勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

第32章

異世界の大神殿はド派手です（４）

　ドリアの笑顔は、やたらキラキラ無駄に輝いていて眩しい。めまいがする。あの、真っ直ぐ純粋一直線な告白は、オレの心を憂鬱にさせる重石のようなものだ。

　オレをとことん甘やかす優秀なリニー少年は、オレを仕事をしないダメダメなオトナにしてしまう。

　護衛騎士のフレドリックくんは……フレドリックくんは……オレの心をかき乱すやっかいな存在だ。

　オレはここにいては駄目なんだ。
　ドリアたちから離れなければならないんだ。
　ここにいると、オレは駄目になってしまう……。

　オレは勇者じゃないんだから、異世界召喚魔法陣を解析して、元の世界に戻る方法を見つけてさっさとトンズラする……と計画をたてていた。

　が、そんなことにこだわっている場合でもないようだ。世間体を気にして、なりふりかまってたら、手遅れになってしまうよ。

　魔王を倒さないと戻れないのなら、もう、倒してもいいかなぁ……。こちらの世界の魔王がどんなヤツなのかとかいっさいがっさい気にせず、自分の都合を優先してもいいかなぁ……。とオレは考えはじめてもいたんだ。

　となると、ソロ討伐するにしても、旅立ちの協力者は必要だ。

　ドリアやリニー少年たちは協力してくれないような気がする。そんな予感がする。
　どっちかっていうと、全力で阻止してくる方だよね。

　それなら、聖女サマにお願いしたらどうかな……ってことになってくる。

　人脈がなさすぎて涙がでてきそうだ。

　ただ、オレがいた世界では、高確率で聖女様は勇者に惚れる仕様になっているけど、こっちは大丈夫なのだろうか？

　ちょっと心配だよ。

　元の世界の聖女サマたちの、惚れっぷりを見ているから、あれは……ちょっとウザいくらいに鬱陶しいな。ドリアといい勝負だろう。

　ドリアがふたりにふえる……。
　かなり嫌だ。

　とはいえ、聖女様の協力を得ることができれば、この世界の至高神アナスティミアとやらには、会えるかもしれない……と考えると、聖女様との対面は避けて通れない道だよね。

　まあ、遠慮なく贅沢を言わせてもらえば、聖女サマよりも、この世界の女神サマか、オレの世界にいたポンコツ女神サマに面会したい。

　会って文句……いや、今後のことについて、話し合いたいな。

　そう願いながら、オレは一歩、神殿に足を踏み入れた。

　すると、オレの足元を中心に神殿の床が、急に輝きだす。

（な、な、なんなんだ！　このド派手な仕掛けは！）

　ドリア、フレドリックくんの慌てたような叫び声が聞こえた。

（え？　参拝者に対する演出じゃないのか？）

　……………と、そこで、いきなり、オレの意識は途切れてしまった。