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第29章
異世界のエリザベスは熱烈です(5)
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「い――じゃないの」
「よくありません!」
「一個や二個しか実らなかったら、献上品でしょうけど、あんだけ、大量に落ちてきたのよ。そのなかから一個や二個、減っても誰も気づかないから!」
ケラケラと笑うエリーさんの態度に、フレドリックくんの眉がつりあがる。
(いや、あの庭師たちなら、全ての個数を把握してそうだけどな……)
エリザベスの実というものの価値がよくわからないオレは、沈黙したまま、ふたりの会話を聞くとはなしに聞いていた。
フレドリックくんが大きな声で反論するのも珍しい。
「エリーさま……エリザベスの実をもしかして、まだ、隠し持っているんですか? いえ、持っているんですね!」
「…………」
エリーさんがそっぽを向く。
ああ、それが答えか。
どさくさに紛れて、いくつかくすねてきたんだろう。
「い――じゃない。エリザベスの実なんて、そうそう手に入るものじゃないのよ。今日のダブルデートの記念にもらっちゃいましょう」
「色々な意味で、それはよくありません!」
(色々って……どういう意味なんだ?)
「もうっ。フレッドってば、頭が固いんだから……」
激怒するフレドリックくんを、エリーさんは軽くあしらう。
フレドリックくんは融通がきかないことがたびたびあるが、今回のこれは、エリーさんの方が悪いだろう。
エリーさんのいい加減な態度に、フレドリックくんはさらに怒りだす。
エリーさんは上機嫌だ。生真面目なフレドリックくんをからかって楽しんでいるのがまるわかりである。
上司と部下……よりも、親しそうだ。
もしかして、ふたりはフリではなく、本当に、恋人なのかもしれない。
しかし、なぜ、この小さな実に、フレドリックくんは固執するのだろうか?
「エリー……。わたしもデートの記念で、エリザベスの実が欲しいのだが?」
ドリア王太子がふたりの会話に割って入る。
すごい度胸……というか、空気を読もうよ、ドリア……。
「おこちゃまには不要の品です!」
「王太子殿下にはまだ早すぎます!」
かなり強めの反撃に、ドリアは首をすくめて大人しくなる。
ふたりから少しでも離れたいのか、馬車の隅の方に移動し、躰を小さくしている。
「エリザベスの実はね……」
不思議そうにしているオレに気づいたのか、エリーさんが楽しそうに笑いながら、オレに黄色い実を見せる。
「数十年に一度、数個の実をつけるといわれているとても貴重な肉食花の実なんです」
「肉食花は実をつけるのか?」
「はい、樹齢百年以上の株がつけるといわれていますが、そこまで長寿な品種はまだ生まれてません。よく成長する品種でも、五十年がやっとです」
「……ということは、実をつける肉食花は貴重なのか?」
「はい。現在では、エリザベスしか残っておりません」
「へ……へぇ……」
「よくありません!」
「一個や二個しか実らなかったら、献上品でしょうけど、あんだけ、大量に落ちてきたのよ。そのなかから一個や二個、減っても誰も気づかないから!」
ケラケラと笑うエリーさんの態度に、フレドリックくんの眉がつりあがる。
(いや、あの庭師たちなら、全ての個数を把握してそうだけどな……)
エリザベスの実というものの価値がよくわからないオレは、沈黙したまま、ふたりの会話を聞くとはなしに聞いていた。
フレドリックくんが大きな声で反論するのも珍しい。
「エリーさま……エリザベスの実をもしかして、まだ、隠し持っているんですか? いえ、持っているんですね!」
「…………」
エリーさんがそっぽを向く。
ああ、それが答えか。
どさくさに紛れて、いくつかくすねてきたんだろう。
「い――じゃない。エリザベスの実なんて、そうそう手に入るものじゃないのよ。今日のダブルデートの記念にもらっちゃいましょう」
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激怒するフレドリックくんを、エリーさんは軽くあしらう。
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エリーさんは上機嫌だ。生真面目なフレドリックくんをからかって楽しんでいるのがまるわかりである。
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もしかして、ふたりはフリではなく、本当に、恋人なのかもしれない。
しかし、なぜ、この小さな実に、フレドリックくんは固執するのだろうか?
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「……ということは、実をつける肉食花は貴重なのか?」
「はい。現在では、エリザベスしか残っておりません」
「へ……へぇ……」
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数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
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ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
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転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
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