82 / 339
第15章
異世界の本は強烈です(1)
しおりを挟む
一時間後……。
借りていた『不可思議怪奇奇譚』の三十冊目を読み終えたオレは、卓上にあったベルを鳴らし、隣室で控えていたリニー少年を呼び出した。
「なにか御用でしょうか? 勇者さ……まぁ?」
クッションを胸にしっかと抱きしめ、膝を抱えて椅子の上にちょこんと座り込んでいるオレを、リニー少年は怪訝そうな顔で見る。
「……どうされましたか?」
「い、いや、あ……の、そ……の……フレドリックくん……」
「フレドリックがどうかしましたか?」
「……は、もう、帰っちゃったりしたかな?」
オレの質問に、リニー少年は顎に手をやりしばし考え込む。
「今の時刻ですと、まだ、近衛の詰め所にいるかとおもいますが……。呼び戻しましょうか?」
クッションをギュッと握りしめ、オレは大きく頷いた。
「うん。うん。ぜひ。ぜひ、呼んでくれ!」
「…………」
優秀な小姓であるリニー少年は、クッションを抱きしめながらガタガタ震えているオレと、テーブルの上に積み上げられている『不可思議怪奇奇譚』の三十冊を見比べる。
「勇者様、呼ぶのは王太子殿下ではなく……」
「フレドリックくんにしてくれ! ドリアが来たら、夜がもっと悲惨になるじゃないかあぁっ!」
「ああ。そうですね。三十巻目は、よば……」
「ソレ以上言うな! 言わないでくれ!」
オレは目に涙をためながら、半狂乱状態になって叫んでいた。
****
オレは目を閉じ、クッションを力いっぱい抱きしめて、長椅子のすみっコの方でカタカタと震えていた。
怖くて、怖くてたまらないよ。
しかも、よく考えたらね……考えたくなかったんだけどね、リニー少年はフレドリックくんを呼びに席を外しているんだよ!
この部屋には、今、オレひとりしかない……。
こういうときは、羊の数を数えるとよかったっけ? と、カタカタ震えながら「羊が一匹、羊が二匹」と、カウントしてみる。
羊が七匹になったところで、そういえば、羊毛ではなく、生皮を剥がれた七匹の羊が、羊飼いに復讐する……という、七巻目に書かれていた話を思い出し、オレは半泣きになった。
どれくらいの時間、オレは震えていただろうか……。
しばらくすると、ふわり、と温かな気配がオレを包み込んでいた。
「勇者様」
低い男性の声に、オレはゆっくりと目を開けた。
鮮やかな赤色の目と髪が、オレの視界にはいってくる。
「ふ、フレドリックくん……」
ガチガチに緊張していた躰から、ふっと力が抜ける。
安堵したせいか、涙がポロポロとこぼれ落ちてきて、オレはあわてて涙を拭った。
幼子をあやすようにポンポンと、フレドリックくんに軽く背中を叩かれる。
借りていた『不可思議怪奇奇譚』の三十冊目を読み終えたオレは、卓上にあったベルを鳴らし、隣室で控えていたリニー少年を呼び出した。
「なにか御用でしょうか? 勇者さ……まぁ?」
クッションを胸にしっかと抱きしめ、膝を抱えて椅子の上にちょこんと座り込んでいるオレを、リニー少年は怪訝そうな顔で見る。
「……どうされましたか?」
「い、いや、あ……の、そ……の……フレドリックくん……」
「フレドリックがどうかしましたか?」
「……は、もう、帰っちゃったりしたかな?」
オレの質問に、リニー少年は顎に手をやりしばし考え込む。
「今の時刻ですと、まだ、近衛の詰め所にいるかとおもいますが……。呼び戻しましょうか?」
クッションをギュッと握りしめ、オレは大きく頷いた。
「うん。うん。ぜひ。ぜひ、呼んでくれ!」
「…………」
優秀な小姓であるリニー少年は、クッションを抱きしめながらガタガタ震えているオレと、テーブルの上に積み上げられている『不可思議怪奇奇譚』の三十冊を見比べる。
「勇者様、呼ぶのは王太子殿下ではなく……」
「フレドリックくんにしてくれ! ドリアが来たら、夜がもっと悲惨になるじゃないかあぁっ!」
「ああ。そうですね。三十巻目は、よば……」
「ソレ以上言うな! 言わないでくれ!」
オレは目に涙をためながら、半狂乱状態になって叫んでいた。
****
オレは目を閉じ、クッションを力いっぱい抱きしめて、長椅子のすみっコの方でカタカタと震えていた。
怖くて、怖くてたまらないよ。
しかも、よく考えたらね……考えたくなかったんだけどね、リニー少年はフレドリックくんを呼びに席を外しているんだよ!
この部屋には、今、オレひとりしかない……。
こういうときは、羊の数を数えるとよかったっけ? と、カタカタ震えながら「羊が一匹、羊が二匹」と、カウントしてみる。
羊が七匹になったところで、そういえば、羊毛ではなく、生皮を剥がれた七匹の羊が、羊飼いに復讐する……という、七巻目に書かれていた話を思い出し、オレは半泣きになった。
どれくらいの時間、オレは震えていただろうか……。
しばらくすると、ふわり、と温かな気配がオレを包み込んでいた。
「勇者様」
低い男性の声に、オレはゆっくりと目を開けた。
鮮やかな赤色の目と髪が、オレの視界にはいってくる。
「ふ、フレドリックくん……」
ガチガチに緊張していた躰から、ふっと力が抜ける。
安堵したせいか、涙がポロポロとこぼれ落ちてきて、オレはあわてて涙を拭った。
幼子をあやすようにポンポンと、フレドリックくんに軽く背中を叩かれる。
11
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件
竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件
あまりにも心地いい春の日。
ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。
治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。
受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。
★不定期:1000字程度の更新。
★他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる