにを目指しているのだろうね。
願わくば、そのやる気を政務に向けて、滞っている仕事をさっさと片付けてほしいよ。
でないと、色々な人が迷惑を被るだろうからね。
ドリアが落ち着いた頃合いを見計らって、フレドリックくんがゆっくりとお茶を飲み、ケーキにフォークを優雅な仕草で「ぐさり」とつきたてる。
(ぐさり?)
もし、ケーキに生命というものが宿っているのなら、今のは確実に、ケーキの急所を意図的に狙った攻撃だ。即死だろう。
ちょっと、怖い。
ドリアも紅茶を口にし、ケーキを食べ始める。
チョコプレートは最後に食べるつもりらしいよ。
嫌なものを後回しにするから、仕事が溜まって首が回らなくなるんだよ……。
気はすすまなかったが、オレもふたりにならって紅茶を飲み、ケーキを口に入れた。
ひとくちめは、生クリームとスポンジだけの部分をすくい取る。
ケーキの中心にぐさりとフォークをつきたてるような真似はしない。
「美味しい……」
オレの表情がキランと輝く。
ほっぺたが落ちそう、とか、舌がとろけそうといった表現にふさわしいケーキだ。
美味しい。
美味しすぎる!
糖分万歳だ!
生クリームは王者だ!
ウキウキしながら、ふたくちめはフルーツと一緒に食べてみる。
ドリアとフレドリックくんが、じっとオレの口元を見ているが、それに気づかないくらい、オレは全神経を目の前のケーキに注いでいた。
「マオの食べているケーキになりたい……」
という、ドリアの残念なコメントが聞こえたような気がしたが、おそらく幻聴だろう。
1
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる