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Mission2 げきまじゅおくちゅりを克服せよ!
76.ライースの眼差し★
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ライース兄様は膝を折り、あたしの目をじっとのぞきこむ。
だめですよ!
無駄ですよ!
そんな、『必殺! ライースの眼差し』でコロッと騙されるようなチョロいあたしではありませんよ!
断固、抵抗してみせます!
あたしは、馬らしい馬に乗りたいのです!
馬っぽい生き物はいやです!
前世で遊園地にあった、硬貨を入れてういーんと動く『子供用乗馬式ジャイアントパンダ型電気自動車』に乗りたいわけではないんです!
「レーシア……子どもが練習で乗るには、ポニーで慣れてからの方がいいんだよ? ずっと、ミリガンに乗り続けるわけではないんだよ?」
聞き分けの悪いワガママな子どもに向かって言い聞かせるような、ライース兄様の口調にちょっとイラッとくる。
「ライース兄様は……」
「ん?」
「ライース兄様は、ポニーに乗って、じょーばを習ったのですか? カルティは?」
「…………」
「…………」
ふたりは押し黙ってしまった。
あたしは手を腰にやり、ふんぬっと目に力を込めて、ふたりをにらみつける。
「いや、おれたちは先に武術の鍛錬を行っていて、筋力や体幹を鍛えていたから……」
「ポニーじゃありませんよね?」
あたしの反論に、ライース兄様の視線が頼りなく彷徨う。
カルティは、あらぬ方向を眺めていたが、逃げ出さなかったことは褒めてやろう。
「あたしは馬に乗りたいのです!」
「ポニーも馬だよ?」
「みんなが乗る馬に乗りたいのです!」
「ダメだ」
ライース兄様の気持ちにゆらぎはない。
妹のウルウルお願いは通じないようだ。
いや……もしかしたら……。
「あ、あたしは、ライース兄様が乗られるおうまさんに乗ってみたいのです! ライース兄様といっしょがいいです!」
「――――!」
ライース兄様は目を大きく見開き、雷の直撃を受けたかのように硬直する。
「お、おれと一緒……がいいのか?」
「はい。あたしは、だいすきなライース兄様と同じようなことがしたいのです!」
「――――っ!」
ライース兄様の顔が朱に染まり、口元が満足そうにほころぶ。
蕩けるような笑顔を間近にとらえ、あたしは焦る。
(え? なに? この反応……)
「レーシア!」
体をふるふる震わせながら、ライース兄様はあたしを思いっきり抱きしめる。
(え? え? え? なにがおこっているの?)
息が止まるかと思うほど、ライース兄様にギュッと抱きしめられ、本当に息が止まりそうになる。
日向の香り……太陽のような温もりに、あたしはすっぽりと包まれる。
ら、ライース兄様の鼓動が……ドキドキが伝わってくる!
「あ、あ、お、おにい……ライース兄様」
そ、そんなに力を入れられたら、あたしのちっこくてひ弱な身体はぺちゃんこになってしまいますぅ!
「うま ! うまですっ!」
「やだ! やっぱりやめよう。レーシアがミリガンから落ちて怪我でもしたら、おれは……生きていけない」
ちょ、ちょっとまってください!
ライース兄様の口走っていることがヘンです!
あのちっこいミリガンから落ちてもせいぜい、打ち身か、かすり傷です。
それに、ライース兄様は、あたしが溺れ死んでも立派に生きてました!
ゲーム内ではよく死にましたが、ライース兄様は『巻き戻しの砂時計』でしっかり蘇ります!
カルティ!
カルティ!
今すぐあたしを助けなさい!
ライース兄様の胸の中でじたばたともがきながら、あたしはすみっこの方に退避しているカルティを睨みつける。
無表情だったカルティの顔に、怯えの色が浮かんだ。
「わ、わ、若様……。お力を緩めてください。それ以上強くされると、お嬢様が潰れてしまいます」
カルティの声に、あたしを拘束する力が不意に緩む。
ぼんやりとしているライース兄様に、カルティが慌てて言葉を続ける。
「若様、今日は……まずは、馬に乗るというのはどういうことなのかを、お嬢様に知って頂く日にしませんか?」
「どういう……こどだ?」
「若様とお嬢様が一緒にローマンに乗ってみてはいかがでしょうか?」
「ローマンに……レーシアと一緒?」
「はい。遠乗りでも、早駆けでも……。今日は初めてですから、乗馬の楽しさをお嬢様に知って頂くだけにとどめて、訓練は明日からされるというのは、どうでしょうか?」
カルティが見事な折衷案を提示してきた。
問題の先送りともいう。
ビジネスシーンではよくやる手段だ。
さすが、逃げのカルティだ!
トラブル回避スキルが半端ない。
「よし。そうしよう!」
ライース兄様がすくっと立ち上がる。
切り替えはやっ!
だめですよ!
無駄ですよ!
そんな、『必殺! ライースの眼差し』でコロッと騙されるようなチョロいあたしではありませんよ!
断固、抵抗してみせます!
あたしは、馬らしい馬に乗りたいのです!
馬っぽい生き物はいやです!
前世で遊園地にあった、硬貨を入れてういーんと動く『子供用乗馬式ジャイアントパンダ型電気自動車』に乗りたいわけではないんです!
「レーシア……子どもが練習で乗るには、ポニーで慣れてからの方がいいんだよ? ずっと、ミリガンに乗り続けるわけではないんだよ?」
聞き分けの悪いワガママな子どもに向かって言い聞かせるような、ライース兄様の口調にちょっとイラッとくる。
「ライース兄様は……」
「ん?」
「ライース兄様は、ポニーに乗って、じょーばを習ったのですか? カルティは?」
「…………」
「…………」
ふたりは押し黙ってしまった。
あたしは手を腰にやり、ふんぬっと目に力を込めて、ふたりをにらみつける。
「いや、おれたちは先に武術の鍛錬を行っていて、筋力や体幹を鍛えていたから……」
「ポニーじゃありませんよね?」
あたしの反論に、ライース兄様の視線が頼りなく彷徨う。
カルティは、あらぬ方向を眺めていたが、逃げ出さなかったことは褒めてやろう。
「あたしは馬に乗りたいのです!」
「ポニーも馬だよ?」
「みんなが乗る馬に乗りたいのです!」
「ダメだ」
ライース兄様の気持ちにゆらぎはない。
妹のウルウルお願いは通じないようだ。
いや……もしかしたら……。
「あ、あたしは、ライース兄様が乗られるおうまさんに乗ってみたいのです! ライース兄様といっしょがいいです!」
「――――!」
ライース兄様は目を大きく見開き、雷の直撃を受けたかのように硬直する。
「お、おれと一緒……がいいのか?」
「はい。あたしは、だいすきなライース兄様と同じようなことがしたいのです!」
「――――っ!」
ライース兄様の顔が朱に染まり、口元が満足そうにほころぶ。
蕩けるような笑顔を間近にとらえ、あたしは焦る。
(え? なに? この反応……)
「レーシア!」
体をふるふる震わせながら、ライース兄様はあたしを思いっきり抱きしめる。
(え? え? え? なにがおこっているの?)
息が止まるかと思うほど、ライース兄様にギュッと抱きしめられ、本当に息が止まりそうになる。
日向の香り……太陽のような温もりに、あたしはすっぽりと包まれる。
ら、ライース兄様の鼓動が……ドキドキが伝わってくる!
「あ、あ、お、おにい……ライース兄様」
そ、そんなに力を入れられたら、あたしのちっこくてひ弱な身体はぺちゃんこになってしまいますぅ!
「うま ! うまですっ!」
「やだ! やっぱりやめよう。レーシアがミリガンから落ちて怪我でもしたら、おれは……生きていけない」
ちょ、ちょっとまってください!
ライース兄様の口走っていることがヘンです!
あのちっこいミリガンから落ちてもせいぜい、打ち身か、かすり傷です。
それに、ライース兄様は、あたしが溺れ死んでも立派に生きてました!
ゲーム内ではよく死にましたが、ライース兄様は『巻き戻しの砂時計』でしっかり蘇ります!
カルティ!
カルティ!
今すぐあたしを助けなさい!
ライース兄様の胸の中でじたばたともがきながら、あたしはすみっこの方に退避しているカルティを睨みつける。
無表情だったカルティの顔に、怯えの色が浮かんだ。
「わ、わ、若様……。お力を緩めてください。それ以上強くされると、お嬢様が潰れてしまいます」
カルティの声に、あたしを拘束する力が不意に緩む。
ぼんやりとしているライース兄様に、カルティが慌てて言葉を続ける。
「若様、今日は……まずは、馬に乗るというのはどういうことなのかを、お嬢様に知って頂く日にしませんか?」
「どういう……こどだ?」
「若様とお嬢様が一緒にローマンに乗ってみてはいかがでしょうか?」
「ローマンに……レーシアと一緒?」
「はい。遠乗りでも、早駆けでも……。今日は初めてですから、乗馬の楽しさをお嬢様に知って頂くだけにとどめて、訓練は明日からされるというのは、どうでしょうか?」
カルティが見事な折衷案を提示してきた。
問題の先送りともいう。
ビジネスシーンではよくやる手段だ。
さすが、逃げのカルティだ!
トラブル回避スキルが半端ない。
「よし。そうしよう!」
ライース兄様がすくっと立ち上がる。
切り替えはやっ!
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