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第26章

異世界のデートはイチゴが先です(5)

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 ドリアの説明によると、この丘は、初代の国王が、ここに王国を築くと宣言した場所で、記念公園として王国の手によって管理されているんだって。

 平日の早い時間は誰もいないらしいが、学校が終わる午後は、子どもたちの遊び場になり、休日は、休暇を楽しむカップルや家族がここを訪れるそうだよ。

「何度も通って、一番、ひとが少ない曜日と時間帯を狙ってみたんだ!」

 ドリアはウキウキとした声で説明してくれたけど、エリーさんの額に青筋が立っているのをオレはばっちり見てしまったからね。

 王城を脱走して、ここに来てましたとバラしているようなものだよ……。
 発言はもう少し、慎重な方がいいと思う。


「マオ! ついたぞ!」

 ドリアはオレを丘の上に案内する。

「わあ……」

 感嘆の声がでちゃった。

 どうだ、すごいだろう? という表情を浮かべながら、ドリアが指し示した先には、美しい街並みが広がっていた。

 エリーさんとフレドリックくんは、オレたちから少し離れた場所に立っている。

 ふたりはなにげない風を装いながら、丘からの景色ではなく、オレたちの周囲に目を配っている。
 職務に忠実なふたりだ。

 ****

 高台から見下ろす色彩豊かな街の景色に、オレはしばし見入っていた。
 ドリアの笑顔と同じくらい眩しく、鮮やかな光景がオレの心を揺さぶる。

 立派な城壁に囲まれた、巨大な街並み。

 あの大きな建物は学園だろうか。施設建物も多ければ、敷地も広い。大神殿らしき建物も見える。公園もあれば、街路樹がうわった道も多い。

 東西南北にある城門から伸びる大通りは広く、まっすぐに王城へと向かっている。

 道路には無駄がなく、区画整備もきちんとなされていた。
 建物も区画ごとに統一されており、都市計画に対するとりくみ、建築技術の高さがうかがわれる。

 いかにこの王国が平和で、教養の高い人々が暮らしているのかがよくわかるよ。

「マオ、すごいだろう!」

 ドリアはオレを抱き寄せながら、誇らしげに眼下の景色を眺めている。

「うん、すごいな」

 こんなに素敵な国の王太子なんだから、しっかりしろよな……と心の中で呟く。
 ドリアの代で滅びるとか、傾くとかならないようにしないとな。

 この街がこれだけ美しいのは、そこで暮らす人々の心が満たされているからだよ。
 住人、家臣たちの日夜の働きによって保たれるのだが、やはり頂点にたつ者が、ゆるぎなく、しっかりしているからこそだね。

 面倒な政務を嫌って逃げまくっているドリアだが、この国自体を嫌っているわけではないことが、街を眺める温かな眼差しから伝わってくる。

 美しい景色を眺めながら、国を、民を嫌いにならずに慈しむことを忘れないで欲しいと、オレはドリアにこっそりと願う。

 そして、ご褒美を与えられなくとも、政務から逃げずに、真正面から向き合って欲しいとも思った。

 いや、本当は、民の心からの笑顔が最大のご褒美なんだが……オレが言うのではなく、ドリアが自分で気づいてくれることを密かに願うよ。
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