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Mission3 お祖母様を救え!

85.馬で駆ける少女

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 というわけで、あたしはライース兄様とカルティと一緒に馬場にいた。

「いいですか? ライース兄様! しっかりと、見ててくださいね!」

 あたしはミリガンの背に……よいこらしょと跨り、馬場の中をとっとこと駆け回る。

 さあ、ライース兄様! わたしの回復具合をしっかりその目で見て、実感してください。

 あたしは元気になりましたよ!

 ミリガンは賢いので、特別になにもせずとも、馬場の中を走ってくれる。

 だが、油断は禁物だ。

 うっかり落馬なんかしたら、大騒ぎになってしまう。
 死にはしないだろうけど……二度と乗馬禁止とかになったらやだ。

 領内の馬の中から選びぬかれただけあって、ミリガンはとても穏やかで、びっくりするくらい優秀だった。

(がんばれ! ミリガン!)

 あたしは速歩、駈歩、襲歩……さらには、反転など、人馬一体の技をなめらかに披露していく。

 ライース兄様とカルティの驚いた顔が目に入った。

 いや、あたしもびっくりしたよ。

 フレーシア・アドルミデーラという女の子は、体力はちっともないんだけど、学習能力はものすごく高かった。

 ちょっと手先が不器用なのが気になるが……六歳児だから、そこは仕方がない。

 あたしは文字通りスポンジが水を吸収するように、あっという間に乗馬技術を習得したのだ。
 あたしの訓練を見守っていた厩番の驚いた顔が、なんとも印象的だった。

 夜の秘密特訓も大いに影響しているのだろうね。体幹を鍛えておいてよかったよ。

 乗馬だけでなく、勉強の方も……精神年齢が高いということもあり、あたしは驚異的なスピードで理解していく。

 これは……転生特典か、アドルミデーラ家の一員補正が入っているとしか思えない。
 外見はモブっぽいけど、なんということでしょう。あたしも高スペックキャラのようである。

 どうやら、能力値が低いとか、役立たずとかいわれて、侯爵家から追放されるパターンではないようだ。

 体力はないが、運動神経はすごくいい。

「おお――っ」
「お嬢様、すごいです」

 ライース兄様とカルティの称賛の眼差しに、あたしはとても嬉しくなる。

 ミリガンはとてもちっこいけど、あたしの思ったとおりに走ってくれる。

 ちょっと、ずんぐりむっくりしているけど、それはそれで可愛くて、愛嬌がある。

 あたしもライース兄様がローマンにやるようにブラッシングをしてみたかったのだが、それは全員から止められてしまった。

 なので、おやつをあげたりしてミリガンとは仲良くなった。

 仲良くなったので、こんなこともできちゃったりする。

「ミリガン! いくよ!」

 そう言うと、あたしは軽くミリガンの腹を蹴った。

 あたしの合図にミリガンは「ぶるん」と首を振ると、徐々にスピードを上げていく。

 風がすごく気持ちいい。
 とってもワクワクしてきた。

「なにぃ! レーシア! なにをやっている! 止まれ!」
「えっ! お、おじょうさまあっっ!」

 あたしがなにをやろうとしているのか察知したようである。
 背後からライース兄様とカルティの叫び声と悲鳴が聞こえたが、当然、無視だ!

 止めてくれるな! お兄様!

「あ――――! おじょうさまあっ!」
「レーシア! やめなさい! 止まりなさい!」
 
 ミリガンは加速したまま、馬場の柵にめがけて迷うことなく突っ込んでいく。
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