勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

第33章

異世界の女神サマは◯◯◯です（２）

　胸がまな板ペッタンコの幼女体型の女神は毅然とした態度で立ち上がると、女性の色気ムンムンの大柄な赤髪女神に人差し指を突き刺す。

「いや、そこじゃなくて……そこも大事なんだけど、なんか、おねーちゃんって言葉が混じってなかったか？」
「ん？　そうだよ。アタシ、アナスティミアちゃんのおねーちゃんだよ？」
「えええええええええええっっっっ！」

　女神の世界はなんて複雑なんだ！

　ミスティアナが姉で、アナスティミアが妹ときた。

「そんなに驚くことか？　肝っ玉が小せえ魔王だな……。ミスティアナが長女で、アタイは末っ子。九人姉妹の末っ子さ」
「う、嘘だ……」

　ザ――ッという効果音とともに、オレの顔から血の気が引いていくようだった。

　ミスティアナもどきが、あと七人もいるのかと思うと、世界の終末を迎えたような気分になる。

　神は非情だ……。

「ちょっと、そんなことよりもね！」

　ミスティアナがプンプン怒っている。
　そんなことなのか？
　いや、ふたりが姉妹って……そんなことなのかもしれない。

「ど――して、アタシの魔王ちゃんが、オトコとイチャイチャしたくらいで、アナスティミアちゃんのモノになるわけ？　わかんない！　そんなルールなんてないわよ！」
「今、決めた。ミスティアナの魔王は、これからアタシの所有物になる！」

　アナスティミアは、カッカッカと高らかに笑う。なんで、コイツも悪役笑いなんだ？

　いや、それよりも……気づきたくないのだが、この女神たちは、もしかして……オレの所有権を巡って言い争いをしているのだろうか？

　ひじょうに迷惑だからやめてほしいよ。

「アタイの世界にいる限り、魔王は、アタイのモノだ！」
「なに言ってるの！　大体、あの召喚は、手違いで、無効よ！　無効！　魔王ちゃんをさっさとアタシに返してよ！　返しなさいよ！」
「嫌だね。こんなオモシロいヤツ、おねーさま方になんかにやるもんか！　アタイがさっさともらって、たっぷり可愛がってあげるんだ」

　ミスティアナがアナスティミアめがけてボカスカと殴りかかるが、あの体格差だ……。
　ミスティアナはアナスティミアに全く、ダメージを与えることができない。

（なにから話したらいいんだ……）

　オレは真っ白な空間で、頭の中が真っ白になってしまう。

　とりあえず、ここは、神と面談ができる空間だ。
　だが、ここには神も、神でないモノも滞在時間が限られているんだよ。

　そして、一度、訪問すると、再訪問まで一定のインターバルが必要になるというルールがある。

　女神たちの『ゆったり神様時間』につられて、のんびりとはしていられないんだよ。