勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

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第8章

異世界の識字率にびっくりです(5)

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 と、ここで、リニー少年が誰かに似ていると思っていたのだが、この国の宰相に似ていたことに気づいた。
 いや、気づくのが遅すぎたよね。

 聞いてみると、リニー少年は、八人兄弟姉妹の末っ子だ。

 ちなみに、フレドリックくんは、九人兄弟。ヤキュウチームができる人数である。

 異世界って、子沢山なのだろうか……。

 話が脱線してしまったが、三日目は、五男のフレドリックくんに城内を案内してもらった。

 エルドリア王太子の話では、フレドリックくんがいれば、城内を歩き回る際、リニー少年がオレに同行する必要はない。

 なのに、なぜかリニー少年もオレの王城見学にひょこひょことついてきた。

 なんだか監視されているようで、ちょっぴり緊張する。

 宝物庫、倉庫、武器庫、牢獄、謁見の間、行政官たちが詰めている棟、騎士団の棟、その他、使用人たちが働いている場所など、入室禁止のエリアは沢山あったが、この先にはどういった部屋があり、なぜ、立ち入り禁止なのかまで理由を教えられたので、オレに不満はない。

 別に覗いてみたい部屋でもなかった。

 城内で真面目に働く人々の邪魔をしてまで、足を踏み入れたい場所でもないからね。

 一般書庫には問題なく入室できたよ。

 高くそびえる本棚と、その中にびっしりと詰まっている本の数に、オレはただ圧倒されてしまった。

「す、すごい……」

 オレは思わず感嘆の声をあげ、しばしその場で立ち尽くしていた。

 調べものがある文官らしき人々が、静かに本棚を行き来している。

「書庫の本は誰でも読めるのか?」

 質問する声が、緊張のあまりうわずっている。

「王城に出入りを許されている者であれば、許可証を発行してもらえば、本を読むことも、借りることもできます」
「す、凄い! 凄いじゃないか!」

 素直なオレの賛辞に、フレドリックくんの表情が和む。

「本に興味があるのですか?」
「ああ! 大好きだ! すごく好きだ!」

 オレはフレドリックくんに視線を戻し、大きく頷いた。
 なぜか、フレドリックくんとリニー少年の顔が赤くなっている。

「オレも読んでいいのかな?」
「許可証があれば読めます。今日は書庫内の見学だけで我慢してください」
「わかった。一刻も早く、許可証を発行してもらいに行こう」
「わたくしの方で、許可証を発行してもらうよう申請しておきます。勇者様はこのまま書庫内の見学を続けてください」

 フレドリックくんと頷きあうと、リニー少年はオレたちから離れていく。

 よく気が利く子どもである。

「本当は、許可証の発行には数週間かかるのですが、リニーが行ったので、明日から書庫の本が読めるようになりますよ」

 書庫の管理人たちがいるカウンターに向かうリニー少年を見送った後、フレドリックくんは悪戯っぽい笑みを浮かべながら、そんなことを言った。

 リニー少年は、宰相コネか、王太子権限を使うのだろう。

 なかなかしっかりしているが、末恐ろしい子どもである。

 宰相は子どもにどんな教育をしているのだろうか。
 親子ともども、敵に回したくない存在だね。注意しておこう。

 そんなことを考えながら、フレドリックくんの先導で、オレは書庫内を歩き回った。

 資料室と禁書庫は、当然ながら立ち入り禁止だった。
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