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Mission3 お祖母様を救え!
100.ヒロイン不在で
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「レーシア、こんなところで騒いでなにをしているのだ! カルティの言うことをきいて、部屋で待っているよう、言っていただろ!」
ライース兄様の押し殺した声が、あたしとカルティの動きを止める。
カルティの顔面が蒼白になる。
「ライース兄様!」
「部屋に戻りなさい」
怒っている。
ライース兄様がめちゃくちゃ怒っている。
この先の選択肢を間違えたら、親密度が爆下がりする警告表情だ。
「ライース兄様! お部屋にもどるまえに、これを……この絵本を、デイラル先生によんでいただきたいのです!」
「絵本?」
ライース兄様の眉がぴくりと跳ね上がる。
(……あ、怒らせてしまったかも)
それもそうだ。
お祖母様がとても珍しい奇病にかかってしまい、あと数日の生命だと宣言されたのに、のんびり絵本など……普通なら「ふざけるな」って怒るよね。
ヒロインはどうやって、この場面を切り抜けたんだったっけ?
……あ、ヒロインの方が身分が上だったから、強引に押したおし……じゃない『強引に押し切る』が通用したんだ。
あたしはライース兄様を見上げて、口をぱくぱくさせるが、言葉がなにもでてこない。
ライース兄様はしゃがみ込むと、絵本ごとわたしをぎゅっと抱きしめる。
(え? え? ええええ? どういうこと?)
「すまない。レーシア。こんなときにレーシアをひとりぼっちにさせてしまって。不安だろう。だけど、我慢してくれるか? 今は、とっても大事な時なのだ。おりこうにして、ひとりで……いや、カルティといっしょに、自分のお部屋で待っていてくれるかな?」
きゅっきゅっ、と抱きしめられ、頭に「チュッ」と、き、き、キス……をされたぁあああっ!
「え、え、絵本を……」
「うん。絵本は、また今度だよ。読めない文字があるのなら、カルティに尋ねるといい」
そしてまた頭に「チュッ!」だ!
体温がみるまに上昇し、頭の方に血がのぼっていくのがわかる。
心臓がドッキン、ドッキンと煩い。
だめだ。
ここで、鼻血はだめだ。
ライース兄様のフェロモンに抵抗しなければ!
思い出すんだ!
穏やかな転生ライフを満喫するための三箇条改め五箇条の内容を!
出血厳禁。
気絶回避。
ここで出血気絶したら、間違いなく、なにもかもが終わってしまう。
『キミツバ』のコアユーザーでなくともわかることだろう。
「だ、だめです! 絵本は! 絵本は! デイラル先生じゃないとだめです!」
外見六歳児の特権か、はたまたフレーシアのもともとの設定なのか、あたしは大声で泣き始めた。
それこそ、火がついたように泣きながら、「デイラル先生!」と叫びつづける。
「レーシア!」
「お嬢様!」
泣き始めたあたしの背中を優しく撫でながら、ライース兄様はあたしを抱き上げる。
「仕方がない。お部屋に送ってあげるよ。絵本はおれが読んであげるから、もう寝ようか。今日は色々とあったから疲れただろう」
「ちが――う! デイラル先生っ!」
「デイラル先生はお忙しいんだ。先生のお仕事の邪魔をしてはいけないよ」
ライース兄様の優しい声が耳元で聞こえたと思ったら、ふわふわとした浮遊感が加わる。
カツ、カツ、カツ……というライース兄様の足音と、それを追うカルティの足音。
お祖母様の部屋の扉がどんどん遠ざかっていく……。
だめだ。
だめだ。
このままだと、あたしはお部屋に連れ戻されてしまう。
そしたら……どうなっちゃうの!
ライース兄様の押し殺した声が、あたしとカルティの動きを止める。
カルティの顔面が蒼白になる。
「ライース兄様!」
「部屋に戻りなさい」
怒っている。
ライース兄様がめちゃくちゃ怒っている。
この先の選択肢を間違えたら、親密度が爆下がりする警告表情だ。
「ライース兄様! お部屋にもどるまえに、これを……この絵本を、デイラル先生によんでいただきたいのです!」
「絵本?」
ライース兄様の眉がぴくりと跳ね上がる。
(……あ、怒らせてしまったかも)
それもそうだ。
お祖母様がとても珍しい奇病にかかってしまい、あと数日の生命だと宣言されたのに、のんびり絵本など……普通なら「ふざけるな」って怒るよね。
ヒロインはどうやって、この場面を切り抜けたんだったっけ?
……あ、ヒロインの方が身分が上だったから、強引に押したおし……じゃない『強引に押し切る』が通用したんだ。
あたしはライース兄様を見上げて、口をぱくぱくさせるが、言葉がなにもでてこない。
ライース兄様はしゃがみ込むと、絵本ごとわたしをぎゅっと抱きしめる。
(え? え? ええええ? どういうこと?)
「すまない。レーシア。こんなときにレーシアをひとりぼっちにさせてしまって。不安だろう。だけど、我慢してくれるか? 今は、とっても大事な時なのだ。おりこうにして、ひとりで……いや、カルティといっしょに、自分のお部屋で待っていてくれるかな?」
きゅっきゅっ、と抱きしめられ、頭に「チュッ」と、き、き、キス……をされたぁあああっ!
「え、え、絵本を……」
「うん。絵本は、また今度だよ。読めない文字があるのなら、カルティに尋ねるといい」
そしてまた頭に「チュッ!」だ!
体温がみるまに上昇し、頭の方に血がのぼっていくのがわかる。
心臓がドッキン、ドッキンと煩い。
だめだ。
ここで、鼻血はだめだ。
ライース兄様のフェロモンに抵抗しなければ!
思い出すんだ!
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出血厳禁。
気絶回避。
ここで出血気絶したら、間違いなく、なにもかもが終わってしまう。
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それこそ、火がついたように泣きながら、「デイラル先生!」と叫びつづける。
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「お嬢様!」
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お祖母様の部屋の扉がどんどん遠ざかっていく……。
だめだ。
だめだ。
このままだと、あたしはお部屋に連れ戻されてしまう。
そしたら……どうなっちゃうの!
1
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
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