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第46章
異世界のチョコプレートは容赦ないです(3)
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「マオ! 待ちくたびれたぞ」
うううっ。
キラキラ眩しすぎる純粋な笑顔が、オレの心をギリギリと締め上げてくる。
苦しくて、苦しくて、もう呼吸が止まりそうだよ。
フレドリックくんが「ドリアはシーナとそっくりだ」と言っていた。
確かに……肌の色と、髪型が違うだけで、ドリアはオレの心を奪ったシーナにそっくりだ。
いや、外見はそのまんまシーナだ。
別人だとわかっていても、これはちょっと……辛い。
もちろん、容姿だけでシーナを好きになったわけではないんだが、オレはシーナのなにもかもが、それこそ全てが好きだったよ。
当然ながら、シーナの上品で優しげな容貌と、キラキラ輝く金髪や、深く、吸い込まれそうな翠の瞳も『好き』なのだ。
いや、大のお気に入りだったよ。
ものすごく大好きだったんだ。
その大好物が、目の前にあるんだよ!
別人なんだけど……別人ってわかっているんだけど……容姿だけでいったら、ドリアはオレの好みのど真ん中なんだ。
もう潔く認めるよ。認めるしかないだろうね。
意識しだすと、ますますシーナに似ているような気がしてきて、気になってしまうのだから、困ってしまうよ。
「どうしたマオ? わたしの顔になにかついているのか?」
言葉もなくただ突っ立ったままのオレを、ドリアが不思議そうな顔で見つめてくる。
(シーナだ。シーナが、オレを見ている……)
幻ではなく、錯覚とわかっているのに、心が激しく揺さぶられる。
「勇者様……」
フレドリックくんの声に、はっと我に返る。
「いや。なんでもない。……ドリア、仕事はもう終わったのか?」
「あ――」
オレの質問に、ドリアは顔をおもいっきり顰める。
「い、いや。まだだ。一生懸命やってるのに、なぜか、書類が増える一方なのだ。なぜ減らないのか、さっぱりわからない」
ああ、ドリアの処理能力よりも、上奏案件の発生スピードの方が速いんだな。
仕事というものは、ひとたび溜めてしまうと、驚異的なスピードで雪だるま式に増えていくからなぁ。
「父上は、よくもまあ……あの量をひとりでこなされていたものだな。驚いた」
明るい声で話しながら、ドリアはオレの手をひいて、ガゼボの中へと引きずり込んでいく。
たぶんだけど……ドリアのお父さんは、働きすぎて病気になったんじゃないかな?
王様に権限が集中しすぎているのだろう。
建国の頃ならいざしらず、国が豊かになればなるほど、民が多くなればなるほど、問題は増え、さらに政務も増える。
思い切った業務の見直しが必要じゃないのかな?
宰相サンが運び入れた書類の山を思い出し、そんなことを考えながら、オレはドリアが勧める優雅なデザインのガーデンチェアに着席する。
「頑張っているわたしをみて、宰相がご褒美を用意してくれたんだ」
「ご褒美……?」
どうせ、ご褒美の原材料はオレだろう。
国賓扱いされているとはいえ、オレは非生産者の居候だ。金食い虫だ。
少しくらいは利益をもたらせと、宰相サンが考えても不思議ではない。
いや、その逆で、ドリアのやる気の素を手放してなるものか、と宰相サンはオレを引き止めたのだろうね。
「そうだ。ご褒美だ! マオとお茶をして、マオ成分を補充する許しがでたんだぞ!」
「そうなんだ。よかったな……」
(マオ成分ってなんだ?)
「なんと! マオと四十五分間、お茶をしていいって言ってくれたんだ!」
(なに、その中途半端な時間!)
大変だ。仕事のしすぎで、ドリアの判断力が低下しているんじゃないだろうか?
いままでのほほんと生きてきて、急に激務の中に放り込まれたから、働くってことに免疫がないんじゃないか?
(大丈夫か、ドリア?)
それにしても……なんてチョロい王太子殿下なんだ。
こんな子が王様になって、この国の未来は本当に大丈夫なのか?
まあ、ドリア本人はすごく嬉しそうだから、それでいいのかもしれないが……。
マオ成分というのがどういうものなのかはよくわからないが、四十五分間でしっかり補充してくれ。
うううっ。
キラキラ眩しすぎる純粋な笑顔が、オレの心をギリギリと締め上げてくる。
苦しくて、苦しくて、もう呼吸が止まりそうだよ。
フレドリックくんが「ドリアはシーナとそっくりだ」と言っていた。
確かに……肌の色と、髪型が違うだけで、ドリアはオレの心を奪ったシーナにそっくりだ。
いや、外見はそのまんまシーナだ。
別人だとわかっていても、これはちょっと……辛い。
もちろん、容姿だけでシーナを好きになったわけではないんだが、オレはシーナのなにもかもが、それこそ全てが好きだったよ。
当然ながら、シーナの上品で優しげな容貌と、キラキラ輝く金髪や、深く、吸い込まれそうな翠の瞳も『好き』なのだ。
いや、大のお気に入りだったよ。
ものすごく大好きだったんだ。
その大好物が、目の前にあるんだよ!
別人なんだけど……別人ってわかっているんだけど……容姿だけでいったら、ドリアはオレの好みのど真ん中なんだ。
もう潔く認めるよ。認めるしかないだろうね。
意識しだすと、ますますシーナに似ているような気がしてきて、気になってしまうのだから、困ってしまうよ。
「どうしたマオ? わたしの顔になにかついているのか?」
言葉もなくただ突っ立ったままのオレを、ドリアが不思議そうな顔で見つめてくる。
(シーナだ。シーナが、オレを見ている……)
幻ではなく、錯覚とわかっているのに、心が激しく揺さぶられる。
「勇者様……」
フレドリックくんの声に、はっと我に返る。
「いや。なんでもない。……ドリア、仕事はもう終わったのか?」
「あ――」
オレの質問に、ドリアは顔をおもいっきり顰める。
「い、いや。まだだ。一生懸命やってるのに、なぜか、書類が増える一方なのだ。なぜ減らないのか、さっぱりわからない」
ああ、ドリアの処理能力よりも、上奏案件の発生スピードの方が速いんだな。
仕事というものは、ひとたび溜めてしまうと、驚異的なスピードで雪だるま式に増えていくからなぁ。
「父上は、よくもまあ……あの量をひとりでこなされていたものだな。驚いた」
明るい声で話しながら、ドリアはオレの手をひいて、ガゼボの中へと引きずり込んでいく。
たぶんだけど……ドリアのお父さんは、働きすぎて病気になったんじゃないかな?
王様に権限が集中しすぎているのだろう。
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思い切った業務の見直しが必要じゃないのかな?
宰相サンが運び入れた書類の山を思い出し、そんなことを考えながら、オレはドリアが勧める優雅なデザインのガーデンチェアに着席する。
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「ご褒美……?」
どうせ、ご褒美の原材料はオレだろう。
国賓扱いされているとはいえ、オレは非生産者の居候だ。金食い虫だ。
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こんな子が王様になって、この国の未来は本当に大丈夫なのか?
まあ、ドリア本人はすごく嬉しそうだから、それでいいのかもしれないが……。
マオ成分というのがどういうものなのかはよくわからないが、四十五分間でしっかり補充してくれ。
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これもなにかの『縁』でございます!
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