勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜

のりのりの

文字の大きさ
上 下
8 / 339
第2章

異世界の応接室は緊張します(1)

しおりを挟む
 召喚したのが勇者じゃなかったかもしれない疑惑が払拭されたわけではないのだが、オレの待遇は悪くなかった。

 いや、むしろ、いいと思うよ。

 すくなくとも、エルドリア王太子にだけは、ものすごく大歓迎されている。
 ……ような気がする。

 とりあえず、ゆっくり話をしないことには……ということで、まずは、応接室らしき場所にオレは案内された。
 いや、エルドリア王太子に連行された。

 若いメイドが紅茶と、なにやら不思議な形と色をした一口サイズの菓子っぽいものを用意して、部屋から退出する。

 部屋の中央には、お茶の用意がされた卓を挟んで、三人がけのソファが、向かい合わせに置かれていた。

 元の世界でいうところの上座には、オレと王太子が座った。

 三人がけのソファにふたりしか座っていないのだから、普通はひとり分の余裕があるはずだよね。
 なのに、オレたちは、互いの身体がぴったりとくっついた状態で座っている。

 なぜだろう……?
 なんだか、距離が近い。
 異様にとっても近い。

 太腿と太腿が隙間なく触れ合っている。というか、ぴたっとくっついている……。
 これは、密着というのではないだろうか?

 しかも、エルドリア王太子は、相変わらず、オレの手をしっかりと握ったままだ。

 あまりにも密接しているので、距離をとろうと、オレは王太子から離れようとする。
 すると、逆に腕をぐいと引っ張られて、さらに引き寄せられる。

 オレも負けまいと、王太子の腕を振り払おうとするのだが、なぜか、がっちりと指まで絡められて、振りほどけない。

 このぴったり密着状態がこの世界の常識なのだろうかと思ったが、向かい側に座った大神官長のおじいちゃんと、この王国の宰相と、騎士団長の三人には、ほどよい隙間ができている。
 理想的な距離感だ。

 こっちは、二人しか座っていないのに、狭苦しい思いをしなければならないのは、なぜだろう?

 ****

「まずは一息つきましょう……」

 王太子の言葉が終わると、真っ先に騎士団長が手を伸ばし、皿の上に盛られた菓子をつまみ、食べ始める。
 口のなかのものがきれいになくなると、黙って紅茶に口をつける。

 がっしりとした体躯の、いかめしい顔つきのおじさんが、パステルカラーの可愛いお菓子をもぐもぐと食べているのは、なんとも妙な光景である。
 眼光鋭い顔なのだが、恐怖感はない。
 野性味のある、魅力的な男性である。ワイルド系の懐が深い、包容力がありそうな人だ。

 しばらくの間をおいて、今度は大神官長のおじいちゃんが、同じように、菓子を食べてから紅茶を飲む。
 みるからにご高齢なので、菓子を喉に詰まらせないか、ちょっと心配だ。

 オレがドキドキしながら、菓子を食べるおじいちゃんを見守っていると、今度は、三人の中では、一番若そうな宰相が、菓子を手に取った。

 このヒト、鋭利なナイフのような美貌の人物である。ある意味、騎士団長よりも危険そうだ。
 冷徹という表現がぴったりな美形だ。
 とても仕事ができそうで、かつ、人使いが荒そうな男だった。
 敵に回したくないタイプだ。とことん、追い詰められ、身ぐるみはがされそうで怖い。

 三人が菓子と紅茶に手をつけたことを確認してから、王太子が右手で菓子を取り、上品な仕草でぱくりと食べると、右手で紅茶のカップを手にする。

 左手は……やっぱり、オレの手を握ったままである。
しおりを挟む
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...