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第34章
異世界の聖女様は◯◯◯です(1)
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「…………さま」
「ゆ……さま」
「ゆ……しゃ……さま」
朦朧としている中、誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえてきたよ。初めて聞く声だね。
「ゆ……う……しゃ……さま」
その声はだんだんと大きく、鮮明な言葉となって、オレの耳に届きはじめた。
「勇者様……! こちらです!」
オレを呼ぶ声。
それに反応を示すと、いきなりぐいと身体が引っ張られ、モヤモヤとした意識がクリアになっていく。
強い衝撃が圧力となって魂に加わり、オレは覚醒と同時に一気に跳ね起きていた。
「うわっつ!」
「ひえっっ!」
がばりと身を起こす。
いきなり起き上がったので、頭がクラクラする。
「ゆ、勇者様! だ、大丈夫ですか! いきなり起き上がってはなりません!」
という声とともに、身体をもんのすごい力で支えられる。一歩間違えたら、締め技になってしまうような剛力だ。
目を開けるが、焦点がぼんやりとしていて、ここがどこかよくわからない。
頭がくらくらした。
……なんとなく、ベッドに寝かされていたような雰囲気ではある。
召喚されてから毎日寝ていた賓客用のめちゃくちゃでかい寝台よりは小さそうだ。
サイズは小さいけれど、この寝台もフワフワ、フカフカの寝心地で、オレが気を失っていた間――女神様がたとお会いしていた間――、大事にされていたことがわかるね。
急激な意識の覚醒とともに身体に感覚が戻り、その反動で、激しい頭痛と吐き気に襲われちゃったよ。
オレは気力を振り絞り、必死になってその不快感に耐えた。耐えたよ。がんばって耐え忍んだよ。
この頭痛と吐き気症状は、神ではない者が、異世界と神界をつなぐ神聖な場所――神々の控えの間――に滞在した対価。
なので、回復魔法では治せないんだ。まあ、治せたとしても、オレの回復魔法レベルじゃ治せないけどね。ひたすら我慢して、おさまるのを待つしかない。我慢だ!
気持ち悪いことこのうえないけど、無事に魂が肉体に戻ったという証なので、喜ぶべきことではある。
そもそも、これくらいのダメージですむのは、オレがなんども復活を繰り返している魔王であるからだ。
こういうときは、積み重ねた経験値がものをいうんだよね。
おそらく、オレが気を失っていたのは、二、三日。
ちなみにふつ――の善良な人間であれば、半分の確率で、帰還に失敗して死亡するという、女神様との面会は命がけだ。
勇者クラスであれば、一週間の気絶で復活できるだろうね。
まあ、神様ではない者が気楽に何度も行けるような場所ではないことはたしかだよ。
あれ?
そういえば、オレはこの世界では勇者扱いされていた……よね?
「お目覚めですか? 勇者様。ご気分はいかがですか?」
「最悪だ。オレは何日……眠っていた?」「一週間です」
記憶にない若い男の声が、オレの質問に答えてくれた。
(勇者扱いかよ……)
心の中で……と思ったら、実際に、舌打ちしてしまったよ。
また、無駄に日にちを消費してしまったことになるからね。
「ゆ、勇者様? 大丈夫ですか? 意識はありますか?」
「ゆ……さま」
「ゆ……しゃ……さま」
朦朧としている中、誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえてきたよ。初めて聞く声だね。
「ゆ……う……しゃ……さま」
その声はだんだんと大きく、鮮明な言葉となって、オレの耳に届きはじめた。
「勇者様……! こちらです!」
オレを呼ぶ声。
それに反応を示すと、いきなりぐいと身体が引っ張られ、モヤモヤとした意識がクリアになっていく。
強い衝撃が圧力となって魂に加わり、オレは覚醒と同時に一気に跳ね起きていた。
「うわっつ!」
「ひえっっ!」
がばりと身を起こす。
いきなり起き上がったので、頭がクラクラする。
「ゆ、勇者様! だ、大丈夫ですか! いきなり起き上がってはなりません!」
という声とともに、身体をもんのすごい力で支えられる。一歩間違えたら、締め技になってしまうような剛力だ。
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頭がくらくらした。
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心の中で……と思ったら、実際に、舌打ちしてしまったよ。
また、無駄に日にちを消費してしまったことになるからね。
「ゆ、勇者様? 大丈夫ですか? 意識はありますか?」
2
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
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