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Mission3 お祖母様を救え!

99.魔術師のことば

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 あたしはドキドキしながら、『凍える森の眠り姫』の表紙をめくる。



 『凍える森の眠り姫』

 森の奥の古城に、ひとりの美しい姫が眠り続けていた。
 姫の身体は氷のようにカチコチに固まっていて、何十年、何百年と眠り続けていた。

 ある日、森の奥に迷い込んだ王子様が古城を発見し、眠り続ける姫を見つける。
 王子様はおつきの魔術師に命じて、回復魔法を唱えさせるが、姫は眠り続けたままだった。

 魔術師は王子様に語る

「この姫様はまるで氷のように冷たい。結晶のようにかたくなってしまっております。この氷を溶かし、結晶を砕くには、遠き地に咲く、奇跡の花の蜜を飲ませるとよいでしょう……」

 魔術師の言葉を信じた王子様は、奇跡の花を探す旅にでかけ、花を手に入れる。
 そして、花の蜜を眠り続ける姫に捧げると、姫は長き眠りから目覚め、姫は王子と共に末永く幸せに暮らしました……。



「これだ! この花! この青い花だ! デイラル先生――!」

 あたしは絵本を抱え――今度はちゃんと書庫の扉を開けることができ――部屋を飛びだした。

「お、お嬢様!」

 カルティのあたしを呼ぶ声が聞こえたが無視だ。
 階段を駆けのぼり、お祖母様の部屋へとあたしは向かう。

 そう、ヒロインは、この絵本の内容を思い出し、医者に絵本を見せるのだ。

 絵本はあくまでも作り物の物語り。
 だけど、昔の伝承を物語りにアレンジしたものだってある。

 眠り姫の症状と、氷結晶病の症状はとてもよく似ている。
 だったら、魔術師の語る『奇跡の花の蜜』が氷結晶病の治療薬になるかもしれない。

 とヒロインは推理したのだ。

 医者は絵本に描かれていた花の絵を見て、この花がなんの花なのかを言い当てる。

 花の名前がわかれば、ライース兄様がその花の生息地を知っており、ヒロインと一緒に花を探しに行って……そこで親密度がドッカ――ン、と、アップするラブラブイベントが発生するのだ。

 あ、もちろん、ライース兄様の異母妹は、そのバなんとかっていう花の蜜で回復する。
 きっと、お祖母様もそのバなんとかの蜜を飲めば、氷結晶病も治るはずだ。

 まずは、デイラル先生に絵本だ!

 ちょっと息が苦しくなるが、あたしはがんばって走る。
 カルティがあたしの後を追ってくる。

「お嬢様、お部屋にお戻りください。お部屋に戻りましょう。この先は、大奥様のお部屋です! 怒られますよ!」
「ウルサイ! お祖母様がたいへんなの!」

 あたしを追い抜いて前に回り込んだカルティは、両手を広げてたちふさがる。
 カルティはあたしよりふたつ年上だ。
 この年齢差は地味に痛い。
 難攻不落の壁のように、あたしの目の前でとうせんぼしている。

「カルティ! じゃまです!」
「お嬢様、お部屋に戻りましょう。皆様の邪魔になります」
「いやです。この絵本をデイラル先生にみてもらうのです」
「お嬢様! 落ち着いてください」
「どきなさい!」

 お祖母様の部屋は目と鼻の先なのに、カルティが邪魔をして先に進めない。

 カルティとしたら、私に掴みかかってでもこの場から退散したいのだろうけど、使用人の身分では、あたしに触れることにためらいがあるようだ。

 ふたりして廊下で言い争っていると、お祖母様の部屋の扉が開いた。

「うるさいぞ。なにごとだ!」
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