104 / 115
Mission3 お祖母様を救え!
104.情報提供者が現れました
しおりを挟む
「あった。これだ!」
あたしが書棚からとりだした立派な本は植物図鑑。植物図鑑は他にもあったが、この地方で育つ植物にスポットをあてて、詳細情報が載っている図鑑だ。
絵本がだめなら植物図鑑だ。
手掛かりになるような情報が載っているかもしれない。あたしは後ろの索引から『バーニラーヌ』の項目を探しだし、ページを読み始める。
この植物図鑑には植物の特徴や分布、開花時期などの情報が記されている。
栽培可能な場合は、その方法まで書かれている。
『バーニラーヌ』の花の色は白と書かれており、どこにも青い花の情報は載っていない。
当然のことなんだけど、ちょっとした奇跡を期待していたので、がっかりしてしまった。
そんなに世の中は都合よくできていなかった。
がっかりしながらも、普通の『バーニラーヌ』について調べる。
水辺と冷所を好む植物で、山野の水辺や湿地などでよく見かけるそうだ。
水の管理に注意すれば、栽培も可能と書いてある。
(なるほど――。泉か)
確かに、スチルの背景は水辺だった。
蛍っぽいものも飛んでいた。単なるキラキラエフェクトかと思っていたんだけど、水辺の昆虫かもしれない。
主人公はこの屋敷から夜中頃に馬ででかけて、暗い時間帯に泉に到着していた。花を捜すときにライース兄様と密着ドキドキイベントが発生して、昼までには屋敷に戻っていた。
「カルティ。リョウチのくわしい地図をみせて。このしゅうへんの地図。川とか泉がわかる地図がいいな」
「わかりました」
カルティが地図がしまわれている棚をがさごそと捜し始める。
地図が見つかるまでの間に、あたしは領内の河川や水利関連の本を探す。
「お嬢様、地図はこれでよろしいでしょうか?」
「うん。ありがとう」
カルティが見つけ出した地図は、この地方の拡大地図だ。絵地図というか、宝の地図みたいな眉唾な精度だけど、これがファンタジーらしさの演出なんだろう。
国盗りや領地開拓をするわけではないので、精度には目をつぶる。
馬で三から四時間走ったところに、蛍っぽいものが生息する泉があれば、そこが青い『バーニラーヌ』の群生地である可能性が高い。
といいたいところだけど、地図に載っている泉の数が多すぎる。
(なんでこんなに泉があるのよ!)
この数をひとつひとつ回って確認するのは至難の業だ。
というか、この地図の精度がどの程度のものなのかもわからないので、適当に「この辺りに泉があったらいいかも」などといったノリで泉を書き込んでいたらお手上げだ。
まあ、領主が所有する地図であるから、ある程度は信頼してもいいだろうけど。
「お嬢様、なにを調べていらっしゃるのですか?」
領内の水利資源について記された難しそうな本を読み始めたあたしに、カルティが遠慮がちに声をかける。
「ここから馬で三、四時間くらいの場所にある泉をさがしているのよ」
「泉ですか?」
「うん。『バーニラーヌ』は泉でそだつと、しょくぶつずかんにかかれていたからね」
「そうなのですか?」
カルティの視線があたしから、床の上に広げられたままになっている植物図鑑へと移動する。
「あれ?」
植物図鑑を読み始めたカルティは首を傾げる。
「カルティ、どうしたの?」
「いえ。これが『バーニラーヌ』の花ですか?」
「そうよ。ずかんには白い『バーニラーヌ』の花しかのっていないけどね」
「そうなのですか? これによく似た色違いの花を見たことがあります」
「いろちがい?」
「はい。白ではなく、青い花でした」
「…………」
な、なんですとおっ!
カルティが青い『バーニラーヌ』の花が咲く場所を知っている?
「カルティは青い『バーニラーヌ』の花をみたの?」
「はい。昨年、両親の墓参りでお休みを頂いたときに、近道をしようとして道に迷って……そのときに、この形の青い花がたくさん咲いているのを見ました」
驚いた。
ライース兄様ではなく、カルティが青い『バーニラーヌ』の花とご対面していたよ。
あたしが書棚からとりだした立派な本は植物図鑑。植物図鑑は他にもあったが、この地方で育つ植物にスポットをあてて、詳細情報が載っている図鑑だ。
絵本がだめなら植物図鑑だ。
手掛かりになるような情報が載っているかもしれない。あたしは後ろの索引から『バーニラーヌ』の項目を探しだし、ページを読み始める。
この植物図鑑には植物の特徴や分布、開花時期などの情報が記されている。
栽培可能な場合は、その方法まで書かれている。
『バーニラーヌ』の花の色は白と書かれており、どこにも青い花の情報は載っていない。
当然のことなんだけど、ちょっとした奇跡を期待していたので、がっかりしてしまった。
そんなに世の中は都合よくできていなかった。
がっかりしながらも、普通の『バーニラーヌ』について調べる。
水辺と冷所を好む植物で、山野の水辺や湿地などでよく見かけるそうだ。
水の管理に注意すれば、栽培も可能と書いてある。
(なるほど――。泉か)
確かに、スチルの背景は水辺だった。
蛍っぽいものも飛んでいた。単なるキラキラエフェクトかと思っていたんだけど、水辺の昆虫かもしれない。
主人公はこの屋敷から夜中頃に馬ででかけて、暗い時間帯に泉に到着していた。花を捜すときにライース兄様と密着ドキドキイベントが発生して、昼までには屋敷に戻っていた。
「カルティ。リョウチのくわしい地図をみせて。このしゅうへんの地図。川とか泉がわかる地図がいいな」
「わかりました」
カルティが地図がしまわれている棚をがさごそと捜し始める。
地図が見つかるまでの間に、あたしは領内の河川や水利関連の本を探す。
「お嬢様、地図はこれでよろしいでしょうか?」
「うん。ありがとう」
カルティが見つけ出した地図は、この地方の拡大地図だ。絵地図というか、宝の地図みたいな眉唾な精度だけど、これがファンタジーらしさの演出なんだろう。
国盗りや領地開拓をするわけではないので、精度には目をつぶる。
馬で三から四時間走ったところに、蛍っぽいものが生息する泉があれば、そこが青い『バーニラーヌ』の群生地である可能性が高い。
といいたいところだけど、地図に載っている泉の数が多すぎる。
(なんでこんなに泉があるのよ!)
この数をひとつひとつ回って確認するのは至難の業だ。
というか、この地図の精度がどの程度のものなのかもわからないので、適当に「この辺りに泉があったらいいかも」などといったノリで泉を書き込んでいたらお手上げだ。
まあ、領主が所有する地図であるから、ある程度は信頼してもいいだろうけど。
「お嬢様、なにを調べていらっしゃるのですか?」
領内の水利資源について記された難しそうな本を読み始めたあたしに、カルティが遠慮がちに声をかける。
「ここから馬で三、四時間くらいの場所にある泉をさがしているのよ」
「泉ですか?」
「うん。『バーニラーヌ』は泉でそだつと、しょくぶつずかんにかかれていたからね」
「そうなのですか?」
カルティの視線があたしから、床の上に広げられたままになっている植物図鑑へと移動する。
「あれ?」
植物図鑑を読み始めたカルティは首を傾げる。
「カルティ、どうしたの?」
「いえ。これが『バーニラーヌ』の花ですか?」
「そうよ。ずかんには白い『バーニラーヌ』の花しかのっていないけどね」
「そうなのですか? これによく似た色違いの花を見たことがあります」
「いろちがい?」
「はい。白ではなく、青い花でした」
「…………」
な、なんですとおっ!
カルティが青い『バーニラーヌ』の花が咲く場所を知っている?
「カルティは青い『バーニラーヌ』の花をみたの?」
「はい。昨年、両親の墓参りでお休みを頂いたときに、近道をしようとして道に迷って……そのときに、この形の青い花がたくさん咲いているのを見ました」
驚いた。
ライース兄様ではなく、カルティが青い『バーニラーヌ』の花とご対面していたよ。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる