158 / 339
第27章
異世界の植物園は敷居が高いです(2)
しおりを挟む
植物園は見てみたいが、やっぱり、あの肉食花には遭遇したくない。
「マオ様、よろしいでしょうか?」
「フレッド! 下がれ」
エリーさんに叱責されながらも、フレドリックくんはオレの方に向かって、進み出る。
片膝をつくと、オレの手をとり、オレの顔をじっと見上げてきた。
オレを見つめるレドリックくんの赤い瞳は、いつになく真剣だ。
「バラに様々な品種があるように、肉食花にも様々な品種がございます。我が国では、植物の品種改良に対する研究も盛んですが、肉食花も学者たちの知的好奇心を大いに刺激し、研究、改良がされております」
「……そ、そうなのか?」
無意識のうちに、オレは半歩後退していた。
肉食花の研究って、死と隣り合わせというか、生命をかけた研究っぽいよな。なんて、デンジャラスなんだ。
異世界の学者さんたちは一体、なにを考えているのだろうか……。
異世界、やっぱり怖いよ。
「王城の警備をしている肉食花は、肉食花の中でも、最も賢く、最も凶暴とされている優良品種です」
(そうだろう、そうだろう。やっぱり、そうだったんだ!)
「マオ様……無礼を承知で申し上げますが、願わくば、ひとつだけを見て、すべてを判断されることのないよう。その広き視野を曇らせることなく、この世界、そして、ドリア様を見てください」
フレドリックくんの言葉がぐさりと、オレの胸に突き刺さっちゃった。
言葉の意味を把握できていないドリアは、いきなり自分の名前がでてきて、目をぱちくりさせている。
「……本を読めば様々な知識を得ることができます。ですが、本が全てではございません。知識を得る機会を、マオ様は捨てようとなさっています。花もヒトもひとつが全てではございません」
真顔になったエリーさんが、黙って深々と頭を垂れる。
フレドリックくんはオレから離れ、エリーさんの隣に並ぶと、同じように頭を垂れた。
フレドリックくんの真摯な眼差しに、オレの胸がキリキリと痛む。
オレが魔王として未熟だった頃、家臣たちが決死の覚悟と想いで、オレに忠言してきた姿と重なった。
「……そう、だったな」
オレは軽く奥歯を噛みしめると、ざわざわと揺らぐ心と、肉食花に対する恐怖心に蓋をする。
「ドリアは、オレが花を見て喜ぶと考えてくれたから、植物園を選んでくれたんだな」
「そ、そうなのだが……わたしが浅慮だった」
ドリアが申し訳無さそうに、目を伏せる。
ものすごくわかりやすい反応だ。
「マオ様、よろしいでしょうか?」
「フレッド! 下がれ」
エリーさんに叱責されながらも、フレドリックくんはオレの方に向かって、進み出る。
片膝をつくと、オレの手をとり、オレの顔をじっと見上げてきた。
オレを見つめるレドリックくんの赤い瞳は、いつになく真剣だ。
「バラに様々な品種があるように、肉食花にも様々な品種がございます。我が国では、植物の品種改良に対する研究も盛んですが、肉食花も学者たちの知的好奇心を大いに刺激し、研究、改良がされております」
「……そ、そうなのか?」
無意識のうちに、オレは半歩後退していた。
肉食花の研究って、死と隣り合わせというか、生命をかけた研究っぽいよな。なんて、デンジャラスなんだ。
異世界の学者さんたちは一体、なにを考えているのだろうか……。
異世界、やっぱり怖いよ。
「王城の警備をしている肉食花は、肉食花の中でも、最も賢く、最も凶暴とされている優良品種です」
(そうだろう、そうだろう。やっぱり、そうだったんだ!)
「マオ様……無礼を承知で申し上げますが、願わくば、ひとつだけを見て、すべてを判断されることのないよう。その広き視野を曇らせることなく、この世界、そして、ドリア様を見てください」
フレドリックくんの言葉がぐさりと、オレの胸に突き刺さっちゃった。
言葉の意味を把握できていないドリアは、いきなり自分の名前がでてきて、目をぱちくりさせている。
「……本を読めば様々な知識を得ることができます。ですが、本が全てではございません。知識を得る機会を、マオ様は捨てようとなさっています。花もヒトもひとつが全てではございません」
真顔になったエリーさんが、黙って深々と頭を垂れる。
フレドリックくんはオレから離れ、エリーさんの隣に並ぶと、同じように頭を垂れた。
フレドリックくんの真摯な眼差しに、オレの胸がキリキリと痛む。
オレが魔王として未熟だった頃、家臣たちが決死の覚悟と想いで、オレに忠言してきた姿と重なった。
「……そう、だったな」
オレは軽く奥歯を噛みしめると、ざわざわと揺らぐ心と、肉食花に対する恐怖心に蓋をする。
「ドリアは、オレが花を見て喜ぶと考えてくれたから、植物園を選んでくれたんだな」
「そ、そうなのだが……わたしが浅慮だった」
ドリアが申し訳無さそうに、目を伏せる。
ものすごくわかりやすい反応だ。
12
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる