勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

文字の大きさ
上 下
261 / 339
第46章

異世界のチョコプレートは容赦ないです(3)

しおりを挟む
「マオ! 待ちくたびれたぞ」

 うううっ。
 キラキラ眩しすぎる純粋な笑顔が、オレの心をギリギリと締め上げてくる。
 苦しくて、苦しくて、もう呼吸が止まりそうだよ。

 フレドリックくんが「ドリアはシーナとそっくりだ」と言っていた。

 確かに……肌の色と、髪型が違うだけで、ドリアはオレの心を奪ったシーナにそっくりだ。
 いや、外見はそのまんまシーナだ。
 別人だとわかっていても、これはちょっと……辛い。

 もちろん、容姿だけでシーナを好きになったわけではないんだが、オレはシーナのなにもかもが、それこそ全てが好きだったよ。

 当然ながら、シーナの上品で優しげな容貌と、キラキラ輝く金髪や、深く、吸い込まれそうな翠の瞳も『好き』なのだ。

 いや、大のお気に入りだったよ。
 ものすごく大好きだったんだ。
 その大好物が、目の前にあるんだよ!

 別人なんだけど……別人ってわかっているんだけど……容姿だけでいったら、ドリアはオレの好みのど真ん中なんだ。

 もう潔く認めるよ。認めるしかないだろうね。

 意識しだすと、ますますシーナに似ているような気がしてきて、気になってしまうのだから、困ってしまうよ。

「どうしたマオ? わたしの顔になにかついているのか?」

 言葉もなくただ突っ立ったままのオレを、ドリアが不思議そうな顔で見つめてくる。

(シーナだ。シーナが、オレを見ている……)

 幻ではなく、錯覚とわかっているのに、心が激しく揺さぶられる。

「勇者様……」

 フレドリックくんの声に、はっと我に返る。

「いや。なんでもない。……ドリア、仕事はもう終わったのか?」
「あ――」

 オレの質問に、ドリアは顔をおもいっきり顰める。

「い、いや。まだだ。一生懸命やってるのに、なぜか、書類が増える一方なのだ。なぜ減らないのか、さっぱりわからない」

 ああ、ドリアの処理能力よりも、上奏案件の発生スピードの方が速いんだな。

 仕事というものは、ひとたび溜めてしまうと、驚異的なスピードで雪だるま式に増えていくからなぁ。

「父上は、よくもまあ……あの量をひとりでこなされていたものだな。驚いた」

 明るい声で話しながら、ドリアはオレの手をひいて、ガゼボの中へと引きずり込んでいく。

 たぶんだけど……ドリアのお父さんは、働きすぎて病気になったんじゃないかな?

 王様に権限が集中しすぎているのだろう。
 建国の頃ならいざしらず、国が豊かになればなるほど、民が多くなればなるほど、問題は増え、さらに政務も増える。

 思い切った業務の見直しが必要じゃないのかな?

 宰相サンが運び入れた書類の山を思い出し、そんなことを考えながら、オレはドリアが勧める優雅なデザインのガーデンチェアに着席する。

「頑張っているわたしをみて、宰相がご褒美を用意してくれたんだ」
「ご褒美……?」

 どうせ、ご褒美の原材料はオレだろう。

 国賓扱いされているとはいえ、オレは非生産者の居候だ。金食い虫だ。
 少しくらいは利益をもたらせと、宰相サンが考えても不思議ではない。

 いや、その逆で、ドリアのやる気の素を手放してなるものか、と宰相サンはオレを引き止めたのだろうね。

「そうだ。ご褒美だ! マオとお茶をして、マオ成分を補充する許しがでたんだぞ!」
「そうなんだ。よかったな……」

(マオ成分ってなんだ?)

「なんと! マオと四十五分間、お茶をしていいって言ってくれたんだ!」

(なに、その中途半端な時間!)

 大変だ。仕事のしすぎで、ドリアの判断力が低下しているんじゃないだろうか?

 いままでのほほんと生きてきて、急に激務の中に放り込まれたから、働くってことに免疫がないんじゃないか?

(大丈夫か、ドリア?)

 それにしても……なんてチョロい王太子殿下なんだ。
 こんな子が王様になって、この国の未来は本当に大丈夫なのか?
 まあ、ドリア本人はすごく嬉しそうだから、それでいいのかもしれないが……。

 マオ成分というのがどういうものなのかはよくわからないが、四十五分間でしっかり補充してくれ。
しおりを挟む
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

処理中です...