83 / 339
第15章
異世界の本は強烈です(2)
しおりを挟む
「勇者様……もしかして……借りた『不可思議怪奇奇譚』三十冊、全部読まれたのですか?」
「……借りた以上は、読まないと……」
オレの言葉に、フレドリックくんとリニー少年は少し驚いたような……いや、呆れたような顔になる。
「二十巻辺りで、騎士の半数以上が脱落するのですが……」
は、半数……。
愕然となる。
納得の数字である。
読んでしまうオレもオレなんだが……よく、こんな強烈な本を出版したものだ。
異世界の出版業界って怖い。
「勇者様のご要望とはいえ、一度に三十巻まで借りるのはお止めした方がよかったですね。申し訳ございません」
フレドリックくんの謝罪にオレは首を振る。
謝罪して欲しくて、フレドリックくんを呼んでもらったわけじゃない。
「ホットミルクを用意いたしましょうか?」
「いや、トイレに行きたくなるからいらない……」
「…………」
リニー少年の申し出を、オレは小さな声で断る。
ひとりで夜のトイレもだめだし、暗い場所にも行きたくない。
「……読んでしまわれたのは、どうしようもありませんよね。忘れたくても、なかなか忘れられない内容ですし……」
「そうだな。宰相家の著作は、読み始めたら止まらない名著が多いからなぁ……」
どうしたものか、と困惑しているふたりの気配が伝わってくる。
「勇者様、読む本もなくなったようですし、もう、寝台でお休みになられた方がよいと思います」
「リニーの言う通りです」
「……う……ん」
そうなんだよ。
もう、寝た方がいいに決まっているんだよ。
オレだってそうしたいんだよ。
だけど……。
だけど……ね。
「失礼します」
フレドリックくんの声と共に、オレはクッションを胸に抱え込んだまま、ひょいと抱き上げられていた。
「寝室までお運びいたしますね」
必要以上のことは語らないフレドリックくんの優しい声に、オレは思わず涙目になりながら頷く。
あまりの恐怖内容に、オレは腰が抜けて、立ち上がることができなかったのだ。
花の次は本……。
異世界って、本当に、凶悪すぎる。
リニー少年に寝床を整えてもらって、オレは寝台に横になった。
フカフカお布団に潜り込んでも、オレの震えは止まらなかった。カチカチと歯が鳴っている。
「気休めでしかないでしょうが……」
といって、リニー少年が心が落ち着き、安眠を促す効力があるというお香を焚いてくれたが、言葉のとおり、気休めでしかなかった……。
ちっとも心が安らかにならないよ。
「勇者様がお休みになるまで、このまま隣室にて控えさせていただきますね」
一礼し、退出しようとするフレドリックくんの裾をオレは慌ててつかむ。
「勇者様?」
「……借りた以上は、読まないと……」
オレの言葉に、フレドリックくんとリニー少年は少し驚いたような……いや、呆れたような顔になる。
「二十巻辺りで、騎士の半数以上が脱落するのですが……」
は、半数……。
愕然となる。
納得の数字である。
読んでしまうオレもオレなんだが……よく、こんな強烈な本を出版したものだ。
異世界の出版業界って怖い。
「勇者様のご要望とはいえ、一度に三十巻まで借りるのはお止めした方がよかったですね。申し訳ございません」
フレドリックくんの謝罪にオレは首を振る。
謝罪して欲しくて、フレドリックくんを呼んでもらったわけじゃない。
「ホットミルクを用意いたしましょうか?」
「いや、トイレに行きたくなるからいらない……」
「…………」
リニー少年の申し出を、オレは小さな声で断る。
ひとりで夜のトイレもだめだし、暗い場所にも行きたくない。
「……読んでしまわれたのは、どうしようもありませんよね。忘れたくても、なかなか忘れられない内容ですし……」
「そうだな。宰相家の著作は、読み始めたら止まらない名著が多いからなぁ……」
どうしたものか、と困惑しているふたりの気配が伝わってくる。
「勇者様、読む本もなくなったようですし、もう、寝台でお休みになられた方がよいと思います」
「リニーの言う通りです」
「……う……ん」
そうなんだよ。
もう、寝た方がいいに決まっているんだよ。
オレだってそうしたいんだよ。
だけど……。
だけど……ね。
「失礼します」
フレドリックくんの声と共に、オレはクッションを胸に抱え込んだまま、ひょいと抱き上げられていた。
「寝室までお運びいたしますね」
必要以上のことは語らないフレドリックくんの優しい声に、オレは思わず涙目になりながら頷く。
あまりの恐怖内容に、オレは腰が抜けて、立ち上がることができなかったのだ。
花の次は本……。
異世界って、本当に、凶悪すぎる。
リニー少年に寝床を整えてもらって、オレは寝台に横になった。
フカフカお布団に潜り込んでも、オレの震えは止まらなかった。カチカチと歯が鳴っている。
「気休めでしかないでしょうが……」
といって、リニー少年が心が落ち着き、安眠を促す効力があるというお香を焚いてくれたが、言葉のとおり、気休めでしかなかった……。
ちっとも心が安らかにならないよ。
「勇者様がお休みになるまで、このまま隣室にて控えさせていただきますね」
一礼し、退出しようとするフレドリックくんの裾をオレは慌ててつかむ。
「勇者様?」
12
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる