102 / 130
Mission3 お祖母様を救え!
102.王子様が摘んだ花は
しおりを挟む
「コラ、レーシア! 先生の邪魔をするんじゃない!」
慌てるライース兄様をデイラル先生は「よいのですよ」と優しい声で制止する。
「フレーシアお嬢様、わたくしがこの絵本を読めばよろしいのですかな?」
「はい! いますぐにです! お祖母様のごびょうきとそっくりなおはなしです!」
「ほう……。それは……」
あたしから絵本を受け取ると、デイラル先生はゆっくりとページをめくっていく。
最後まで読み終わると、デイラル先生は、とあるページを開いたまま、あたしに絵本を返してくれた。
そのページは、王子様が青い花を摘んでいるシーンだ。
デイラル先生は「よいしょ」という掛け声とともに、膝を折り、あたしの目線にしゃがみこむ。
そして、王子様が持っている花を指さした。
「フレーシアお嬢様、驚きました。この物語りにあるお姫様の状態と、氷結晶病の症状はとても似通っていますね」
「ですよね! ですよね!」
「絵本がですか?」
ライース兄様が絵本を覗き込む。
「デイラル先生! この青いお花の名前はなんというのでしょうか? このお花が、お祖母様のごびょうきをなおす、とっておきのおくちゅりになるとおもいます!」
「……………………」
デイラル先生は腕を組んで沈黙する。
「フレーシアお嬢様、残念ですが、これは絵本であって、薬学事典ではございません」
「どういうことですか?」
「この絵では、どのような薬草なのか、判別できません」
「うそです!」
いやいや、ゲームではお医者様がばしっと、宣言してましたよ?
もしかして、ゲームの医者はデイラル先生そっくりさんの、別の医者だったの?
ショックのあまりその場にへなへなと座り込むあたしを、デイラル先生は不安げな眼差しで見つめる。
「まあ、この花の絵の特徴からすると、おそらく、絵本に登場している花は『バーニラーヌ』の花かと思われます」
「バーニラーヌ!」
そうだ!
そうだった!
バなんとかっていう花は『バーニラーヌ』っていうんだった。
このイベントをプレイしてたとき、ものすごくバニラアイスを食べたくなったのを思い出した!
「バーニラーヌのお花がお祖母様のごびょうきをなおすのですね!」
あたしの嬉しそうな言葉に、デイラル先生とライース兄様は微妙な顔をする。
なんだろう。
ちょっと、嫌な雰囲気だ。
「フレーシアお嬢様、『バーニラーヌ』の花の色は、白でございます。このような、絵本のような青ではございません。ですので、この青い花は、別の花かもしれません」
「え…………」
そんなことはない。
間違いなく、氷結晶病を治す花は青い『バーニラーヌ』の花びらのしぼり汁だった。
そういう描写があった。
ヒロインが『バーニラーヌ』の花を摘み取ったときの静止画もあったけど、あれは、確かに青い花だった。
どういうことだろう……。
「変異種なのかもしれない。絵本のお話だからな」
静かになってしまったあたしにライース兄様の手があたしの背中をなでる。
「ライース坊ちゃまのおっしゃるとおり絵本のことではありますが、なにもしないよりは、色々と試した方がよいかとは思います」
「そうだな。デイラル先生のおっしゃるとおりだ。ちょうど、今は『バーニラーヌ』の花が開花する時期だ。急ぎ、取り寄せよう」
(え…………? どういうこと?)
決着がついた、と判断され、大人たちはお祖母様の部屋へと入っていく。
その中にはデイラル先生もいた。
「さあ、レーシアはお部屋に戻りなさい」
あたしはライース兄様に促され、お祖母様の部屋を離れた。
(どういうこと? どういうこと?)
ちょっとの違いはあったけど、ほとんどが本編通りのやりとりだった。
なのに、なのに、最後の最後で…………。
(ライース兄様のセリフが違うって、どいういうことなのぉっ!)
慌てるライース兄様をデイラル先生は「よいのですよ」と優しい声で制止する。
「フレーシアお嬢様、わたくしがこの絵本を読めばよろしいのですかな?」
「はい! いますぐにです! お祖母様のごびょうきとそっくりなおはなしです!」
「ほう……。それは……」
あたしから絵本を受け取ると、デイラル先生はゆっくりとページをめくっていく。
最後まで読み終わると、デイラル先生は、とあるページを開いたまま、あたしに絵本を返してくれた。
そのページは、王子様が青い花を摘んでいるシーンだ。
デイラル先生は「よいしょ」という掛け声とともに、膝を折り、あたしの目線にしゃがみこむ。
そして、王子様が持っている花を指さした。
「フレーシアお嬢様、驚きました。この物語りにあるお姫様の状態と、氷結晶病の症状はとても似通っていますね」
「ですよね! ですよね!」
「絵本がですか?」
ライース兄様が絵本を覗き込む。
「デイラル先生! この青いお花の名前はなんというのでしょうか? このお花が、お祖母様のごびょうきをなおす、とっておきのおくちゅりになるとおもいます!」
「……………………」
デイラル先生は腕を組んで沈黙する。
「フレーシアお嬢様、残念ですが、これは絵本であって、薬学事典ではございません」
「どういうことですか?」
「この絵では、どのような薬草なのか、判別できません」
「うそです!」
いやいや、ゲームではお医者様がばしっと、宣言してましたよ?
もしかして、ゲームの医者はデイラル先生そっくりさんの、別の医者だったの?
ショックのあまりその場にへなへなと座り込むあたしを、デイラル先生は不安げな眼差しで見つめる。
「まあ、この花の絵の特徴からすると、おそらく、絵本に登場している花は『バーニラーヌ』の花かと思われます」
「バーニラーヌ!」
そうだ!
そうだった!
バなんとかっていう花は『バーニラーヌ』っていうんだった。
このイベントをプレイしてたとき、ものすごくバニラアイスを食べたくなったのを思い出した!
「バーニラーヌのお花がお祖母様のごびょうきをなおすのですね!」
あたしの嬉しそうな言葉に、デイラル先生とライース兄様は微妙な顔をする。
なんだろう。
ちょっと、嫌な雰囲気だ。
「フレーシアお嬢様、『バーニラーヌ』の花の色は、白でございます。このような、絵本のような青ではございません。ですので、この青い花は、別の花かもしれません」
「え…………」
そんなことはない。
間違いなく、氷結晶病を治す花は青い『バーニラーヌ』の花びらのしぼり汁だった。
そういう描写があった。
ヒロインが『バーニラーヌ』の花を摘み取ったときの静止画もあったけど、あれは、確かに青い花だった。
どういうことだろう……。
「変異種なのかもしれない。絵本のお話だからな」
静かになってしまったあたしにライース兄様の手があたしの背中をなでる。
「ライース坊ちゃまのおっしゃるとおり絵本のことではありますが、なにもしないよりは、色々と試した方がよいかとは思います」
「そうだな。デイラル先生のおっしゃるとおりだ。ちょうど、今は『バーニラーヌ』の花が開花する時期だ。急ぎ、取り寄せよう」
(え…………? どういうこと?)
決着がついた、と判断され、大人たちはお祖母様の部屋へと入っていく。
その中にはデイラル先生もいた。
「さあ、レーシアはお部屋に戻りなさい」
あたしはライース兄様に促され、お祖母様の部屋を離れた。
(どういうこと? どういうこと?)
ちょっとの違いはあったけど、ほとんどが本編通りのやりとりだった。
なのに、なのに、最後の最後で…………。
(ライース兄様のセリフが違うって、どいういうことなのぉっ!)
2
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました
Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

愛せないと言われたから、私も愛することをやめました
天宮有
恋愛
「他の人を好きになったから、君のことは愛せない」
そんなことを言われて、私サフィラは婚約者のヴァン王子に愛人を紹介される。
その後はヴァンは、私が様々な悪事を働いているとパーティ会場で言い出す。
捏造した罪によって、ヴァンは私との婚約を破棄しようと目論んでいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる