勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

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第36章

異世界の騎士団長サンは苦労人です(3)

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 驚愕に固まってしまったものを溶かそうと、オレは懸命に舌を動かし、フレドリックくんの柔らかな唇を食む。

 望んで、望んで、欲しくて、欲しくてたまらなかったものを手に入れることができた悦びにオレの全身が痺れる。

 と、同時に、相手の反応が全くないことに、オレは悲しくなった。

(なんてことをしているんだ……)

 これじゃあ、ドリアや聖女様のことを悪くいうことができない。

 同じだ。

 自分の中にある一方的な想いを、相手の迷惑も真意も考えずに、ただ、ただ、相手にぶつけているだけだ。

 そのことを思い知らされ、フレドリックくんにすがっていたオレの手から力が抜けていくよ。

 苦しい……。

 オレの男である徴は開放を求めて張り詰め、最後のきっかけを求めて苦しかったが、それ以上に胸が苦しいんだ。

 首をとらえていた手がフレドリックくんから離れようとした瞬間、オレの身体は狂ったかのように強く、激しく抱きしめられていた。

 背中に回されたフレドリックくんの逞しい両腕が、オレの存在を確かめるかのように絡みつく。

 その燃えるような熱さに、オレは嬉しくなって、呼吸することすら忘れてしまう。

「フ……レ……」

 唇が互いのものを求めて触れ合い、力強く動く舌が、オレの感じる部分を心地よく刺激する。
 声も呼吸も、なにもかも奪い尽くそうとするフレドリックくんのキスにオレは酔いしれ、うっとりと瞳を潤ます。

 何度か息継ぎのような呼吸を繰り返し、深い口づけと長く情熱的な包容を交わした後、フレドリックくんの唇が名残惜しそうにゆっくりと離れていった。

「勇者様……」

 フレドリックくんは目元をほんのりと赤く染め、熱い瞳でオレを見下ろしていた。
 互いの唾液で濡れた唇は艷やかな光を放ってとても扇情的だ。

 いつもは『わたしは壁』でなかなか動かないフレドリックくんの表情が、今は……欲情に溺れ、オレを求める男の顔になっている。

「フレドリックくん……やだ。やめないで」

 今のやりとりでオレを護るように包み込んでいたフレドリックくんのマントがはだけ、魅惑の魔法抵抗に失敗したオレの乱れた身体があらわになる。

 さきほどのキスだけでオレは達してしまい、腹の辺りは新たに吐きだしたものでドロドロに濡れている。
 だが、それでもなお、オレの芯の部分は熱を持ち続け、硬くたちあがっていた。

 オレの『オネガイ』にフレドリックくんのとろけきった顔が悲しそう、いや、苦しそうに歪む。
 心のなかでフレドリックくんは『なにか』と戦っているようだ。

「よいのでしょうか……」
「なにが?」

 苦しそうなフレドリックくんの呟きを耳にし、オレまでもが苦しくなる。

「わたしのようなモノが、勇者様に触れてしまってもよいのでしょうか……」

 オレを覗き込むフレドリックくんの瞳がゆらゆらと揺らいでいる。

「フレドリックくんがいいんだ」
「でも……」

 と言いかけたフレドリックくんの唇にオレは軽くキスを落とす。
 フレドリックくんに見つめられて、こうして彼の存在を側で感じているだけで、不思議なことにオレの心は満たされ、だんだんと落ち着いてくる。
 魅惑の魔法効果が低下しはじめている。

 だけど、それはナイショだ。

 身体の芯は今以上の刺激を求めてどうしようもなくなっているし、なによりも、オレの気持ちがフレドリックくんを渇望していた。

「おねがい。今……今、だけは、なにも考えないで、オレだけを見て?」

 少しだけ聖女様を真似てみて、フレドリックくんに甘えてみる。
 オレの甘えた声に、フレドリックくんの顔がさあっと赤に染まっていく。

「フレドリックくん……オレは魔王なんだ。知ってる?」
「存じています」
「魔王はね……ずる賢くて、強欲で、悪いヤツなんだよ?」

 艶っぽく笑ってみせたけど、オレはうまく笑えただろうか?
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